ペットの健康診断を受けている飼い主が2割以下という現実
先日、ペットの予防医療の啓発・普及活動を展開する獣医師団体「Team HOPE(チームホープ)」が、2001年以降に犬や猫のペットを病気で亡くした経験を持つ15歳以上の一般男500名を対象に、「ペットの健康管理に関する実態調査」を実施しました。
獣医療の発達やペットを取り巻く環境の変化などで、ペットの平均寿命はここ30年で約2倍にも延びていると言われています。そして、ペットは家族の一員として、長い時間をともに過ごす大切な存在になっています。その一方で、言葉が通じずコミュニケーションが難しいペットの健康管理は、飼い主にとって難しい課題となっており、獣医師による定期的な健康診断の重要性が高まっています。
こうした社会的背景を受け、Team HOPEでは10月13日(じゅういさん)を「ペットの健康診断の日」として登録し、ペットの健康診断やウェルネスチェックの啓発活動を展開していくとのこと。今回の調査は、予防医療の重要性を訴求する前段階の状況を把握したものとなっています。
調査では、「ペットの健康について気にかけていた」飼い主は86.4%(犬85.6%、猫87.2%)でした。しかし、実際にペットが亡くなる前の気づきと対応に関しては、「気づいて通院した」飼い主が70.3%(犬70.1%、猫70.6%)に対して、「気づいたが、しばらく様子をみた」飼い主が22.1%(犬21.3%、猫22.9%)となっているとおり、飼い主によるペットの健康管理は自己完結型の傾向にあり、異変が出た後も通院せず様子を見たといった、治療の遅れにつながる層が5人に1人以上いたという結果になりました。
そして、定期的な健康診断を受けさせている飼い主は2割以下で、実際に通院するタイミングでも、犬では「予防接種やフィラリア予防の時」が71.2%とトップで、猫では「病気や怪我の時」が74.0%と、2位の「予防接種やフィラリア予防の時」の42.4%に大きく差を つけています。狂犬病など1年に1度の予防接種が義務付けられている犬に比べて、予防接種の義務のない猫では、定期的な通院よりも、実際に異変を感じてから通院するケースが圧倒的に多いようです。
結果的に、当然ながらペットが亡くなった後に健康管理を後悔している方は6割以上に上ったといいます。ちなみに、定期的な健康診断を受けている飼い主の年齢別の内訳は、20代:4.16%、30代:10.41%、40代:31.25%、50代:18.75%、60代:26.04%、70代:6.25%だったようです。自立している年代では受診率が高いことが分かります。反面、通院することが困難な高齢の飼い主にどう対応するのかは、今後の課題でしょう。
この結果からいえることは、どれだけペットと向き合っているかというこではないでしょうか。フードや水の摂取量、うんちの色や硬さ、おしっこの色やニオイ、そして体に触れることで異常を発見することもできます。また、少しでも気になることがあれば、すぐに通院する。もちろん、かかりつけのホームドクターをもっていれば、これまでの経緯も含めて対処もスムーズになります。
昨今、ペットにおいても予防医療がいわれてきました。ただ、実際にはワクチンやフードなどの栄養面のレベルに止まっています。最近ニュースなどでよく聞く「ディープラーニング(深層学習)」によって、ペットの行動をAIで学習させ予防医療につなげるといった試みはまだこれからという段階です。
であるならば、飼い主としていまできることは、前述のとおり、ペットとしっかり向き合い、速やかに行動することではないでしょうか。それが、愛するペットに対する飼い主の責任だと言えます。
なお、Team HOPEでは、自宅でペットの状態を確認し記入する「ウェルネスチェックシート」も公開しています。これを、持参することで獣医師と一緒にチェックできるというものです。加入病院だけですが、気づきという意味では活用できると思います。さらに、ウェルネスチェックの一歩先として、
全国各地の団体加盟動物病院で統一した検査項目で行える、「Team HOPE健康診断」も提供しています。動物病院で行う健康診断は、各院によって異なる指標を元に行われおり、人の健康診断のように、決まった項目を診るという決まりがあるものではありません。
それゆえ、統計的なデータが蓄積されておらず健康情報を比較して管理することが困難となっています。そうした現状を打破したいという取り組みだということです。
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