ドッグトレーニングの現場から Vol.24

お散歩中だけでなく自宅でも「食糞」を止めさせるには?

お散歩トラブル ワンポイントアドバイス(その5)

[2016/11/1 06:00 | 辻村多佳志]

藤田先生に聞く、しつけについてのワンポイントアドバイス、今回は、自分やほかの犬のうんちを食べてしまう「食糞」についてです。私の愛犬がお世話になっている獣医さんは、「うんちを食べてしまった!」と駆け込んでくる飼い主さんは珍しくないんですよ~とおっしゃっていました。でも、愛犬が目の前でうんちを食べてしまったら、やっぱりギョッとしますよね。

監修/訓練士 藤田真志
麻布大学獣医学部卒/動物人間関係学専攻 (社)ジャパンケネルクラブ公認家庭犬訓練士 (社)ジャパンケネルクラブ愛犬飼育管理士 2004年に「HAPPY WAN」を開業

そもそも、なぜ食糞をするの?

人間にとって、うんちは汚いもの、触ることすらはばかられるもの。しかし、犬にとっては、どうもそうではないようです。藤田先生にうかがってみましょう。

「排泄物を食べることが汚い、不潔だというのは、あくまでも人間にとっての常識ですね。犬のご先祖様は、洞穴などに隠れるようにして眠っていた動物で、もちろん子育ても巣穴の中で行っていました。排泄を促すために、母犬が子犬のお尻をなめる、という話をご存じの方もいらっしゃると思いますが、ニオイで外敵を呼び寄せたり、巣穴の中が不潔になったりするのを防ぐため、排泄物は母犬が食べていました。人間社会で室内飼いされている現在でも、子育て中の母犬が子犬の排泄物を食べることがありますね。つまり、犬にとっては、食糞は異常な行為ではないのです」

うさぎなどは、自分の糞を食べないと健康に悪影響を及ぼすといいますし、ハムスターやパンダ、コアラ、ゾウ、ブタなど、排泄物を食べる動物はたくさんいます。とはいえ、どの子犬もうんこを食べるわけではありません。食べてしまう子は、なぜ食糞してしまうのでしょう?

お散歩中の食糞を防ぐには?

「子犬は好奇心が旺盛なので、排泄物に限らず、ニオイがするものに惹かれがちです。とくに、お散歩中に出合う排泄物は、いつも嗅ぎ慣れている自分の排泄物とはまったく違うニオイがしますから、より興味を惹かれることでしょう。ですから、ニオイをくんくん嗅いでいるうちに、パクッと食べてしまうのです」

成長するにつれ、そういった排泄物に慣れてきますから、いつのまにか食糞しなくなっていく子がほとんどです。とはいえ、排泄物の中には、寄生虫など危険なものが含まれていて、犬の健康に悪影響を与えることもあるため、食べさせるべきではありません。どうすればお散歩中の食糞を防げるのでしょうか?

「基本的な考え方は、前回の記事でもご紹介した、拾い食いを止めさせるしつけと同じです。リードを正しく保持し、草むらなど排泄物が落ちていそうな場所の散歩を控えることで、食糞の機会そのものをなくしていきましょう。お散歩中、排泄物をしきりに探し回っている子は、その行動が定型化していますから、おやつを活用する、リズミカルに歩かせる部分と立ち止まって遊ばせる部分のメリハリを付けるなどで、お散歩中の行動を意識的に変えるべきでしょう。漫然と放置していると、成犬になってからも食糞癖が残ってしまいかねません」

自宅での食糞を直すには?

食糞の場面は、お散歩中だけに限りません。どちらかといえば、自宅での食糞を直したいと考えていらっしゃる人も多いのではないでしょうか。排泄したてのうんちがトイレにあるわけですから。

「好奇心が食糞に結びつくケースももちろんありますが、食糞をしやすい子には、やはりそれなりの理由があります。まず、食欲が強すぎる、または食事が足りていない場合。子犬は成長のために多くの栄養を必要としますから、食事が足りなかったり、食事間隔が開いていたりすると、空腹に耐えられずに食べてしまうことがあります」

私はペットフード安全管理者資格を持っていますが、これまでの経験では、フードの袋の裏などに記載されている1日の給餌量や回数を厳密に守ろうとするあまり、その子の必須給餌量未満しかフードを与えていない飼い主さんもいるようです。犬種や身体のサイズ、その子の身体の状態に応じ給餌量はかなり変わりますから、決めつけは禁物。生後3カ月程度の幼犬でしたら、回数も1日4回5回と与えるべきでしょう。

「食事の量は十分でも、お留守番中に暇すぎることから、排泄物を食べる癖が付いてしまう子もいます。お散歩時間と運動の強度をしっかり確保し、お留守番のストレスをケアすることで食糞が収まる場合もあります」

お散歩の大切さは、こちらの記事こちらの記事でも紹介しています。お散歩が足りていれば、お留守番中はぐっすり寝て過ごせますから、食糞で気を紛らわせなくてよくなるわけです。そして、食事やお留守番に起因する子犬の食糞も、多くの場合は成長するにつれて直っていきます。しかし、食糞の頻度が減らない、成長してもなかなか直らない場合はどうすればいいのでしょうか。食糞しそうになったら叱って止めさせるべきでしょうか?

「トイレの排泄中や、うんちのニオイを嗅いでいるときに、厳しく叱りつけるのはよくありません。叱られた犬は、排泄を嫌なものととらえてしまいますから、トイレ以外で隠れて排泄するようになってしまいますし、飼い主さんがいないときに食糞をするようになります」

「まず、犬がどんなタイミングで排泄するのかを確かめましょう。多くの犬は、食事後や運動の途中で排泄しているはずです。生活のリズムを整えて、排泄のタイミングがある程度固定化されてきたら、飼い主さんがいる前で排泄をしてもらい、終わったら素早く片付けてしまいましょう。また、排泄をするたびに、よくできたね~と誉めていると、犬はうんちに興味を持つ前に、飼い主さんに報告しに来るようになります。お留守番を頼む前は早めに食事を与え、排泄を見届けてから出かけましょう」

食糞防止サプリなどもあるようですが、使用したほうがいいのでしょうか?

「私の経験では、それほど効果はないですね。それよりも、フードを買えてみると、消化の状態やニオイが変わるためか、食糞が収まることがあります。フードによって、排泄回数が多くなったり少なくなったりするので、排泄回数が少なくなるフードを選ぶのも、食糞防止には効果がありそうですね」

食糞は異常なことではなく、当たり前に起りうること。現場に出くわしても、驚いて悲鳴を上げたりしないよう、心構えをしておきたいですね。

[辻村多佳志]