【犬飼いTIPS】通常の生活に戻った時、愛犬が留守番に対応できるようにするために

2020年に入ってから世界中の人々が家で過ごす時間を増やしています。コロナ禍は、私たちにペットを飼う絶好の機会を提供しました。日本においても、ペットフード協会が発表した「全国犬猫飼育実態調査」では前年比で約15%も増えたとしています。

ストレスを抱えるペットが増えている

このようにペットを飼う人が急激に増えたことで、ストレスに関する懸念が生じています。ペットにとって大切な“社会化”の経験やトレーニングを受ける前に新しい家族に迎えられた場合、ストレスを抱え、神経質になったり、恐怖によって攻撃的になるなど、問題行動につながることが知られています。

ストレスによる問題行動の兆候が見られるのは、新しく迎えたペットだけではありません。すでに一緒に暮らしているペットにも言えることです。この1年間、多くのペットは通常の生活を送ることができませんでした。コロナ禍がはじまってから、ひとりで過ごす時間が減り、ほかの犬との交流や来客も少なくなりました。

そんな状況において、犬の行動にも顕著な変化が見られます。人が近づいたときに唸ったり、噛んだり、咥えたりすることが、この1年で増加傾向にあるのです。Google検索では、「犬の無駄吠え しつけ」が50%、「犬の無駄吠え対策」が急激増加しており、自粛期間はペットにとって特に困難な状況であったこと伺えます。

私たちにとってストレスといえば、人間関係や仕事、収入など状況的な要因に注目しがちです。しかし、ストレスは体のホルモンバランスを乱すあらゆることによって引き起こされます。それは動物も同じです。ストレス要因によって心身が興奮状態になり、それから逃れるために思考や行動が以下のように反応します。

逃走(Flight response):交感神経が活性化し、脅威から逃げようとする
闘争(Fight response):交感神経が活性化し、脅威に対して闘おうとする
硬直(Freeze response):副交感神経系がシャットダウンする=死んだふり


動物にとってのストレス要因は、野生動物における上位捕食者などの物理的な脅威から、予測不可能な環境まで多岐にわたります。牛や豚などの家畜では、日常生活の変化-例えば給餌スケジュールの変更などがストレスを引き起こすことが分かっています。

愛犬はストレスを感じているかもしれない

ペットにみるストレスの兆候は、無駄吠えや破壊行動など明らかなものがあります。しかし、唸ったり、いつも以上にヨダレを垂らしたり、ソワソワして歩き回ったり、窓やドアを何度も確認したり、自分の手足を噛んだり、体を引っ掻いたりするなど、微妙な行動からも見て取れます。

残念ながら、この自粛期間はペットがひとりで留守番をする際の対処能力に長期的な影響を与える可能性があります。そもそも分離不安を抱えていた犬は、飼い主が仕事に戻り、再びひとりになると悪化する可能性があります。特に子犬の場合はその傾向が強く出ます。自粛中ずっと一緒にいたため、通常の生活に戻ってもそれを期待してしまうのです。

イギリスの動物保護団体「Dogs Trust」の調査では、82%の飼い主が、飼い主が忙しくしているときに愛犬の鳴き声や吠え声が増えたことに気づいたと回答しています。犬が人にまとわりついたり、家のなかで人の後をついて回ったりするという報告も41%増加しました。これらはすべて、分離不安が発症していることを示す指標となります。この結果は、日本でも同様だと想定されます。

通常の生活に向けたロードマップ

どんな状況でも適用できるスキルを教えるのに、遅すぎるということはありません。時間に融通がきく今だからこそ、自粛が解除になって平常にもどったときの対応方法を愛犬に教えてあげてはいかがでしょうか。

すでに、家の外に出る時間が増え始めている場合は、日常生活の変化がペットにとってストレスになることを忘れてはいけません。将来のトラブルを避けるために今から予防対策を始めましょう。

▶これまで一人で留守番することに慣れていた場合、あなたが家にいるときにはベビーゲートなどで仕切り、愛犬がこちらに来れないようにします。ひとりでいる時間を設けることで、犬の対応能力を維持します。また、留守番させるときには短時間にしましょう。

▶愛犬が家族と離れる時間を徐々に増やし、長持ちするおやつを与えるなど、ポジティブなものと結びつけてあげてください。

▶愛犬の反応を観察し、不安な様子が見られたら留守番時間を短くします。

▶すでに分離不安の兆候(無駄吠え、いろいろなところでトイレをする、家具などを破壊するなど)が見られる場合は、専門のトレーナーや獣医師に相談しましょう。

▶無駄吠え防止首輪、体罰など「即効性のある」解決策を採用するのは避けましょう。このような方法は、問題を悪化させ、長期的にはより深刻で治療が困難な問題を引き起こす可能性があります。


まとめ

留守中にリラックスできるように教えるには、時間と忍耐が必要です。特にコロナ禍で新たに迎えた子犬は、ほとんど飼い主から離れたことがないので、なおさらです。

しかし、ワクチン接種も本格化し程なくして通常の生活が戻ります。そうなった時に慌てて対処するのではなく、上記のアドバイスを参考に、愛犬がひとりでいる事にストレスを感じないように教えることで、後々治療が困難になる深刻な問題を防ぐことができるのです。今からでも遅くはありません。少しずつ始めてみましょう。