【猫飼いTIPS】猫の難聴を理解しよう。症状から治療、暮らし方まで

猫の難聴は、じつは珍しいことではありません。一般的には、10~20%が何らかの聴覚障害を抱えているとされています。しかし、飼い主にとっては懸念する点もあるかもしれません。

今回は、猫の種類や診断、生活環境やコミュニケーション方法など、難聴を抱える猫と飼い主が幸せな生活を送るためのお話です。

猫の難聴とは

猫の難聴は、耳や聴覚神経や機能の問題によって引き起こされる状態で、猫が一部または完全に聞こえない状態を指します。生まれつき耳が聞こえない場合(先天性)は、子猫のときに明らかになります。

特に、白い被毛と青い虹彩を持つ猫は、特に先天性難聴になりやすいとされています。先天性難聴のリスクが高い傾向にある猫種としては、ペルシャ、スコティッシュフォールド、ラグドール、コーニッシュレックスとデボンレックス、オリエンタルショートヘア、ターキッシュアンゴラ、メインクーンなどの白い毛色の猫が挙げられます。

これは、内耳の発達に関与するメラニン色素が不足しているためで、青い目の猫には聴覚神経が正しく発達していないことが関係しています。

しかし、難聴は必ずしもこのような猫に限られるものではありません。後天的な要因によっても難聴が発生し得ます。耳の感染症、外傷、老化などがその例です。

猫の難聴には程度の差があり、一部の猫は部分的な難聴である場合もあります。猫の難聴は多岐にわたる要因によって引き起こされますが、適切な診断とケアによって対処することができます。

難聴の症状

猫の難聴には、さまざまな症状が見られます。一般的には周囲の音に対して鈍感であり、飼い主が呼びかけても反応しないことがあります。以下はその一部です。

 ・生活音に反応しない
 ・名前に反応しない
 ・おもちゃの音などに反応しない
 ・大きな音でも目を覚まさない


難聴の猫は、周囲の環境に不安を感じやすくなる傾向があります。これは、周囲の出来事を把握できないことがストレスとなるためです。

さらに、耳の問題によってバランス感覚が乱れることがあります。歩行が不安定になったり転んだりします。また、首をかしげるような姿勢が見られることもあります。

難聴の猫は、音を聞こうとして耳を頻繁に動かすことがあります。また、自分の声が聞こえにくいため、大きな声で鳴くことがあります。

難聴の原因

猫の難聴はさまざまな要因によって引き起こされます。遺伝的な要因や先天性の問題、後天的な要因、環境要因がその主な原因です。

遺伝的要因

遺伝的な要因による難聴は、猫の遺伝子に関連しています。特に、白色のカラー遺伝子を持つ猫や青い目の猫によく見られます。これらの猫は、聴覚器官の発達に関する遺伝子が変異した可能性もあります。

先天的要因

先天性の難聴は、猫が生まれるときにすでに耳や聴覚器官の形成に問題がある場合に発生します。これは、胎児期の発達過程で起こる異常が原因です。

母猫が妊娠中に感染症にかかったり、有害な物質に接触すると、胎児の聴覚器官に損傷が生じることがあります。

後天的要因

後天的な難聴は成長してから起こるもので、耳の感染症や外傷が主な原因です。例えば、中耳炎や内耳炎は、耳の構造や聴覚器官に損傷を与え、難聴を引き起こす可能性があります。

また、長期間にわたり騒音にさらされることも、猫の聴覚に影響を及ぼします。

その他の要因

薬の副作用も、難聴の原因のひとつです。抗生物質や抗がん剤、抗炎症薬の一部が、聴覚に影響を及ぼすことが知られています。

猫が生活する環境によっても、難聴のリスクが変わることがあります。騒音や振動、放射線などが聴覚に影響を与える可能性があります。また、加齢によって耳の構造や機能が変化することで難聴になることもあります。

難聴の診断

猫の難聴を診断するためには、いくつかの方法があります。まずは、猫の健康状態、症状が見られた時期、これまでの病歴が確認されます。オトスコープ(耳用内視鏡)で、耳のなかを観察することもあります。

内耳や聴覚神経に異常が疑われる場合は、CTスキャンやMRIを使用して猫の耳の内部を詳しく観察することがあります。また、画像診断で異常が見つからない場合は、BAER(聴性脳幹誘発反応)検査などの電気生理学的検査が行われることもあります。

症状が幼齢で見られる場合は、遺伝的もしくは先天的な問題がである可能性が高いと考えられます。一方、老化やがんなどの原因による脳疾患では、脳が耳からの音を処理できなくなり、難聴の症状が現れます。

難聴の治療

猫の難聴は、その原因によって治療法が異なります。残念ながら、先天性の難聴は治療することができません。しかし、外耳、中耳、内耳の炎症によるものは、内科的または外科的治療で改善することができます。

治療法は症状の重症度や原因によって決定されます。外耳や中耳が正常に機能しなくなる「伝音性難聴」の場合は、炎症が治まると改善する場合があります。

難聴の猫との暮らし

ケガの可能性を予防するために、猫の運動量を減らす必要があります。耳が聞こえにくい(聞こえない)ということは、何かの接近を聞き取れないということです。ですので、絶対に屋外に出してはいけません。

多くの家庭では猫を完全室内飼育していると思ますが、室内でも注意が必要です。急に触ったりして驚かせたり、過度な遊びをしてケガをしないようにしましょう。また、来客がある場合は、なるべくケージなど安心できるところにいてもらいましょう。

まとめ

猫の難聴について理解することはとても大切です。先天性の難聴は治療が難しいものの、中耳の炎症などで起こる難聴は、治療で改善されることがあります。

また、猫の安全を守り健康に暮らすためには、屋内での暮らしや環境の配慮が必要です。この記事が、猫との幸せな生活を送るための手助けとなれば幸いです。