【編集興記】インフレがペットの生活に影響を与えているのは万国共通だった

ちょっと気になったペット関連のトピックスを、編集スタッフが持ち回りで紹介する“不定期”コーナーです。

近年、日本ではペットフードの価格が急激に上昇しています。原材料費の高騰や輸送コストの増加、為替レートの変動など、さまざまな要因が影響しています。

さらに、所得が伸び悩んでいる現状もあり、ペットを家族同然に愛する多くの飼い主にとって、この値上げは家計に大きな負担となっています。

「ペットフード原料の世界市場規模調査から考える、悪いインフレと日本のペットマーケット」でも言及したとおり、ペットフードの価格はコロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻などによる資源高で、2019年前と比較すると倍近くにもなっています。

歴史的な円安も拍車をかけており、物価上昇に賃金が追いついていない実質賃金の低下により、家計は厳しさを増しています。

世界も同じような状況なのでしょうか。北米およびヨーロッパ4カ国の飼い主を対象とした調査によると、景気の先行き不透明感が消費に何らかの影響を与えていることがわかったようです。

欧米では、一時上昇したインフレ率は、落ち着きを取り戻しつつあります。それは、ペットフードも同様です。しかし、飼い主は1~2年前と同じ割合で上昇しているわけではないが、コロナ前と比べればまだかなり高いと考えているようです。

例えば、米国のペットフードの価格上昇率は、前年比でわずかに低下するほど鈍化しているものの、価格は2021年に比べて23%、コロナ禍前の2019年に比べて25%上昇したようです。

欧米の飼い主たちは、現在進行形の困難にどのように対処しているのでしょうか。飼い主のオンライン・コミュニティであるYummypetsが、米国、カナダ、フランス、英国の飼い主を対象に行った調査を元にしたレポートが『Pets International』に掲載されています。

Yummypetsの調査によると、85%の飼い主が経済状況は家計に深刻な影響を与えると答えています。米国とカナダでは、ペットフードやおやつなどの支出を減らした飼い主が多く、それぞれ43%と40%でした。

しかし、フランスの消費者はさほど影響を感じておらず、62%が支出を増やしたと答えています。フランスにおけるペット用品の価格上昇率は20%なのを考えると興味深いデータです。その理由は書かれていませんが、より家族化が深化していると言うことなのでしょうか。

また、低価格のペットフードへ切り替えを検討したのは、アメリカとカナダで54%、フランスは最も少ない34%のみでした。全体でも約半数が切り替えを検討したことになります。ちなみに、切り替えを検討したのは、猫の飼い主(50%)のほうが犬の飼い主(46%)よりも若干多かったようです。

食べる量や嗜好性などからすると、犬の飼い主のほうが切り替えを検討しそうなものですが、そのあたりの考察はなされていません。

日本では、ペット保険会社がペットの支出に関する調査をしています。アニコムの「ペットにかける年間支出調査2023年」によると、総額では犬が前年比94.8%、猫が前年比105.3%でした。フードとおやつに関しては、犬が前年比97.3%、猫が前年比106.6%でした。

2023年は、円安が現在よりも進んでおらず、円相場は1ドル140円前後でした。しかし、円はどんどん値下がりし、37年ぶりとなる160円台に突入しました。

このまま推移すると、海外メーカーのフードは、また値上げされる可能性もあります。原料価格が上がると、その影響は国内メーカーのペットフードも及びます。

企業努力では限界かもしれませんが、さらなる値上げの際には上げ幅は最小限にしてもらいたいところです。ペットや飼い主のためにも。