犬の5倍「殺処分される猫の6割は子猫」という悲劇~「野良猫に餌やり」は必ずしも美徳とは限らない

犬の5倍「殺処分される猫の6割は子猫」という悲劇

「野良猫に餌やり」は必ずしも美徳とは限らない

東洋経済オンライン | 2022/08/24

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このコーナーでは、注目ニュースに対する編集部や識者のコメントを紹介します。

「うちの子じゃないんだけどね……」この言葉は、餌やりをしている人からよく発せられる言葉です。この「けど」「けれども」という終助詞は、言い切りを避け、婉曲に表現する気持ちを表します。言いまわしが穏やかでかど立たず、遠まわしに何かをいうような際に使われます。

しかし、そのセリフを聞いている人からすると、「けどなんですか?」と尋ねたくなります。

話を聞いていくと、結局のところ「かわいそうだ」という感情だけで餌やりをしていることがわかります。猫は、餌をくれる安全な場所を得ると、そこで出産を行います。猫は年に数回の出産が可能な生き物です。それこそ、外敵がいない状況であれば、それこそあっという間に増えてしまいます。

また、計画的に交配するわけではないので、日常的に近親交配が行われます。近親交配は、いわゆる奇形や先天性の異常を抱えた猫を生み出してしまいます。多くは成猫になる前に亡くなってしまいますが、運良く保護された子猫が障害を持っていることは少なくありません。

このような現実を知らずに、餌やりをしている人は、本当に「生命」を考えているとはいえません。無責任な餌やりが、逆に不幸な猫を量産しているといっても過言ではないのです。かわいそうと思うのであれば、ペットとして責任を持って飼育する。もちろん、避妊去勢は必須です。

動物愛護法が改正され、劣悪な環境での飼育や健康を無視した出産など、悪質な繁殖事業者の取り締まりが強化されました。これにより、悪質な事業者の淘汰が始まっています。

しかし、これはあくまでもブリーダーなど第一種動物取扱業者に対してです。前述のように、一般人の餌やりの結果として自然繁殖する猫には対応していません。自治体によっては、条例によって餌やりを禁止するケースもあります。

無責任による餌やりの結果、増えてしまった野良猫は、糞尿被害など周辺環境に影響を与えることもあります。国民すべてが猫好きではありません。自分勝手な考えで、不幸な生命を生み出したり、まわりに迷惑をかけるのは地域社会を壊すことにもなりかねません。

野良猫を見つけたら、まずは自分で保護して飼育できるのかを考えましょう。また、頭数が多いようなら、動物愛護センターや保健所に相談し、猫との共生の可能性を探るのもいいでしょう。殺処分を減らすには、人間のエゴで不幸な猫を増やさないことです。