犬のフード選びに影響するのは飼い主の年齢や収入? 最新調査でわかったこと
近年、犬の食事の選び方には、飼い主の年齢や収入などの要因が関係しているのではないかと考えられています。この疑問を確かめるため、テキサスA&M獣医学・生物医学科学大学とバージニア工科大学バージニア・メリーランド獣医学部の研究チームが大規模な調査を実施しました。
研究チームは「Dog Aging Project(DAP)」の一環として、2020年から2022年にかけて、アメリカの犬の飼い主40,367人を対象に、犬の食事と飼い主の特徴の関係を詳しく分析しました。
この調査では、飼い主の属性(収入、教育レベル、年齢、居住地域など)と犬の属性(犬種、サイズ、年齢、活動レベルなど)が収集され、与えている食事の種類との関連性を調べたのです。その結果、いくつかの興味深い事実が明らかになりました。
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まず、飼い主の年齢と犬の食事には、明確な関連性が見られました。若年層(18~24歳)の飼い主の91%が主にドライフード(キブル)を選択しているのに対し、高齢の飼い主はドライフード以外の選択肢(缶詰、フリーズドライ、手づくり食など)を好む傾向が見られました。
この理由として、研究チームは、若い飼い主はドライフードの手軽さや価格、栄養バランスのよさを重視している可能性があると指摘しています。一方、高齢の飼い主は、犬の健康状態や好みに合わせて、より多様な食事を与える傾向があると考えられます。
収入に関しては、高収入の飼い主ほど、ローフード(生食)を選ぶ傾向がわずかに高いことが示されました。そして、教育レベルでは、全体的な食事選択に大きな影響は見られませんでしたが、一部の傾向として、大学や専門学校教育を受けた飼い主は手作り食やローフードを選ぶ傾向がわずかに見られました。
地理的な要因も食事の選択に影響を及ぼしており、農村部の犬は手づくり食やローフードを与えられる傾向があり、都市部ではドライフードがより一般的でした。また、沿岸部の州ではドライフードの人気が内陸部と比較して低いことが示されました。
これらの結果から、飼い主の社会・経済的地位が、犬の食事選択に影響を与えている可能性が示唆されました。
犬の特性に関しては、活動的な犬、作業犬、農村部に住む犬は、ドライフード以外の食事(ローフードや手づくり食)を与えられる傾向があり、一方で、都市部に住む犬や活動的でない犬は、ドライフードや缶詰を与えられる傾向が見られました。
この理由として、研究チームは、活動的な犬には、より高カロリーな食事や、消化の良い食事が選ばれる傾向があると考えています。また、都市部に住む犬は、運動不足になりがちであるため、体重管理のためにドライフードが選ばれることが多いのかもしれません。
これらの調査結果はアメリカの犬の飼い主を対象としたものですが、日本においても、飼い主の年齢や収入、ライフスタイルが犬の食事選択に影響を与えている可能性は十分に考えられます。
日本の世帯収入はアメリカと比較して中間層が多く、所得格差が小さい傾向があります。しかし、近年の物価高騰により家計の負担が増し、経済的に厳しい家庭も少なくありません。こうした状況は、ペットフードの選択にも影響を及ぼしていると考えられます。
一般社団法人ペットフード協会の「全国犬猫飼育実態調査」によると、ドライフードが最も多くの飼い主に選ばれています。その一方で、ウェットフードや手づくり食などを取り入れる家庭も一定数存在します。しかし、プレミアムフードや手づくり食はコストが高いため、経済的な余裕が選択に関係すると考えられます。
このように、日本でも飼い主の収入や経済状況が犬の食事選択に影響を及ぼす可能性は十分にあります。また、文化的な価値観や情報の普及状況も選択を左右する要因となるかもしれません。
愛犬の健康を守るためには、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。今回の調査結果を参考にしながら、愛犬に最適な食事について考えてみましょう。