うつ病と腸内細菌のカンケイ
腸内細菌が脳の機能にも影響を与えることを「腸―脳相関」といいますが、これに関わる研究論文がどんどん報告されていて、うつ病の原因としても腸内細菌が注目されてます。
どうやって調べたかというと、ラットに電気ショックを2日間与えて、「うつの症状を出したラット」と「うつの症状を出さなかったラット」に分けて、「何もしてしていないラット」のうんちと比較しました。具体的には、うんちのなかにどんな腸内細菌がいるのかと、うんちのなかの腸内細菌がどんな物質(酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、コハク酸といった短鎖脂肪酸)を出しているかを調べました。
結果は、「うつの症状を出したラット」の腸内細菌は、「うつの症状がないラット」や「何もしてしていないラット」とはかなり異なることがわかりました。うつの症状を出したラットのうんちのなかの酢酸、プロピオン酸は、「うつの症状を出さなかったラット」と「何もしてしていないラット」の値と比べてかなり低かったのです。
さらに、人を対象にした調査では、腸内のビフィズス菌や乳酸菌(特に乳酸桿菌)の菌数が少ないと、うつ病のリスクが高くなるという結果も出ています。
筆者は、中学時代に野球部でキャプテンをしていました。メンバー構成は、朝早くきてグランウド整備をしたり準備運動も入念なガッツもやる気もある部員が20%くらいいて、まったくやる気がなくて遅刻したり仮病で休んだりする部員が10%くらいで、残りの70%の部員はどちらでもなかったりと、バランスが取れていました。
これと同じことが腸内環境にもいえるのです。重要になるのは腸内細菌叢のバランスで、善玉菌(よい菌):日和見菌(どっちにでも転ぶ菌):悪玉菌(悪い菌)が、2:7:1である場合が安定(レジリエンス)している状態といえ、このバランスが崩れる(ディスバイオシス)ことが、腸炎や糖尿病、アレルギーにがん、うつ病など、さまざまな疾患の原因となることがわかっています。
つまり、ディスバイオシスというお腹のなかの微生物の乱れた状態を回復(レジリエンス)して、よい菌、悪い菌、どっちにでも転ぶ菌がバランスよく集まった状態、それが健康でいられるかどうかの鍵となります。
いろんな腸内細菌がいる状態(=多様性)であるほど、レジリエンスも高いといわれています。でも、いい菌ばっかりだったり、悪い菌ばっかりだったりでも、元に戻ることが難しいといわれています。つまり、目標は「腸内細菌叢の多様性を回復させること」なんですね。
ストレスによる精神疾患の発症を予防するためにも、腸内細菌のバランスを整えておくことによって、ストレスに打ち勝つ力を強化しておきたいですね。
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