【犬飼いTIPS】じつは犬は寒さに弱い? この冬の愛犬の寒さ対策
「犬は喜び庭かけまわり~♪」という童謡にもあるように、犬は人よりも寒さに強いというイメージがあります。しかし、それは年齢や犬種によって異なり、寒さに弱い犬もいます。寒さは、健康に悪い影響を与える要因にもなります。気温の低下とともに、愛犬の健康管理に気を使う必要があります。今回は寒さに強い犬種と弱い犬種、また健康管理のポイント等についてのお話です。
寒さ対策は犬種によって異なる
犬は人よりも体温が高いため、寒さに強いといわれています。しかし、寒さの耐性は毛の長さや質、被毛の構造や体格の違い、年齢によって変わります。寒い地域が原産の犬種、長毛種や被毛がダブルコートの犬などは寒さに強いとされています。また、体格がよく、体重が重い犬ほど体内で多くの熱をつくることができること、体重あたりの体表面積が狭くなるために熱が逃げにくいことから、大型犬も寒さに強いとされています。
ドイツの生物学者クリスティアン・ベルクマンが1847年に発表したベルクマンの法則によると、「恒温動物においては、同じ種でも寒冷な地域に生息するものほど体重が大きく、近縁な種間では大型の種ほど寒冷な地域に生息する」ということです。例えば、北極圏に生息しているホッキョクグマは体長200~300cm、日本にも生息するツキノワグマは体長130~200cm、マレーシアやインドなどの熱帯域に生息するマレーグマは100~150cmと寒い土地に住むクマのほうが大きいのです。この法則は犬にも当てはまります。
一方、暑い地域が原産の犬種、短毛種や被毛が1層しかないシングルコートの犬、体温調節が上手にできない幼齢犬や高齢犬、病気の犬などは寒さに弱いとされています。また、前述した理由から小型犬も寒さに弱いのです。しかし、長期にわたり完全室内飼育の場合は快適な室温で生活をしているため、寒さに強いとされている犬種であっても寒さに弱くなっています。愛犬の様子をよく観察し、寒さ対策を考える必要があります。
寒さに強い犬種と弱い犬種
寒い地域を原産とする犬は体格も大きくダブルコートであることが多く、寒さに強いとされています。極寒で有名な地で産まれたシェットランドシープドッグやシベリアンハスキー、また日本の寒い地域で産まれた秋田犬や柴犬も比較的寒さに強い犬種です。そのほか、ゴールデンレトリーバー、セントバーナード、サモエド、ラブラドールレトリーバー、日本スピッツなどが挙げられます。また、小型犬でも比較的寒さに強い犬種は、ポメラニアン、ペキニーズ、ジャック・ラッセル・テリア、ミニチュア・シュナウザーなどです。
一方、暖かい地域を原産とする犬は体格が小さくシングルコートであることが多く、寒さに弱いとされています。メキシコで産まれたチワワやコンゴ共和国で産まれたバセンジー、体格の小さいマルチーズ、ミニチュアダックスフンド、ヨークシャテリア、パピヨン、イタリアングレーハウンド、ミニチュアピンシャーなどは寒さに弱い犬種です。そのほか、シングルコートのトイ・プードル、ボストン・テリア等も挙げられます。
犬が寒がっているサインを見逃さない
冬の寒さは愛犬の健康によい影響を与えることはありません。寒さであまり水を飲まなくなることで泌尿器系の病気にかかりやすくなったり、冷えで下痢になりやすくなったりします。また、免疫力の低下により感染症にかかりやすくなったり、持病が悪化するリスクも高くなります。そのため、愛犬が寒がっているサインを見逃さないことが大切になります。愛犬の仕草や行動をしっかりと観察し、寒がっているようであれば防寒対策をしてあげましょう。寒いときに犬が見せるサインは下記のようなものです。
・小刻みにブルブルと震えている
・ケージや部屋の隅で小さく丸くなっている
・布団や毛布に潜り込んでいる
・いつもより水を飲む量が少ない
・散歩に行きたがらない
・人の傍にくっついている
このようなサインを見たら、まずは部屋の温度を上げましょう。もし、震えが治まらないなど愛犬の様子が改善しないようであれば、病気の可能性があります。そのような場合には、早めに動物病院を受診しましょう。
防寒対策は「安全第一」が基本
犬にとって快適な環境は、室温20℃前後、湿度50~60%程度が目安になります。寒い場所を避けて、暖房器具をうまく使うことによって、この数値を一定に保つようにしましょう。温度計や湿度計は愛犬の背の高さに合わせたところに設置することをオススメします。
エアコン
エアコンを使用する場合、暖かい空気は上に行き、冷気は床に溜まりやすくなります。サーキュレーターなどを使うことで、空気が部屋全体に循環するようにします。
ストーブや石油ファンヒーター
暖房器具はできるだけ火を使わないものが理想です。しかし、ストーブや石油ファンヒーターを使用する場合は、愛犬がヤケドなどをしないように周囲を柵で囲い、ガードをする工夫が必要です。
オイルヒーターや電気暖房製品
オイルヒーターや電気暖房製品は、愛犬が電気コードをかじらないように注意する必要があります。コードに保護用のカバーを巻き付けるなどして感電しないようにします。家具などの後ろを通すなど愛犬の目に触れないように配線するなどの工夫も必要です。
床暖房
コードレスの床暖房は犬にとって理想的な暖房器具といえますが、床全面が暖まるので暑くなると愛犬に逃げ場がなくなります。愛犬が自分で快適な場所を選べるように、すのこを置く、ソファを置くなど、あえて涼しい場所もつくって自由に移動できるようにしましょう。
注)犬がコタツのなかで熱中症になる事故が毎年発生しているので、愛犬をコタツのなかに入れないようにしま
しょう
飼い主の留守中や就寝時など、人が見ていられない状況では何が起こるかわかりません。突然の地震などで発火や引火の恐れもあります。そのようなリスクを考え、十分に注意して使用する必要があります。
電気製品等を使えない場合には、ケージと壁の間に段ボールや断熱材を挟み込む、ケージの上から毛布やタオルなどをかぶせる、ケージのなかに暖かい素材の布や毛布を入れる、保温効果の高い素材の洋服を着せる(長袖・長ズボンのロンパースなど)、ケージやサークルの下に断熱材を敷く、タオルを巻いた湯たんぽを入れておくなどの工夫が有効です。
寒い時期の散歩の注意点
室温と外気温の差が激しい場合には、急激な温度変化により体が硬直し、怪我をしやすくなります。前述した寒さに弱い犬種等には、洋服を着させる、靴を履かせるなどの防寒対策が必要です。また、なるべく暖かい時間帯を選ぶようにし、帰宅後に愛犬の足や耳の先、尻尾などを触って、冷たくなっていた場合は温かいタオルなどで暖める等のケアも必要です。
雪が積もる地域では路面凍結防止剤に使用される融雪剤(ゆうせつざい)に注意が必要です。これには「塩化カルシウム」という成分が含まれていて、犬の肉球に触れると炎症をおこしたり、皮が剥けてしまうことがあります。犬が足を舐めることで「塩化カルシウム」を摂取してしまうと、嘔吐や下痢、腹痛などの中毒症状を引き起こすことがあります。雪で濡れた足は舐めさせないようにし、散歩後は洗う、あるいはしっかりと拭き取るようにしましょう。
また、長毛種の場合には雪の上を歩いているだけでも垂れた毛に雪が絡みつき、次第に雪玉になってしまいます。雪玉ができやすい足首、内股、脇の下、お尻周りなどは体温調節に必要な血管がたくさんあるので、放っておくと体温低下や凍傷になってしまうこともあります。大雪の日や融雪剤が心配なときには、犬用のスノーウェアやレインコート、シューズなどを利用するのもひとつの防寒対策です。
まとめ
犬には犬種や被毛のタイプによって寒さに強いか弱いかの差があります。愛犬の様子をよく観察し、寒がっている場合には安全に暖めてあげられるように防寒対策をしてあげてください。病気を発症する前に対策をすることが重要です。今年の冬も愛犬とともに快適に過ごせるように、今のうちから準備を進めましょう。