窓の外でゆらめく巨大な羽。猫たちも釘付けになった“黄色い来訪者”

数日前から、夜になると全身が黄色い大きな蛾が窓に張り付くようになりました。どうやら明かりを求めてやって来ているようで、羽を広げてパタパタと飛び回るたびに、わが家の猫たちは大騒ぎです。しかも、1匹ではなく、なんと7~8匹も。羽を広げた時の大きさは10㎝以上あります。信楽で暮らし始めて4年が過ぎましたが、こんなに巨大な蛾を見たのは初めてです。それが集団で……。周辺で大量発生しているのでしょうか。

ネットで調べてみると、「ヤママユ」という種類の蛾だとわかりました。日本に生息する大型の蛾で、「天蚕(てんさん)」とも呼ばれるそうです。人里に近い広葉樹林など、里山の自然が残る場所に多く見られるとか。羽を広げたときの大きさは7㎝~15㎝ほどにもなり、4枚の羽それぞれに黄茶色の大きな目玉模様があるのが特徴です。この模様は、鳥などの天敵を驚かせる役割があると言われています。

驚いたのは、ヤママユの成虫には口がなく、一切食事をしないということ。幼虫時代に蓄えた栄養だけで生きていて、成虫になるとすぐに交尾し、雌は卵を産みます。そして、成虫の寿命は1週間ほどという、なんとも儚い生き物であることもわかりました。

ヤママユは卵のまま越冬し、3~4月下旬ころに孵化。幼虫は約50日以上かけて葉を食べ続け、4回の脱皮を繰り返して成長します。触ると「キーキー」と音を出して威嚇することもあるそうです。そして、6月上旬~下旬ころに繭をつくり始め、約3日で完成。9月に羽化するとのことですが、今は11月。もしかすると、地球温暖化の影響で発生時期がずれているのかもしれません。

また、ヤママユの繭からは「天蚕糸(てんさんし)」と呼ばれる貴重な絹糸が採れます。淡い黄緑色の光沢があり、太くて丈夫で伸びがよく、シワにもなりにくいという特徴を持ち、「繊維のダイヤモンド」と称されることもあるとか。繭1粒から採れる糸の長さは約600~700mで、1,000粒の繭からは約250~300gの絹糸が得られるそうです。長野県穂高町の有明地方では、江戸時代から天蚕の飼育が続いている地域もあると知りました。

調べていくうちに、ヤママユの幼虫は栗の葉などを好んで食べることがあるとわかり、わが家の裏庭にある栗の木もきっと食事場所になっていたのだろうと納得しました。夜に窓の外で羽を広げている姿は迫力満点で、初めて見たら誰でも驚くと思います。

そして、翌朝には窓の外に何匹かが息絶えていました。1週間という短い命を終えたようです。猫たちと一緒に、こんなにも貴重で美しい蛾に出会えたことは、ちょっとした自然の贈り物だったのかもしれません。