今回、8月下旬から9月初旬にかけてシアトルを訪れる機会に恵まれました。せっかくなので、シアトルのペット事情を見て回りました。いわゆるペット先進国の“いま”をレポートします。
ワシントン州最大の都市シアトル
深い入江となったピュージェット海峡に面したシアトルは、海と緑に囲まれた美しい都市です。マイクロソフトやアマゾンなど、巨大IT企業の本社があります。代表的なランドマークの「スペースニードル」は1962年のシアトル万博で建てられました。
生活水準も高く文化的にも豊かな街とされています。犬を飼っている人も多く、「犬が住みやすい街」として、全米第4位に選ばれたこともあるそうです。
筆者が滞在したダウンタウンシアトルは、重要施設が密集し、整備が行き届いた街の中心地です。ビジネスとショッピングの要所で、近代的な高層ビルと古き歴史的建造物、都市公園などが入り混じっています。街を歩いていると、あちらこちらで飼い主に連れられた犬の姿を見かけました。
ペット用品が充実したペットショップ
まずは、シアトルタコマ国際空港(シータック空港)からクルマで10分くらいの場所にある、アメリカ最大手のペットショップ「PETSMART」へ行きました。
いきなり入口がコストコのようで驚きました。余談ですが、コストコの本社もシアトルです。アメリカでは「コスコ」と発音します。
アメリカのペットショップは犬や猫などの生体販売はありません。なぜかというと、多くの都市や郡で「パピーミルから犬、猫、うさぎをペットショップで販売してはいけない」という法律があるからです(アメリカ全土ではない)。
販売されていたのは、チンチラ、モルモット、魚類、爬虫類などです。犬や猫はパピーミルからレスキューされた子たちやシェルターの子たちが、定期的に行われる譲渡会で里親を見つけています。
また、店内にはつねに保護猫の里親募集のスペースがあり、この日も数匹の猫の飼い主を募集中でした。
その代わりにグッズがいっぱい。フードもおやつも種類が豊富で驚きました。かわいらしいおもちゃも数多くありましたし、ノミ・ダニ駆除薬、種類やサイズを取り揃えたエリザベスカラーもあり、まさに飼い主の「痒いところに手が届く」というような品揃えでした。
そして、店内では社会性を身につけるためのドッグトレーニングも行っていました。印象的だったのは超大型犬のグレートデンと超小型犬のチワワが同じ空間で過ごしていたことです。日本ではあまり見かけない光景なので、ドキドキしながら眺めました。
店のアイドル犬たち
ダウンタウンのお店では、さまざまな犬が店の看板犬としてアイドル並みに活躍をしていました。ウォーターフロントのお土産屋さんでは、テリア系の犬が店内を自由に動き回って、訪れる観光客をもてなしていました。
きちんとしつけがなされているようで、吠えることもなく、粗相をすることもなく、商品に悪戯することもなく過ごしていました。素晴らしいのは、店の出入口近くには行きますが、そこから店外に出ることがないこと。さすが看板犬という紳士なふるまいでした。
また、ダウンタウンを歩いていると、ときどき露店が出ています。アクセサリーを販売していることが多いのですが、そこにも看板犬がいました。
しっかりとリードで繋がれていますが、広い範囲を自由に歩けるほどの長さがあるリードです。道行く人に名前を呼んでもらったり、頭を撫でてもらったりして、アイドル並みの人気です。歩道に寝そべっておとなしく過ごしていました。
人気のマーケットにもたくさんの犬の姿が
シアトル観光の人気No.1といえば、「パイク・プレイス・マーケット」です。ここは観光客だけでなく地元の人も通う市民の台所で、約200以上のレストランやショップが集まり賑わっています。
道路に面しているお店もあれば、ビル内にある店もあり、どちらも当たり前のように飼い主が愛犬を連れて買い物をしているのです。
小型犬から大型犬まで、大きさや犬種も問いません。人混も賑やかさも問題なく、違和感なくそこにいます。鳴くこともないので、犬を連れていない人も気にしている様子はありません。
お店のドアに「NO PET」と書かれていても、気にすることなく愛犬を連れてグイグイ店に入っていく飼い主もいます。それがシアトルダウンタウンの日常なのだと思いました。
愛犬の散歩は昼休みに
シアトルはアメリカのなかでも比較的治安は安定していると聞きますが、エリアによっては夕方から深夜に治安が悪くなるそうです。
地元の人でも夜間にはひとり歩きはしない、細い路地には入らない、死角のある駐車場などには入らないそうです。ホテルの窓から様子を眺めていましたが、実際に外を歩く人はほとんど見かけませんでした。
この時期のシアトルの夜明けは午前7時ころです。そうなると、出社前に愛犬の散歩というわけにはいきません。そのため、愛犬の散歩は昼間か、昼休みの時間帯にしている飼い主もいるそうです。
会社の近くに住んでいる飼い主は、お昼に一度家に戻り、愛犬の散歩をしてから会社に戻るとか。また、会社自体が犬連れの出勤OKというところもあり、仕事着で愛犬の散歩をしている飼い主を多々見かけました。
愛犬が着ている服もとてもオシャレで、犬がいる生活をとても楽しんでいるように見えました。ちなみにアマゾンは犬連れの出勤OK。しかも、会社に一般の人も使用できるドッグランも設置されているというのは驚きです。
独特だと感じたのは、飼い主さんの代わりに散歩をしてくれる「ドッグウォーカー」が多いことです。利用する飼い主もとても多く、それを職業にしている人もいるそうです。
日本にも「お散歩代行」をしているペットシッターさんがいますが、利用頻度は低いと聞きます。前述したようにシアトルは夜間の外出がままならないので、昼間に散歩をする飼い主が多い。そのため、ドッグウォーカーが活躍できるのかもしれません。
また、シアトルのダウンタウンにはビルがとても多いのですが、そんななかにもドックパークが4カ所もあります。木々が生い茂る公園も多く、犬を飼うには良い環境なのです。
所々に犬の排泄物回収BOXがある街
ダウンタウンを歩いていると所々に、犬の排泄物回収BOXを目にしました。リードを付けること、ペットがした排泄物はきちんと処理することが書かれています。それが法律であり、守らなければ$75~$500(約11,000~73,750円)の罰金が科せられるとも。
うんち袋も設置してあるのでとても便利で、よいシステムだと思いました。歩道の植え込みには、犬がおしっこをしないように“NO PET”と書かれていることがありますが、すぐ横に小石が敷いてあるスペースが設けられていて、そこにおしっこができるようにしてあります。とても犬に優しい街だと感じました。
まとめ
シアトルは犬を飼うにはとても過ごしやすいところだと思いました。犬の排泄物回収BOXがあちこちにあったり、ドッグパークが4カ所もあったり、木々が生い茂る公園もあり、散歩がしやすい環境です。
愛犬家が多く、職場にペットを連れて行く飼い主をよく見かけます。犬を連れていると声をかけてくれる人も多いようで、楽しみながら街を散策しているようです。シアトルは犬にとっても優しい街でした。
こうした海外のペット事情をみると、まだまだ日本が参考にすべきことが多いと実感します。生体販売ばかりが問題にされますが、もっとペットのいる生活を楽しむ、ペットと生活しやすい環境をつくる。そんなことも必要なんだと考えさせられました。