【編集興記】Y染色体はX染色体よりも急速に進化していることが最新研究で判明

ちょっと気になったペット関連のトピックスを、編集スタッフが持ち回りで紹介する“不定期”コーナーです。

ヒトを含む霊長類のY染色体は、X染色体よりもはるかに急速に進化していることが、6種の霊長類に関する新たな研究で示唆されました。

ペンシルベニア州立大学などの研究チームによる研究「The complete sequence and comparative analysis of ape sex chromosomes(類人猿の性染色体の完全な配列と比較分析)」は、チンパンジー、ボノボ(ピグミーチンパンジー)、ニシゴリラ、ボルネオオランウータン、スマトラオランウータンの5種の類人猿と、ヒトより遠縁のフクロテナガザルの性染色体を比較しました。

また、6種それぞれのX染色体とY染色体の塩基配列は、すでに配列が判明しているヒトのX染色体とY染色体とも比較されました。

その結果、6種すべてにおいてY染色体は急速に進化したことが明らかになりました。また、生物分類における同じ属であっても、Y染色体は大きく異なっていました。例えばチンパンジーとボノボはわずか100~200万年前に分岐した種ですが、Y染色体の長さには劇的な違いがあるといいます。

DNAがコピーされる際に生じる染色体の欠失や重複によって引き起こされる長さの違いは、約半分に達するケースもありました。例えば、スマトラオランウータンのY染色体は、テナガザルのY染色体の2倍の長さがありました。

対照的に、X染色体が進化の過程で大きな変化を受けにくく、異なる属種でもほとんど変わらないことが示唆されました。これは、X染色体が繁殖において重要な役割を果たすためと考えられています。

Y染色体がこれほど高い突然変異率にもかかわらず存続している理由のひとつは、パリンドローム配列(回文配列)のような非常に反復性の高い遺伝物質が含まれているためです。

つまり、反復的な遺伝配列がY染色体の遺伝子を保護し、進化の過程で重要な遺伝情報が失われるのを防いでいるということです。

この研究では、種ごとに代表的な染色体の1本しか調べておらず、同じ種でもY染色体がどの程度変化するかはわかりません。しかし、 結果としてリファレンスゲノムが作成されたことで、遺伝子研究や遺伝に関連する疾患の理解が進むとことが期待されます。

この研究は、同じ哺乳類である犬や猫にもいえることかもしれません。彼らのリファレンスゲノムが作成されれば、遺伝的多様性の理解を深めるための重要なツールとなります。

そして、リファレンスゲノムを使用することで、特定の遺伝的変異や異常を特定することができます。これにより、遺伝的疾患の原因となる変異を明らかにし、診断や治療法の開発に貢献できる可能性もあります。