野生動物も暮らす田舎道はゆっくり走ろう

わが家のある信楽から三重県の伊賀上野まで行くには、山のなかの道を走ります。舗装された道ですが、左右にはほとんど民家はなく、木々が生い茂る景色が見えるだけです。信号もほとんどないので、快適にドライブできます。特に今の季節は紅葉が見られて、美しい自然を感じながらの癒しの時間です。しかし、この道にはほとんど電灯がありません。昼間は良いのですが日没後は真っ暗なので、クルマのヘッドライトが頼りになります。

先日、自宅に戻るのが遅くなり、真っ暗なこの道を走ることになりました。対向車はハイビームで走ってくるので、慎重にできるだけ速度を落として走っていました。しばらく対向車もなく、後続車もなく、私のクルマだけが走っている状態でした。すると、いきなり目の前に大きな物体が……。私は驚いてブレーキを踏みました。目に入ってきたのは、大きな角を持った立派な鹿です。鹿も私のクルマに驚いたようで、すぐに走り去っていきました。「うわぁ、ぶつからなくてよかった」と心から思いました。

わが家の裏山にも鹿がいるのですが、鳴き声や糞を見ることがあるだけで、姿は見たことはありませんでした。クルマの前に飛び出してきた鹿は、神々しい威厳と風格をまとっていました。「こういう鹿が生息している自然のなかに住んでいるのだなぁ」となんだか感動してしまいました。

私たち人間からしてみると「あぶないなぁ、道路に飛び出してきて」と思うのですが、鹿にしてみれば「今も昔も変わらず生息している場所」なんですよね。その場所を人間の都合で切り開いて、道路をつくって、クルマでビュンビュン通過する。言ってみれば、人間が鹿の生息場所を通らせてもらっているわけで。あらためて野生動物がいる地域での人間の生き方を考えてみようと思いました。

まずは、「田舎道はゆっくり走ろう」ということから始めます。