愛犬の健康を守る! 早期発見・早期治療につながる最新がん検査とは
がんの早期発見は、治療効果や予後に大きく影響します。特に愛犬の健康を守るためには、最新のがん検査の情報を深く理解することが重要です。

米国では、犬のがんを早期に検出するための新しい検査方法が開発されています。そのひとつが、「Nu.Q® Vet Cancer Test」です。この検査は、血液中のヌクレオソームを測定することでがんの有無を判定する新しい診断技術です。ヌクレオソームは細胞の死滅時に血流中へ放出されるDNAとヒストンの複合体であり、がん患者ではこれが異常に増加することが知られています。
この方法は、犬に対して最小限の負担で済み、2~5㎖の血液サンプルからがんの徴候を検出できる点が特徴で、検査結果は1~4日以内に得られます。従来の組織生検や画像診断と比べてより迅速で簡便な方法として期待されています。
この検査は、リンパ腫や血管肉腫、メラノーマといったがん種に対して特に高い感度を示し、これまでの研究では約75%の精度でがんの診断が可能であることが報告されています。早期発見のツールとしての有用性が認められつつあり、がんのスクリーニング検査としての普及が期待されています。
バージニア工科大学の研究チームは、犬の尿を用いた新しい非侵襲的かつ迅速ながん検出法を開発しました。この手法は、ラマン分光法を利用して尿中の分子構造を分析し、がん特有の「分子指紋」を検出するものです。
ラマン分光法とは、分子にレーザー光を照射し、その散乱光を測定することで分子構造や化学的性質を特定する技術です。研究チームは、犬の尿サンプルを収集し、ラマン分光法を用いて分析を行いました。その結果、がんを有する犬の尿には特有の分子指紋が存在し、健康な犬との識別が可能であることが判明しました。
この新しい検査法は、非侵襲的であり、犬にとって負担の少ない方法です。従来の診断法では、がんが進行してから症状が現れることが多く、早期発見が難しいとされてきました。しかし、この尿検査を用いることで、症状が現れる前の段階でがんを検出し、早期治療の可能性を高めることが期待されています。
さらに、特定の犬種ではがんの発生率が高いことが知られており、定期的な尿検査を行うことで、これらの犬種におけるがんの早期発見・予防に役立つと考えられます。研究チームは、将来的にこの検査法を広く普及させ、飼い主が手軽に利用できるよう、コスト面でも配慮した開発を進めています。
日本においても、富士フイルムが提供するNu.Q® Vet Cancer Testが注目されています。全身性がん(リンパ腫、血管肉腫、組織球性肉腫)で高い検出率(感度76%)が得られており、特にリンパ腫や血管肉腫に対して高い感度を示しています。
臨床現場からの報告では、治療効果の判定や予後管理に有用であるとされています。例えば、多中心型リンパ腫の寛解(症状がおさまり再発しない状態が続いている状態)後の経過観察において、従来のリンパ節のサイズ測定やエコー検査と併用することで、より客観的なデータを提供できると報告されています。
日本では、犬のがんによる死亡率が高く、多くの飼い主にとって深刻な問題となっています。近年の調査では、犬の死因の約半数ががんによるものであると報告されています。特に、高齢犬では発症リスクが高まり、早期発見が生存率向上の鍵となります。
最新のがん検査技術を活用することで、犬のがんをより早い段階で発見し、適切な治療を行うことが可能になります。日本でも、こうした新しい診断法の導入が進めば、犬の健康寿命の延伸に大きく貢献できるでしょう。
飼い主としては、定期的な健康診断や、新しい検査技術に関する情報を積極的に収集し、愛犬の健康を守るための選択肢を増やしていくことが重要です。早期発見と適切な治療を通じて、大切な家族である犬とより長く幸せな時間を過ごせるよう、最新の獣医学の進歩を活用していきましょう。