愛犬を守る! 犬のライム病について飼い主が知るべきマダニ対策と予防法
気温の上昇とともに、マダニの活動が活発になる季節がやってきます。マダニが媒介するライム病は、犬にとって深刻な健康被害をもたらす可能性があります。「まさかうちの子が……」と油断せず、ライム病に関する正しい知識と予防対策を身につけることが重要です。
今回は、愛犬をライム病から守るために、「もしも」の際に迷わないよう、必要な情報をお伝えします。具体的な対策を一緒に考えましょう。

犬のライム病とは
犬のライム病は、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)という細菌によって引き起こされる感染症です。この細菌は主にマダニによって媒介され、ボレリア菌を保有したマダニに咬まれることで体内に侵入します。
マダニは、草むらや森林などの自然豊かな場所に生息しており、犬が散歩中にこれらの場所に立ち入ることで、マダニに寄生されるリスクが高まります。
ライム病は、犬だけでなく、人間やほかの動物にも感染する人獣共通感染症です。そのため、愛犬がライム病に感染した場合、飼い主さん自身も感染するリスクがあることを認識しておく必要があります。
日本国内では、ライム病を媒介する主なマダニとしてフタトゲチマダニが知られています。ただし、犬から人へ直接感染することはなく、マダニに咬まれることによってのみ感染します。
犬のライム病の症状
ライム病の症状は、感染してから数週間から数カ月後に現れることが多く、初期症状は気づきにくい場合があります。主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
発熱:39.5℃以上の発熱が見られることがあります。
関節の腫れ・痛み:特に膝や肘などの関節に炎症が起こり、痛みや腫れが生じます。
跛行(はこう):関節の痛みにより、歩行を嫌がったり、足を引きずるような歩き方になることがあります。
食欲不振:食欲が低下し、元気がなくなることがあります。
元気消失:普段よりも活動的でなくなり、遊びや散歩に興味を示さなくなることがあります。
リンパ節の腫れ:全身のリンパ節が腫れることがあります。
腎臓の合併症:重症化すると、腎臓に炎症が起こり、腎不全を引き起こすことがあります。
神経系の合併症:まれに、神経系に影響を及ぼし、痙攣や麻痺などの症状が現れることがあります。
これらの症状はほかの疾患とも共通しているため、ライム病と特定することが難しい場合があります。特に関節の痛みや跛行(歩行困難)は、高齢の犬の関節炎と誤認されやすいため、注意が必要です。
また、ライム病に感染してもすぐに症状が現れないケースや、無症状のまま経過することもあります。そのため、マダニに咬まれた可能性がある場合は、症状の有無にかかわらず獣医師に相談することが重要です。
症状は時間の経過とともに変化することがあり、初期段階では発熱や関節の痛みが見られることが多いですが、進行すると神経症状や腎臓の合併症を引き起こす可能性もあります。
犬のライム病の診断
ライム病の診断は、症状や検査結果に基づいて総合的に行われます。主な診断方法としては、以下のようなものがあります。
血液検査 | ボレリア菌に対する抗体の有無を調べます。 ※感染初期には抗体が検出されないことがあるため、複数回の検査が必要になる場合があります。 |
PCR検査 | 血液や関節液からボレリア菌のDNAを検出する方法です。 |
関節液検査 | 関節に炎症が見られる場合、関節液を採取して検査することがあります。 |
尿検査 | 腎臓の合併症が疑われる場合に行われます。 |
レントゲン検査 | 関節の状態を確認するために行われることがあります。 |
ライム病の診断には、症状、検査結果、マダニに咬まれた可能性などを総合的に考慮する必要があります。獣医師は、血液検査や抗体検査の結果に加え、飼い主からの情報(症状の発現時期やマダニに咬まれた可能性)も参考にしながら診断を進めます。
また、ライム病はほかの疾患と症状が似ているため、獣医師はこれらの情報を基に鑑別診断を行い、正確な診断を下します。
犬のライム病の治療
ライム病と診断された場合、早期の治療が重要です。主な治療法としては、以下のようなものがあります。
抗生物質 | ボレリア菌を駆除するために、通常は4週間程度の抗生物質投与が行われます。 |
鎮痛剤 | 血液や関節液からボレリア菌関節の痛みや炎症を和らげるために、鎮痛剤が投与されることがあります。 |
対症療法 | 発熱や食欲不振などの症状に対して、必要に応じて対症療法が行われます。 |
ライム病は、早期に適切な治療を行うことで、多くの場合、数週間から数カ月で症状が改善します。しかし、治療が遅れると慢性的な関節炎や腎障害などの重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、早期発見と治療が非常に重要です。
また、治療後も経過観察が欠かせません。獣医師の指示に従い、定期的な検査や診察を受けることで、再発や合併症の有無を確認しましょう。

犬のライム病の予防
ライム病を予防するためには、マダニに噛まれないようにすることがもっとも重要です。具体的な予防法としては、以下のようなものが挙げられます。
駆除薬の使用 | 定期的にノミ・ダニ駆除薬を使用しましょう。スポットオンタイプや飲み薬タイプなど、さまざまな種類があります。 |
散歩後チェック | 散歩後は、愛犬の体をブラッシングするなどして、マダニがついていないか確認しましょう。特に、耳、首、足の付け根などは注意が必要です。 |
エリア制限 | マダニが多く生息する場所には、できるだけ立ち入らないようにしましょう。 |
これらの予防法を実践することで、愛犬をライム病から守ることができます。
日本におけるライム病の現状
日本におけるライム病は、1986年に初めて報告されたマダニ媒介性の感染症で、犬も感染する可能性があります。全国的な統計データは限られていますが、動物病院や獣医関連団体の報告によると、北海道、東北地方、北関東、長野県、岐阜県などの森林地帯での発生が多いとされています。
ライム病は主にフタトゲチマダニによって媒介され、シュルツェマダニなど他のマダニ種も媒介する可能性があります。これらのマダニは春から秋にかけて活動が活発になり、特に5月から8月は注意が必要です。近年では都市部の公園や緑地でもマダニが発見されるケースが増えており、都市部に住む飼い主もライム病のリスクを認識する必要があります。
人間のライム病も同様に、全国の森林地帯で多く報告されています。厚生労働省の統計によると、近年の患者数は年間200~300人程度で、やはり5月から8月にかけて発生が増加します。
ライム病はマダニによって媒介される感染症であり、対策が重要です。国立感染症研究所や厚生労働省では、マダニによる感染症の予防策が紹介されています。愛犬をライム病から守るためには、飼い主による正しい知識と予防対策の徹底が欠かせません。
まとめ
ライム病は、日本ではあまり馴染みのない病気かもしれませんが、決して他人事ではありません。特に自然が豊かな地域では、知らないうちに愛犬がマダニに咬まれ、感染してしまう可能性があります。
ライム病は早期に発見し、適切な治療を受ければ回復が見込める病気ですが、症状が分かりにくいために見過ごされがちです。そのため、日ごろから予防策を講じ、愛犬の健康状態に気を配ることが何よりも大切です。