ドッグトレーニングの現場から Vol.12

留守番がうまくできない原因は、飼い主さんの溺愛にあり!?

室内飼いが主流の現代で、愛犬との距離感を考えて暮らそう

[2016/3/29 06:00 | 辻村多佳志]

今回のお悩みは「留守番がうまくできない」です。犬に留守番を頼んだら、留守中にソファをボロボロにかじってしまった、ゴミ箱をあさって部屋中にゴミを散乱させた、おしっこやうんちを撒き散らした、などの話を聞いたことがあるでしょう。なぜ、おとなしくお留守番をしてくれないのでしょうか?

監修/訓練士 藤田真志
麻布大学獣医学部卒/動物人間関係学専攻 (社)ジャパンケネルクラブ公認家庭犬訓練士 (社)ジャパンケネルクラブ愛犬飼育管理士 2004年に「HAPPY WAN」を開業

留守番が苦手な子には、いくつかの傾向があります

うちの子は寂しがり屋でお留守番が嫌いなんですという、飼い主さんの愚痴を聞くことがあります。なかには、もっとしっかりしてくれないと困ると言いつつも、なぜかうれしそうな人もいます。この子は私が大好きだから、私がいないと寂しがっちゃうの、ということでしょうか。しかし、火がついたように大声で鳴き続けて周囲に迷惑をかけたり、ストレスで体調を崩したりする子もいますから、飼い主さんの外出中に留守宅の愛犬が何をしているのかをきちんと観察しておかないと、大きなトラブルを招く結果になりかねません。「甘えん坊だから」で片づけてしまってはいけないのです。

「犬はもともとオオカミ時代から、親兄弟や仲間と一緒に群れで暮らしていた動物です。猫のようにひとりで長い間過ごす環境は苦手ですから、留守番は大きなストレスになります。また、犬は家族の一員であるという考え方が広まり、多くの犬が家族と一緒に室内で過ごすようになったことも、留守番についてのお悩みが多い理由だと感じています。昔の犬飼育方法は外飼いが多く、家族と遊んだりしていないときは基本的にひとりでしたから、自然に留守番慣れしていたとも言えますね」

犬は家族と一緒に室内で過ごす、という飼い方が悪いわけではありません。犬にとってはそのほうが幸せです。しかし、同じように室内飼いをしていても、留守番が平気な子と苦手な子に別れてしまうのはなぜでしょうか。

「まず、その子の性格です。犬はそれぞれ異なった性格を持っています。甘えん坊だったり、寂しがり屋だったり、気が小さかったりする犬は、留守番が苦手な子になりがちですね。また、人が大好きでフレンドリーな犬ほど留守番を嫌がります。たとえば、飼い主さんが家の中を移動すると後にくっついて歩き回り、トイレやバスルームの前で待っている犬がいますが、こういう子は甘えん坊だと考えていいでしょう」

これはよくわかります。甘えん坊で気が小さかったら、静まりかえった家の中で過ごすのは怖いですよね。

「次に、犬種による個性の違いです。留守番が苦手というお悩み相談で、圧倒的に多いのはトイ・プードルですね。トイ・プードルは甘えん坊な子が多く、人との密接な関係を求める傾向がありますから、いつも一緒にいる飼い主さんが出かけてしまうと大きなストレスを感じてしまいがちなのです。ほかにも、柴犬やチワワも留守番についてのご相談を受けることが多い犬種です」

これは意外です。柴犬は番犬や猟犬として暮らしてきた犬ですから、ひとりに慣れているイメージがありましたが、じつは違うようです。

人と犬との愛情が過剰だと、留守番が苦手になります

「人と犬との関係性という面が大きいですね。室内飼いが基本の現代では、いい意味でも悪い意味でも、犬と人の距離が近すぎるんです。留守番が苦手な子の飼い主さんは、とにかく犬を溺愛されている方が多く、いつも抱っこをしていたり、ソファーの上で体を寄せ合って過ごしたり、ベッドで一緒に寝ていたりが目立ちます。出発前には必ず別れの儀式を、帰宅したらまっ先に再会の儀式を行ったりするのも、留守番がとても重大で大切なことだとのメッセージを犬に与えてしまいます。留守番は特別なことではない、ひとりでいる時間は怖くない、と犬に理解してもらうしつけが、留守番に動じない犬を育てるための基本です」

柴犬は人との絆が強いという話をよく聞きますが、この絆が関係しているのかもしれませんね。藤田先生によると、小型犬や中型犬であっても、大型犬だと思って飼うのがいいそうです。大型犬ならむやみに抱っこできませんし、ベッドに上げて一緒に寝たら窮屈です。人と犬が一緒に寝ると健康上の問題も起こりがちなので、寝るときや留守番中などにはクレート内で過ごしてもらうよう環境を整えましょう。また、外出するときは特別に騒がずスーッと出かけ、帰宅時にも何もなかったかのように振る舞うことで、留守番に慣らしていきましょう。

「留守番ができない犬になってしまう理由は、ほぼ100%飼い主さんに原因があります。犬に愛情を注ぐことはとても大切でも、過剰になり過ぎては逆効果なのです。同じ家の中でずっと一緒に暮らし信頼し合いながら、いい意味であっさりとした時間をつくらなくてはいけません。愛情を注げば注ぐほど応えてくれると思ってしまうのは、犬を擬人化して人間の都合のいいように解釈しようという、飼い主さんの身勝手な考え方です」

耳の痛い話ですが、ついつい構い過ぎてしまうという飼い主さんの気持ちもわかります。しかし、そもそも犬を飼うということは、自分の子どもを育てるようなもの。いくらかわいいからといっても、四六時中べったりくっついていたら、子どもの成長にとってはよくないですよね。

「甘えん坊な性格になる程度ならまだいいのですが、犬と人の関係性が過剰に深すぎると、分離不安症という重大な問題を引き起こす危険も高まります。分離不安症がひどくなってしまうと容易には直せません」

分離不安症とは、いったいどのようなものなのでしょうか。次回は、犬にとっても人にとっても不幸な分離不安症について、藤田先生に話をうかがっていきましょう。

[辻村多佳志]