ドッグトレーニングの現場から Vol.23

お散歩中の拾い食いを止めさせるには?

[2016/10/18 6:00 am | 辻村多佳志]

藤田先生に聞く、しつけについてのワンポイントアドバイス、今回は、お散歩中に落ちている物をパクッと食べてしまう「拾い食い」対策です。身体に悪いものを食べてしまったら、生命に関わる重大事故になりかねませんので、しっかりしつけておきたいところです。

監修/訓練士 藤田真志
麻布大学獣医学部卒/動物人間関係学専攻 (社)ジャパンケネルクラブ公認家庭犬訓練士 (社)ジャパンケネルクラブ愛犬飼育管理士 2004年に「HAPPY WAN」を開業

拾い食いは、犬にとっては自然な行動です

お散歩中に愛犬が何かを拾い食いしたら、農薬が混ぜられて死亡、などという恐ろしいニュースを耳にしたことがあるでしょうか。じつは、私が以前住んでいた地域でも同様の噂があり、ご近所の犬仲間も戦々恐々でした。もちろん、ここまで酷い事件は日常的に遭遇するわけではありませんが、そもそも道端に落ちている物ですから、腐っていても何かが入っていても不思議ではありません。でも、犬はそんな飼い主さんの心配をよそに、いきなりパクッと食べてしまうものです。なぜ食べてしまうのでしょう?

「犬にとっては、それが自然な行動だからです。人間でしたら、落ちている物は汚い、得体が知れないと敬遠するでしょうが、犬はそうはいきません。何かを見つけた、興味を持って近づいた、ニオイを嗅いだ、食べた。この行動は、野生の動物だった犬のご先祖様や、屋外で放し飼いをされていた時代の犬にとっては、ごくごく当たり前の摂食行動です。拾い食いを止めさせるしつけは、この当たり前をガマンさせるということですので、なかなか直らないことも珍しくないのです」

よくよく考えてみれば、人間の赤ちゃんも、手当たり次第に物を口に入れます。それがおいしい物なら食べてしまうでしょう。拾い食いしないのは、成長した人間だけなのかもしれないですよね。

拾い食いが起きないよう、お散歩コースを選びましょう

「お散歩中の拾い食いを予防するためには、食べ物が落ちていないコースを選ぶのがいちばんです。なかなか難しいとは思いますが、ゴミ捨て場の周辺やコンビニの周辺、繁華街でしたら飲食店がある裏通りなどは、とくに注意しましょう。ゴミ捨て場や飲食店裏のゴミ置き場は、カラスが生ゴミをあさって散らかしていたりしますし、コンビニの駐車場や店舗脇の裏道などには、コンビニで買った食べ物の袋や容器、食べ残しが散乱していることが多いからです」

しつけ以前に、飼い主さん側で、拾い食いの機会を減らしてあげようということですね。拾い食いに限らず、しつけを上手に行うコツは「しつけが成功する環境を整えてあげる」ことにあるのです。

「犬を連れずにお散歩コースを確認し、ゴミがあったら捨てるか、または近寄らないようにしましょう。ただ、とくにコンビニ周辺では、捨てた跡を誰かに見られたくないという気持ちが働くのか、植え込みの中や塀のスキ間などに隠されるように捨てられているのが困りもの。人間には見えなくても犬の目線からは丸見えなので、飼い主さんが気付く前にパクッと食べてしまうことが多いのです」

コンビニで売っている惣菜や菓子、弁当などは、犬にとって好ましくない食材や刺激が強い味付けの物があるので要注意。さらに危ないのは、焼鳥やフランクの串、ビニール袋、プラスチック容器などです。いいニオイが残っているので、パクッと食べてしまうことがあります。フライドチキンの骨も危険です。

「拾い食いは食欲が原因だけではありません。ラップやビニール袋など、噛むとガサガサと音がする物や、ボールなどの遊び道具も、ニオイを嗅いでくわえている間にゴクリと飲んでしまう場合があります。自宅でおもちゃ遊びをしている間に飲んでしまったケースなども、拾い食いとは異なりますが同じようなことですね。犬は、何か興味がある物をくわえてみる習性がありますので、誤飲が起こりやすいのです。セミやミミズなどの小動物、砂利や土など、食物とはとうてい言えないような物を食べてしまう子もいます」

わが家のサモエドも生きたセミが大好きで、あっという間に食べてしまいます。遊びの一環なのでしょうが、飼い主の目からすると、あまり気持ちのいい物ではないですね。では、拾い食いをさせないためには、どのようにしつければいいのでしょうか。

飼い主さんの許可を得てから食べるようにしつけましょう

「拾い食いを直すしつけの基本は、飼い主さんの許可があって初めて食べてもいい、と犬に学習してもらうことです。まず、こちらの記事を参考に、リードをきちんと持ってください。お散歩中に、犬が興味を持ちそうな物が落ちていたらトレーニングチャンスです。リードを引っ張ってもギリギリで届かない距離で立ち止まり、リードを保持します」

「犬は落ちている物をくわえようとしますが、『ダメ』などの言葉をかけてくわえさせないようにしながら、犬がこちらを向いたり諦めたりした瞬間に、おやつを与えて誉めましょう。家の中や庭でも、食べ物を置いたり、ぽとんと落としたりしながらトレーニングができます。落ちている物を食べるのではなく、飼い主さんに確認したり無視したりするとおやつにありつける、と理解してもらうのです。お散歩中に犬が何かを見つけても、そのまま無視して歩き続けられるようになるまで練習しましょう」

 拾い食いをガマンするのではなく、無視すればいいことがある、と覚えてもらう。このように、何かの行動に対して、よりメリットが大きい物をぶつけていくという考え方は、多くのしつけに役立ちますので覚えておきたいですね。次回は「食糞」の直し方について考えていきましょう。

[辻村多佳志]