皮膚常在菌の攻防戦〜皮膚pHと皮膚バリア〜

ヒトの皮膚の一番外側には「角層(かくそう)」があり、その厚さはサランラップ1枚と同じ約0.02㎜。この角層の表面は「皮脂膜(ひしまく)」で覆われています。この皮脂膜がめちゃめちゃ大切なんです。さらに、皮膚の表面には皮膚常在菌といわれる微生物(細菌、カビ、ウイルスなど)がたくさん住んでいます。その種類や量は人によって異なりますが、1000種の菌種が住んでいるとされています。

皮膚常在菌をアンパンマンのキャラクターで例えると、アンパンマンに相当する善玉菌の主役は表皮ブドウ球菌。また、ドキンちゃんやロールパンナちゃんに相当するどっちでもない菌がアクネ菌。さらに、バイキンマンやホラーマンに相当する悪玉菌が黄色ブドウ球菌です。

健康なヒトの皮膚表面のpHは、個人差はありますが、一般的に汗(乳酸)や皮膚表面の脂肪酸によってpH4.5~6.0の弱酸性に保たれています。表皮ブドウ球菌にとって都合がよいのはpH5~6の弱酸性です。一方で、黄色ブドウ球菌にとって都合がよいのは中性です。

従って、皮膚表面が弱酸性に保たれることによって、黄色ブドウ球菌や真菌(マラセチア)、アクネ菌が増えにくくなり健康な肌状態を保つことができます。しかし、皮膚表面のpHがアルカリ側にシフトすると、表皮ブドウ球菌が容易に繁殖して化膿しやすくなります。

つまり、皮膚の菌バランスを考えたら、美肌菌と呼ばれる表皮ブドウ球菌をいかに育てるかという“育菌”がとても大切なんです。

一般的に健常なヒトの皮膚でも、皮膚表面のpHが弱酸性から中性よりに変化すると肌荒れします。アトピー性皮膚炎の患者では、皮膚表面のpHが弱酸性ではなく中性に偏っており、つねに上昇してるとされています。

pHの上昇によって角質が剥がれてバリア機能が低下すると、黄色ブドウ球菌やカビにとっては好都合の環境になります。最近の研究によると、皮膚表面のpHが上がると皮膚の水分がなくなってまうこともわかってきました。

皮膚バリアは、「皮脂膜」「天然保湿因子(NMF)」「セラミド(細胞間脂質)」の3つによって防御されています。その役割は、なんらかの刺激から身体を守ることと、体のなかの水分が外に逃げないようにすることです。

ですから、皮膚のバリア機能が低下すると、雑菌から皮膚を守るチカラが弱まり、水分量が減り皮膚がカピカピになり、未熟な角質層ができてまうから毛孔がつまり、水分が逃げるのを防ごうとして皮脂が増えることになります。その結果、ニキビができやすくなったり、シワが増えたり、さらにはアトピー性皮膚炎が悪化します。

結果的に、皮膚pHを弱酸性に保ち、皮膚バリア機能を正常に保つことが大切なんですね。