遺伝性疾患だらけ「ミックス犬姉妹」背負った運 〜人気犬種ランキング入りも悪徳業者が絶えず

遺伝性疾患だらけ「ミックス犬姉妹」背負った運命

人気犬種ランキング入りも、悪徳業者が絶えず

東洋経済オンライン | 2023/06/27

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このコーナーでは、注目ニュースに対する編集部や識者のコメントを紹介します。

読者のみなさんは、「世界に一匹だけのかわいさ」「世界で唯一無二のミックス犬」という謳い文句で多くのペットショップで販売されているミックス犬をご存じかと思います。

ミックス犬とは、異種の純血犬種同士を交配してつくり出した犬のことで、デザイナー犬やハイブリッド犬とも呼ばれています。純血種ではないので血統書はなく、交雑種というカテゴリになります。

ここ最近、ミックス犬が格段に増えているように感じます。ペットショップを見ても、純血種と一緒に販売され、ネットで検索しても、“優良ブリーダー”を謳う販売サイトでも多くのミックス犬が掲載されています。

アニコム損害保険が2008年から毎年実施している「人気犬種ランキング」をみると、2008年にはTOP10にミックス犬はランクインしていません。

翌年に「混血犬(体重10kg未満)」という項目でランクインし、2015年にはTOP3にランクインします。そして、遂に2023年には第2の人気犬種になりました。

さらに、ランキング全体に占める割合を見ても、2015年には8.4%だったものが、2023年には15.9%と2倍近くも増えたとことになります。このデータからも、いかにミックス犬が増えていることを物語っています。

なぜミックス犬を選ぶのか、それらをまとめた正確な統計データはありませんが、2019年から2020年にイギリスで行われた調査が参考になります。

イギリスでもミックス犬の需要が増加しているようで、背景や理由が調査によって明らかになっています。ミックス犬を迎えた飼い主と純血犬種を迎えた飼い主を比較したところ、選択基準の違いが明白になりました。

ミックス犬の飼い主は、犬の幸福よりも購入の利便性を優先する傾向が強かったというものです。健康診断の結果や遺伝子疾患についての説明を提供してくれるブリーダーよりも、近くに住んでいるブリーダーを好んだようです。これは「簡単に購入できる」という日本の事情にも近いものです。

また、購入後も遺伝子検査や獣医によるスクリーニング検査を受ける傾向が低かったということです。ペットを飼うということを安易に考えているということでしょう。そのような飼い主の行動がブームに拍車をかけ、無責任な繁殖を助長しているとこのレポートは分析しています。

「純血種の特性や能力を掛け合わせることで、さらに優れた遺伝子になる」「いいとこ取りの遺伝子だから病気になりにく」「生命力も比較的強い」といったメリットばかりを誇張する傾向がありますが、それを裏付ける研究データはありません。

そもそも、先の調査レポートのように、期待に沿っていない=劣った遺伝子である可能性もあり、それは必ずしもいいとこどりではないため、双方の疾患を受け継いてしまう可能性さえもあるのです。

事実、アメリカンケネルクラブ(AKC)では、ミックス犬が純血種犬より健康であるのは誤解だとしています。

ミックス犬においては、純血犬種と同様にリスクがあるため、しっかりとした知識を元にブリーディングすべきだと思います。単に「売れるから」といった無責任なブリードは決してすべきではありません。

私も、日本においてミックス犬のブリーダーには健全なブリーダーはいないと考えています。もし、愛犬が病気を発症していないとしたら、獣医学や遺伝学の見地からではなく、まさに奇跡的だということを理解してもらいたいと思います。

筆者の言うように、唯一無二はミックス犬だけではありません。すべての犬が、かけがえのない「唯一無二」の存在なのではないでしょうか。