【猫飼いTIPS】猫には幽霊が見えるのか? 獣医師と猫の行動学の専門家に聞いてみた

猫が幽霊を見ることができるかどうか、興味を持っている人は多いと思います。優れた視覚と聴覚を備えた猫は、私たちよりもはるかに多くのことを感じ取っている考えるのは自然なことです。

今回は、このミステリアスなテーマについて、猫の行動学の専門家の意見も踏まえて考えてみましょう。

猫の神話や伝説

猫と霊の関係は、猫にまつわる多くの神話や伝説にも登場します。超常現象は、通常の自然法則や科学的な理解を超えた何らかの力に起因する現象と定義されますが、この現象と猫の逸話は確かに結びついているようです。いくつか有名な話を紹介します。

古代エジプト人は具象的に猫を崇拝していたわけではなく、猫には神聖なエネルギーが満ちていると考えていました。エジプト神話に登場するバステト神は頭が猫の女神で、豊穣と守護の力を持つといわれています。


大航海時代、安全な航行を願い多指(足の指が多い)の猫を乗船させていました。積荷に被害を及ぼすネズミを捕ることにも長けていたため、「幸運の猫」として持てはやされたといいます。文豪アーネスト・ヘミングウェイの愛したスノーボールも多指の猫で、現在でも欧米では「ヘミングウェイ・キャット」として愛されています。


中世ヨーロッパでは黒猫は魔女の仲間とされ、ケルト文化の伝承に登場する黒猫の「Sìth(シース)」は魔力持ち死後の世界とのつながりを持つとされています。


イギリスでは黒猫は幸運のシンボルとされ、スコットランドでは黒猫が新居に現れるとその家には幸運が訪れるとの信仰があります。また、結婚式において新婦が黒猫を見ると幸せな結婚生活が待っているとされることもあります。


日本では、黒猫は縁起物として広く愛されています。特に招き猫には黒い猫もよく見られます。招き猫は、商売繁盛や家庭の繁栄を象徴し、幸運を招くと信じられています。

猫の感覚と人間の感覚は違う

猫が幽霊を見ることができると考えられているもっとも有力な理由は、猫が生まれつき持っている能力や本能によるものであると考えられます。猫の感覚は人間よりも鋭いのは事実です。捕食動物であると同時に被食動物でもある猫は、獲物を捕らえ、捕食者から逃れるために鋭い感覚を必要としているのです。

視力

猫は夜行性の生き物だと思われがちですが、じつは夜明けと夕暮れ時にもっとも活発に活動する薄明薄暮性動物「クリパスキュラー」です。もし、夜にニャーニャー鳴くようなら、それはまったく異なる何かが起こっていることを示しています。

また、彼らには視力を向上させる人間以外の動物に特有のふたつの構造、反射層(タペタム・ルシダム)と瞬膜を持っています。

反射層は猫の目の奥にある組織で、光を視神経に反射させ暗い場所での視覚能力を向上させます。暗闇で猫の目が緑色に光るのはこの組織の働きによるものです。また、猫の目の内側には第三まぶたと呼ばれる瞬膜があります。眼球を覆って保護するために盛り上がっています。

猫には霊が見えると考えられる理由のひとつは、猫が人間には見えない光の変化を感知できるからというものです。実際に猫は蛍光灯のちらつき(点減=フリッカー)を見られますが、人間には感知することができません。だから蛍光灯のしたで読書できるのです。

猫の視覚のもうひとつの違いは、色盲ではないものの人間のように豊かな色を見ることができないことです。もし、目の前にネズミがいたとします。猫は私たちがネズミと判断する前に、ためらいなく飛びついて捕獲しているでしょう。

私たちは、その生物の色や形など詳細を観察してネズミと判断しますが、彼らは上位捕食者として単にネズミ(らしき)動くものを捕獲するのです。

いくつかの研究によると、猫は紫外線などの不可視光線の電磁波が見えることがわかっています。つまり、猫は人間には見えないものを頻繁に知覚しているのです。

聴覚

人間が聞き取れる周波数は20㎐から20㎑で、猫は40㎐から85㎑とされています。つまり、猫の聴覚は人間の約2倍から5倍ほど鋭いのです。

耳の筋肉と形が優れているため、音をピンポイントで増幅することができるのです。草木のざわめく音、動物の歩く音や鳴き声、人の話し声、壁のなかや外のわずかな音も聞きわけているのです。

嗅覚

猫の嗅覚は犬ほど強力ではありませんが、それでも人間の人間の10~20倍とされ非常に高性能です。空気中のニオイをキャッチする嗅覚受容体というニオイセンサーは、人間には約500万個あるといわれていますが、猫には約4,500~8,000万個と推定されています。

また、猫は鼻腔内にヤコブソン器官とも呼ばれている鋤鼻器(じょびき)という超感覚的嗅覚器官を持っています。動物が分泌するフェロモンやホルモンといった化学的な物質を収集することができ、人間には嗅ぎ分けることができないモノのニオイを感知することができます。

フレーメン反応として知られる、舌を出したり、口を半開きにしたり、マズルにシワを寄せたりするこ行動は、鋤鼻器で情報を収集しているのです。

ヒゲ(洞毛)

猫のヒゲは、ウィスカーパッド(ウィスカーパッド)とともに猫好きにはたまらないパーツです。ただ実際には、猫にとって優れた感覚上の利点があります。猫ヒゲは気流のわずかな変化を感知し、空間の幅を判断したり、暗い場所で動き回るときや獲物の位置を察知するのに有効です。

それだけでなく、ヒゲの位置や動きは猫の感情や状態を示す手がかりとなります。例えば、驚いたりするとヒゲが前に向き、リラックスしているときは横に広がります。また、興奮したり緊張状態のときには、振動させることもあります。

猫には本当に霊が見えるのか?

明確な研究はなく科学的には確固たる証拠はありません。現状は、まさに逸話と証拠が対立しているといえます。例をあげると次のようなものがあります。

猫などの動物には、地震や噴火などを予知する能力があると信じている飼い主さんも多いと思います。しかし、米国地質調査所のレポートによると、「動物の異常行動の解釈は、人間の解釈に大きく左右される」としています。私たちは動物と会話することができないため、観察された異常行動が災害の兆候を感知したものか、それともほかの外的要因によるものかを知ることはできないのです。

ただし、私たちが感じ取れないからといって、猫が何かを察知していないということにはなりません。猫は気圧の変化を感知することができます。つまり、天気の変動に敏感です。彼らの反応に意図的な動機はなく、単に本能と能力の組み合わせでしかないのですから。

猫の行動は、人間にはほとんど意味のないものでしょう。数分も何もない空間を見つめたり、壁の向こうの見えない何かを追跡したりします。それは、あたかも空間を浮遊する霊を追跡しているように見えますが、実際には音やニオイ、壁のなかの小さな虫の動きを追跡しているのかもしれません。

もちろん、私たちと同じように単なる勘違いの場合もあるでしょう。たとえ、彼らが鋭い感覚で何かに反応したとしても、それが幽霊である可能性は低いでしょう。ほかの生物だけでなく、家電が発する音かもしれません。

猫の反応が気になるとき

これまでのことを考慮して、私たちが知覚できない刺激に対して猫が反応するのは正常です。しかし、愛猫が不思議な反応を繰り返すのは普通ではない可能性もあります。まず考えられるのが環境ストレスです。引っ越し、新しい家族や他のペットの追加、騒音や振動、さらにはフードの変更や運動不足などもストレスの要因となります。

ストレスの原因を取り除くか最小限に抑えることで、異常行動をなくし健康への悪影響を減らしてあげましょう。

まとめ

猫に霊が見えるかどうかはわかりません。予知能力についても科学的には証明されていません。ただ、科学的な裏付けはありませんが、地震や津波が発生する前に、ペットが異常な行動を示したとされる歴史や一部の観察が伝えられています。

動物は繊細な感覚を持っていることは周知の事実であり、それが具体的な自然災害の予知につながるメカニズムの解明は現在でも研究が進行中です。ことによると霊を感知する能力も明らかになるかもしれません。

ただし、異常行動が頻繁に見られるときはストレスや疾患の可能性もありますので、獣医に相談することをオススメします。