ペットの口臭、ポストバイオティクスが改善のカギになるかもしれない
愛犬や愛猫とのふれあいは、飼い主にとってかけがえのない喜びです。しかし、ふとした瞬間に気になる口臭が、その喜びを少しだけ損なってしまうこともあるかもしれません。
口臭はペットの健康状態を示すサインでもあり、その多くは歯周病に起因しています。実際、歯周病は多くのペットが抱える悩みのひとつです。こうした口臭の改善に、近年注目されている成分「ポストバイオティクス」が効果を発揮する可能性があることが、最新の研究で示されました。

ポストバイオティクスとは、プロバイオティクス(生きた善玉菌)が代謝する過程で生み出される有用な成分、あるいは不活性化された微生物そのものを指します。代表的なものには、乳酸や短鎖脂肪酸、ペプチド、菌体成分などがあります。
プロバイオティクスが「生きた菌」であるのに対し、ポストバイオティクスは「菌がつくり出した成分」であるため、熱や胃酸の影響を受けにくく、安定して体内に届きやすいという特徴があります。そのため、ペットフードやサプリメントへの活用が期待されています。
ペットの口臭の主な原因は、口内の細菌が食べカスを分解する際に発生する揮発性硫黄化合物(VSC)です。人間でいうところの「硫黄臭」にあたる独特の不快なニオイであり、VSCを減らすことが口臭対策の鍵になります。
このVSCの抑制に関する注目の研究結果が、オンラインジャーナル『Animals』に掲載されました。Kingdom Supercultures社が開発した「Superculture Pet Oral」というポストバイオティクス成分が、犬の口臭を効果的に軽減する可能性を示したのです。
口臭レベルが同程度の犬24頭を2グループに分け、一方にはSuperculture Pet Oralを、もう一方にはプラセボ(偽薬)を、通常のフードに混ぜて14日間与えるという形で研究が実施されました。
その結果、Superculture Pet Oralを与えたグループでは、口臭の原因であるVSCの平均濃度がプラセボ群と比べて約27%減少しました。さらに、投与からわずか7日目の時点でも22%の減少が見られ、比較的早期に効果が現れたことも確認されています。
ポストバイオティクスがペットの口内環境によい影響を与え、口臭の元となるVSCの産生を抑制する可能性が示唆されました。従来の歯磨きなどの物理的ケアに加えて、食事やサプリメントを通じてポストバイオティクスを取り入れることが、口臭対策の新たなアプローチとなるかもしれません。
ペットのデンタルケアは、単に口臭や歯周病を予防するだけでなく、全身の健康にも深く関係しています。口内の細菌が消化管へ移行し、腸内環境に影響を及ぼすことも報告されています。そのため、口臭ケアは見た目やニオイの問題にとどまらず、愛犬の全体的な健康維持においても重要な役割を果たします。
今回の研究結果は、ポストバイオティクスという比較的新しい分野の成分が、ペットの口臭という多くの飼い主が抱える悩みに対し、科学的なアプローチから解決策を提供する可能性を示しています。
もちろん、ポストバイオティクスは万能ではありません。基本的な歯磨きや、定期的な動物病院での口腔チェックは引き続き欠かせません。しかし、日々のケアにポストバイオティクスを取り入れることで、より健康的で快適な口内環境を保ち、愛犬・愛猫の絆をいっそう深める手助けとなるかもしれません。