【犬飼いTIPS】広がるマダニ感染症。対策をしていますか?
春先から夏にかけて毎年話題になるのがマダニ感染症です。今月3日に国立感染症研究所などの調査結果が公表され、致死率の高い感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」が犬や猫などのペットからうつった例が少なくとも12件確認され、うち1件は死亡していたことがわかりました。
SFTSは致死率が6~30%と高いことが知られていますが、全国的な気温上昇傾向から、西日本から徐々に東日本へと確認地域が広がっているそうです。特に犬の場合は毎日散歩に出かけるので、マダニが媒介する感染症にかからないように対策をする必要があるのです。今回はマダニ感染症に関するお話です。
マダニの生活圏
マダニは世界中に800以上の種が知られていますが、そのうち日本に生息しているのは47種になります。家庭内に生息するダニとは種類が異なり、マダニは固い外皮に覆われた大型のダニ(吸血前は3~4㎜)で、土のある場所に生息します。山や森、公園、河川敷の草むらなどに潜み、体温やニオイ、振動、二酸化炭素などをマダニ特有の感覚器官で感知して、人や犬・猫などに飛び移って寄生するチャンスをうかがっています。
多くは春から秋(3~11月)にかけて活動が活発になりますが、冬にも活動する種類もいます。卵からかえって幼ダニ、若ダニ、成ダニの各ステージで1回以上、生涯で少なくとも3回は吸血するといわれています。マダニが吸血するのはヒト以外に、野ネズミ、野ウサギ、シカ、イノシシ、アライグマ、ハクビシンなどの野生動物のほか、野良猫、そして散歩中の犬などです。最近は野生動物が食料を求めて人の生活圏に出没することも多く、そこから運び込まれる可能性も高くなっています。
マダニが媒介する感染症に注意
ウイルスや細菌などを保有しているマダニに咬まれると、咬まれた人が病気を発症することがあります。マダニが媒介する感染症はいくつかありますが、特にSFTSには注意が必要です。潜伏期間はマダニに咬まれてから6日~2週間で、主な症状は原因不明の発熱、消化器症状(食欲低下、嘔吐、下痢など)、血小板減少、白血球減少などで、重症化すると命を落とすこともあります。
また、犬がマダニに咬まれると、アレルギー性皮膚炎や貧血、ダニ麻痺症、栄養障害などの病害を引き起こします。マダニが運ぶ病原体がさまざまな感染症の原因となり、病態によっては命に関わる危険性もあります。このほか、マダニ媒介性疾患には下記のようなものがあります。
■バベシア症(バベシア原虫)
人の症状:発熱、貧血など。
犬の症状:貧血、発熱、黄疸、元気消失など。症状が重い場合には急死することがある。
■日本紅斑熱(リッチケア)
人の症状:頭痛、発熱、倦怠感など。
犬の症状:無症状
■ライム病(ポレリア菌)
人の症状:赤い丘疹(マダニに咬まれた部分を中心とする遊走性紅斑)や発熱、関節痛など。放置すると心膜炎や顔面神経麻痺などが起こる可能性がある。
犬の症状:発熱、食欲不振、全身性麻痺、関節炎など。
■Q熱(コクシエラ菌)
人の症状:インフルエンザに似た高熱、呼吸器症状、肺炎など。慢性の場合には疲労感、慢性肝炎、心筋炎など。うつ病などの精神的な疾患と間違われることもある。
犬の症状:不顕性感染で、軽い発熱、流産・不妊症などが見られる程度。
■エールリヒア症(リッチケア)
人の症状:発熱、頭痛、関節痛、倦怠感、呼吸困難など。放置すると命に関わることも。
犬の症状:急性の場合は発熱、鼻汁、流涙、食欲不振、元気消失、貧血など。
マダニの駆除
マダニは人、犬や猫などの皮膚に寄生し、顎でがっちりと咬みついてぶら下がっているため、黒いイボのように見えることがあります。そして、体の100倍くらいになるまで血を吸います。そのため、無理に引きちぎると顎の部分が皮膚に残ってしまい、それが原因で化膿や腫れを引き起こすことがあります。
また、マダニが病原体を持っていることもありますので、マダニはつぶさずに専用のピンセットで慎重に除去する、あるいは薬剤を使用して取り除く必要があります。愛犬に寄生しているのを見つけた場合には、動物病院など医療機関で取ってもらうことをオススメします。もし、動いているマダニを見つけたときには、ピンセットなどで取り密封容器などに入れて処分しましょう。
マダニから身を守る方法
飼い主と愛犬がマダニから身を守るには、咬まれないようにするしかありません。それぞれ下記のような対策をしましょう。
【飼い主の対策】
野山や畑、草むらなどで野外活動を行う場合には、長袖や長ズボン、軍手、靴下などを着用し、直接地面に座らない、草木や竹が生い茂っているところには入らないなどの注意をしましょう。活動後は、上着や作業着は家のなかに持ち込まないようにするか、ガムテープや粘着テープ(コロコロ)を使って服に着いたダニを取り除いてから家に入りましょう。シャワーや入浴時にもダニが付いていないかチェックをすることも大切です。
【愛犬の対策】
愛犬への寄生を予防するためには、定期的な予防薬の投与が必要です。予防薬には犬の体に薬剤を垂らして投与するスポットオンタイプや錠剤タイプ、スプレータイプなどがあります。スポットオンタイプは垂らした薬剤が皮脂とともに放出されることで効果が発揮されます。毎日の散歩前に虫よけスプレーをするなど併用することもオススメです。
まとめ
気象庁によると、日本の年平均気温はさまざまな変動を繰り返しながら上昇しているそうです。長期的には100年あたり1.26℃の割合で上昇していて、1990年代以降、高温となる年が頻出しています。今後も全国的に夏場に高温になるところが多くなることが予測され、そうなればますますマダニも東日本へ出没することでしょう。
厚生労働省では、海外情報やこれまでの国内調査の結果を「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A」として情報を公開しています。今後、ますますSFTSに感染する可能性が高まることが予想されるので、マダニはどこにでも潜んでいると考え、対策をしっかりと行うことが大切です。
コメントを送信