犬との暮らしで知っておきたいこと Vol.132

【犬飼いTIPS】ダニによる犬の皮膚病「疥癬症」と「毛包虫症」について

[2023/05/29 6:01 am | 編集部]

疥癬症(かいせんしょう)と毛包虫症(もうほうちゅうしょう)は、微細なダニが皮膚に寄生することで引き起こされる皮膚疾患です。愛犬がひどく痒がったり、毛が抜けてハゲたりした場合はどちらかの可能性があります。

疥癬症は、感染力が非常に強いことが知られています。しかし諦めることはありません。これらは予防可能であり、治療法もあります。今回は、犬の疥癬症と毛包虫症についてのお話です。

原因となるダニは2種類

犬の疥癬症は、ヒゼンダニと呼ばれるダニが皮膚に寄生することで発症する皮膚の感染症で、ほかの犬や人にもうつる人獣共通感染症です。ヒゼンダニが角質層にトンネルを掘って寄生することで、激しい痒みを引き起こします。

犬の疥癬症には、通常疥癬(つうじょうかいせん)と角化型疥癬(かくかがたかいせん)と呼ばれる2つのタイプがあります。通常疥癬ではヒゼンダニの数は数十匹以下でアレルギー性皮膚炎と同じような症状が見られます。角化型疥癬では100万~200万匹とダニの数が多く、感染力が強いのが特徴です。

一方、毛包虫症はニキビダニ症とも呼ばれるように、犬の皮膚(毛包や皮脂腺)に常在しているニキビダニが犬の寄生し、免疫力の低下をきっかけに急激に増殖することで、皮膚に炎症を起こし、脱毛や発疹などが現れる皮膚疾患です。細菌感染が起こると膿皮症を併発することもあります。

一般的には1歳未満の子犬に多く見られ、ほとんどは母犬からの感染とされています。伝染性はないのでほかの犬や人うつることはありません。

疥癬症の原因と症状

ヒゼンダニは、0.4㎜以下で目には見えませんが、痒みの原因であることは間違いありません。この微細なダニは愛犬の皮膚に取り付き、メスは角質層にトンネルを掘って卵を産みます。

一般的に疥癬症の原因は、感染したほかの犬や動物と直接接触することです。まれに感染した動物の鱗屑などから感染する場合もあります。

犬の疥癬症は非常に伝染性が高いため、感染した犬と遊んだり、同じ空間で生活したり、あるいはペットサロンやペットホテル、動物病院などで伝染することもあります。また、感染した犬が使っている寝具や毛布が媒介となる可能性があります。

初期段階の疥癬症は、耳たぶや肘周囲の赤いポツポツと痒みが現れます。その後、腹部、脇の下、足などに広がります。

疥癬症にかかった犬は、始めのうちはつねに掻いているため、皮膚が赤く炎症を起こしています。時間が経つにつれて、脱毛し、皮膚がただれ、瘡蓋(かさぶた)ができたりします。膿んで悪臭を放つこともあります。放置するとリンパ節が腫れ、神経細胞や筋細胞が失われ、ときには死に至ることもあります。

毛包虫症の原因と症状

犬の毛包や皮脂腺には、子犬のころからニキビダニが存在しています。ほとんどの犬にとって、このダニが問題になることはありません。もし問題が発生した場合、通常は免疫システムが低下している徴候です。子犬やシニア犬、糖尿病やがんなどの疾患がある場合は、毛包虫症にかかる可能性が高くなります。

毛包虫症は、ほとんどの場合は局所的ですが、まれに全身に広範囲に感染することがあります。ニキビダニが過剰に増殖すると、毛包が炎症を起こします。初期段階では症状は比較的軽く、四肢や背中などに脱毛やフケ、発疹が局所的に現れます。

また、毛包虫症が広範囲に広がってしまうこともあります。これは全身性毛包虫症と呼ばれるものです。進行すると、以下のような症状が見られます

 ・皮膚の変色
 ・脱毛と斑点
 ・脂性肌・クレーター肌
 ・痒み
 ・かゆみ
 ・痂皮(かさぶた)
 ・悪臭を伴う細菌感染


治療方法

愛犬の痒みを和らげるために市販薬を使いたくなるかもしれませんが、効果は期待できません。治療するためには、まずダニを駆除することが必須です。

イソキサゾリン系のノミ・マダニ駆除薬であれば、ノミとマダニの駆除に加え、ヒゼンダニとニキビダニを駆除することができます。

あなたの愛犬が疥癬症なのか毛包虫症なのか、どのように治療すればよいのかは、獣医師の診察を受ける必要があります。

疥癬症や毛包虫症の症状は、ほかの皮膚疾患と似ています。獣医師は、削り取った皮膚を顕微鏡で観察する掻爬検査で診断されます。特定するために毛検査や培養検査など追加の検査が必要となることもあります。

ダニを駆除しつつ、痒みや炎症を和らげるために、プレドニゾンなどのステロイド薬を処方されることがあります。また、二次的な皮膚感染を防ぐために、抗生物質が必要な場合もあります。

まとめ

愛犬が頻繁に身体を舐めたり引っ掻いたりしていたりしていたら、それはダニが原因かもしれません。皮膚の赤みや脱毛などが見られたら、すぐに動物病院で検査を受けましょう。

毛包虫症は伝染することはありませんが、疥癬症はほかの犬だけでなく、人にも感染することがあるので注意する必要があります。

ダニを防ぐには、日ごろからの予防が大切です。予防薬には、首筋に垂らすタイプや口から投与するタイプがあります。

また、定期的にシャンプーしたり、ブラッシングすることでダニの付着を防ぐことができます。これからの時期は、ノミやダニが増える時期です。梅雨に入る前からしっかり対策しましょう。

[編集部]