ドッグトレーニングの現場から Vol.17

うちの子にピッタリのドッグトレーナーとは?

[2016/06/28 6:00 am | 辻村多佳志]

ドッグトレーナーにトレーニングを依頼したいが、どんなトレーナーを選んだらいいのか分からない、という人も多いでしょう。たしかに「いいドッグトレーナーとは?」と聞かれても答えに困ってしまいますよね。藤田先生に話をうかがってみましょう。

監修/訓練士 藤田真志
麻布大学獣医学部卒/動物人間関係学専攻 (社)ジャパンケネルクラブ公認家庭犬訓練士 (社)ジャパンケネルクラブ愛犬飼育管理士 2004年に「HAPPY WAN」を開業

ドッグトレーナーには、誰でもなれます

「ドッグトレーナーには、じつは誰でもなれます。資格がいらないのです。自分でドッグトレーナーだと名乗れば、みなさんもその日からドッグトレーナーです」

これは驚きました。どこかのスクールで勉強をして試験を受け、合格した人がドッグトレーナーを名乗れると考えていた人も多いのではないでしょうか。藤田先生は、血統書の発行などで有名なJKC(ジャパンケネルクラブ)公認の家庭犬訓練士ですし、獣医学部も卒業されています。これは資格ではないのでしょうか?

「もちろん、ドッグトレーナーの資格を発行している団体はあります。しかし、これらの団体はどれも民間団体で、公的なものではありませんし、共通の養成プログラムが定められているわけではありません。ですから、同じドッグトレーナーであっても、何年も学問と実技を学んだ人から、簡単な講習を受けただけの人まで、さまざまな人がいるのです。なかには、通信教育を受けてドッグトレーナーになる人もいます」

家庭犬訓練士とドッグトレーナーは違うものなのでしょうか?

「ドッグトレーナーが一般的になる前、日本には『日本警察犬協会』『日本シェパード犬登録協会』『JKC』という3つの大きな団体があり、訓練士の育成を行っていました。JKCの前身は『全日本警備犬協会』です。つまり、以前は警察犬や警備犬などの育成が目的で、そういった犬を訓練できる資格を持った人が訓練士と呼ばれていました。たとえば警察犬ですが、警察に所属している『直轄警察犬』は、じつは全体の1割強。残りの8~9割は『嘱託警察犬』です。裕福な人が馬主になって競走馬を育成するように、一般の人が所有する犬を訓練士が訓練し、警察犬として働いてもらっているのです」

一般の犬ですから、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークやトイ・プードル、チワワなど、愛玩犬としてお馴染みの犬種も警察犬として活躍しています。チワワの警察犬がいるなんてビックリですよね。

「しかし、犬と人との共生社会という考え方が一般的になり、しつけの大切さに注目が集まってくると、警察犬や警備犬のような訓練とは異なる、家庭犬としてのしつけが求められるようになりました。そこで生まれたのがドッグトレーナーです」

いいドッグトレーナーとは?

「警察犬や警備犬は、それらの仕事に向く犬種の中から、適性がある犬を選んで訓練を行いますが、家庭犬はそうはいきません。犬種も性格も暮らしの環境もバラバラですし、飼い主さんによって求めるしつけ内容も異なります。さらに、飼い主さん自身もしつけについて正しい知識と経験を持っていないと、しつけはうまくいかないため、ドッグトレーナーは犬だけでなく飼い主さん自身にもうまく教える技術が求められます」

家庭犬を教えられるかどうかは、実技と経験の豊富さが影響するのだそうです。たとえばJKCの家庭犬訓練士は、試験を受けながらのステップアップが必須で、資格の取得までに最低でも3年はかかるようです。すると、トレーナーが持っている資格の内容を調べ、より多くの勉強をした人を選べば、いいトレーナーに出会えるのでしょうか?

「そうとは言いきれません。いちばん大切なのは、ドッグトレーナーの人柄です。マンツーマン(マンツー犬)指導と称して犬を散歩に連れ出し、犬を遊ばせているだけのトレーナーや、トレーニングもせずに放置しているだけのトレーナーもいるんです。資格の内容や経験を調べるだけでは、人柄までは分かりませんから、トレーニングをお願いする前にトレーナーと直接話し合ったり、体験トレーニングがあれば試してみたりしながら、信頼が置けるトレーナーかどうかを見極めるべきでしょう」

トレーニングに決まった方法はなく、トレーニングに対するトレーナーの考え方もさまざまです。そのため、飼い主さんが求めるしつけ内容と犬の性格によって、相性の良し悪しがどうしても出てしまいます。

「ある犬にとっては最高のトレーナーが、別の犬にとってはまったくトレーニング効果をあげられないトレーナーになることも珍しくないのです。何回かトレーニングをしたのに効果が出ないなと思ったら、トレーナーを代えてみることをオススメします」

1300頭以上のトレーニング実績を持つ藤田先生をもってしても、トレーニング中に噛まれたり、なかなか効果が出なくて困った経験があるそうです。次回は、「しつけをしにくい犬種、しやすい犬種」や、「しつけがうまく行かない飼い主さんの傾向」など、藤田先生の実体験を語っていただきます。

[辻村多佳志]