【編集興記】昆虫由来のペットフードがもたらす栄養面以外の環境と経済的メリットとは

[2024/08/29 6:01 am | 編集部]

「Petfood Forum 2024」において、昆虫ベースのペットフードが注目されていました。アメリカミズアブの幼虫、コオロギ、ミールワームなどの昆虫由来のタンパク質や脂質は、ペットにとって必須の栄養以上のものを提供してくれます。

人間の昆虫食はまだ一般的ではありませんが、動物にとっては、すでに一般的である可能性があります。野良犬と野良猫に関する研究によると、彼らは捕獲した獲物などを食べているときに偶然昆虫を食べるのではなく、あえて昆虫を捕獲して食べていることが観察されたということです。

では、ペットにとって昆虫はどんなメリットがあるのでしょうか。

昆虫は、ドッグフードやキャットフードの原料として、あまり使われていません。そのため昆虫のタンパク質は、犬や猫にとって新しいタンパク質(ノベルプロテイン)となります。食物アレルギーを持つ犬にとって、昆虫タンパク質は免疫反応を引き起こすことなく栄養を摂取できる可能性が大きいということです。

さらに、昆虫にはキチンという成分が含まれています。キチンは、カニやエビなどの甲殻類の殻にも含まれる不溶性食物繊維です。セミの抜け殻にも豊富に含まれています。キチンは腸内で善玉菌の栄養(プレバイオティクス)となり、腸内環境を整える助けになります。

また、免疫応答についても注目されています。昆虫には獲得免疫(特定の病原体に対して抗体を生成する免疫)を持たず、自然免疫(病原体に対して即座に反応する免疫)のみを備えています。

そのひとつが「抗菌ペプチド」です。抗菌ペプチドは、菌と戦うための生体防御の機能として備わっている物質です。菌の細胞膜を直接攻撃することで殺菌作用を発揮します。抗生物質のような耐性菌を生み出しにくいことから、有用性が着目されています。

抗菌ペプチドは熱に強いという特性もあります。一部の抗菌ペプチドは100°Cを超える高温でも安定していることが知られています。これは、ペットフードの製造にとってもメリットになります。

そのほかにも、いろいろなメリットがあるようです。例えば、昆虫のキチンは分解されると、天然のグルコサミンが生成されます。グルコサミンは、関節の健康をサポートする成分として広く知られており、サプリメントとして利用されることが多いのです。

アメリカミズアブの幼虫、コオロギ、ミールワームなどには中鎖脂肪酸が含まれています。昨今は、私たちの食事にもMCTオイルの使用が注目されています。

中鎖脂肪酸は体内で速やかにエネルギーに変わり、代謝を促進して脂肪を燃焼します。これにより、運動や日常生活でのパフォーマンスが向上し、体重管理もサポートします。

また、認知機能の改善に関連していることが示されています。脳の主要なエネルギー源として利用されケトン体を生成することで脳にエネルギーを提供します。さらに、一部の研究では免疫機能の強化にも寄与する可能性があるとされています。

このように昆虫は高タンパクであり、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラルが豊富です。そしてアレルギーの出にくい食材として期待されています。

さらに、昆虫の飼育は少量の水と飼料で済み、広い土地を必要とせずコンパクトに育てることができます。このため、従来の動物性タンパク源と比べて環境への負荷が大幅に低くなります。

昆虫は成長が早く短期間で収穫できるため、持続可能な資源として注目されています。特に土地の制約が大きい日本では、昆虫の自給自足が可能で、これにより輸入依存から脱却できるという経済的メリットも期待できます。

このように、昆虫を使ったペットフードは、ペットの健康、環境保護、持続可能性、そして経済面でも大きな利点があるのではないでしょうか。

[編集部]