ペットにふさわしい供養を検討する
愛するペットが“最期の時”を迎えたら、あなたはどうしますか? いつかは別れが来るとわかっていても、実際にその日を迎えると、どうしたらよいのかと困惑してしまいます。大切な家族の一員であるはずなのに、どのように供養すべきか迷ってしまうのです。
ペットの供養は、ペットと飼い主の関係で考えるものであり、人間のように先祖代々という永続的なものではありません。ですから、ペットの供養は飼い主や、その家族が納得のいくことをするのがよいと考えます。
自宅で写真を飾り、大好きなおもちゃやおやつをお供えする。ペット専用の共同墓地に埋葬する。ペットのお墓を購入して埋葬する。ペットの供養の仕方に「形」はありませんので、どれもがよい供養と言えるでしょう。大切なことは、ペットを思い出し、いつまでも忘れないでいてあげることです。納得のいく供養ができるように、ペットが元気なうちから検討しておくことをオススメします。
さまざまな供養スタイルを知る
ペットにふさわしい供養スタイルを見つけるために、まずは火葬や遺骨の供養のスタイルを知ることが必要です。それぞれ、時代とともに多様化しています。
土葬について
最近では、土葬のケースは少なくなってきました。基本的にペットを自宅の庭や、自分や家族の名義の土地に埋めることは問題にはなりません。しかし、他人名義の土地や公園など公共の場に埋葬することは犯罪(廃棄物の不法投棄)になります。また、海などに投棄することも同じく犯罪になりますので、十分に気を付けてください。
火葬しないで土葬する場合は、深く穴を掘ります。そうしないとほかの動物が掘り起こしたり、腐敗してニオイが出てしまうこともあります。しっかりと1メートルくらいの深い穴を掘って埋葬するようにしましょう。ただし、最近は環境問題を重視して、土葬する場合でも火葬をしてから埋葬するほうが主流になっています。自分の庭であっても、不衛生にならないようにすることが大切です。
火葬について
火葬は、基本的には地方自治体や火葬業者に依頼することになります。地方自治体では、人間の火葬場にペットの火葬施設を併設している場合があります。お住まいの地方自治体にペットの火葬場がない場合は、県外の施設が利用可能です。県外の場合、料金が異なる場合があります。施設によって、内容や料金などはそれぞれ異なりますので、しっかり確認しましょう。
民間業者の場合は、下記のようないくつかの方法があります。いずれにしても、業者により料金や付随するサービスが違いますので、比較して納得のいく方法を選択することが大切です。
【合同葬】
合同葬とは、ほかのペットと一緒にお経をあげてもらい、その後、合同火葬をしてもらう葬儀の方法です。基本的に遺骨はほかのペットと混合されます。火葬の立ち合いやお骨上げなどはできません。遺骨は共同墓地や合同供養塔などに埋葬されます。火葬場には自分で出向くか、業者にペットの遺体を預けて、その後のすべての事項を依頼することもできます。
【一任個別葬】
一任個別葬とは、お経をあげてもらう葬儀の後、個別に火葬してもらう葬儀の方法です。葬儀社にすべての業務を一任することになりますので、火葬の立ち合いやお骨上げなどはできません。遺骨は、納骨や埋葬、返骨もできます。
【立ち会い個別葬】
立ち合い個別葬とは、お経をあげてもらう葬儀の後、個別に火葬してもらう葬儀の方法です。葬儀社に一任するのではなく、飼い主が立ち合いながら火葬をし、お骨上げを行います。遺骨は、納骨や埋葬、返骨もできます。
【自宅葬】
自宅葬とは、葬儀社が自宅まで出向いて、すべての業務を行う葬儀です。お経をあげてもらう葬儀の後、移動火葬車にて火葬を行います。お骨上げもできます。人間と同じように友人や知人などを招き、「お葬式」という形でペットを見送ることも可能です。
なかには悪質な業者もいます。料金の詳細や総額などを事前に確認し、必ず書面で受け取るようにしましょう。基本的な火葬料金は、小型犬・中型犬・大型犬・超大型犬・猫に分けられている場合、また犬・猫の体重により変わりますので、体重を把握しておきましょう。
遺骨の供養について
ペットの遺骨の供養には、きちんとした決まりや法律はありません。残念ながら人間とは異なり、火葬後にどうするのかまだきちんと決められていません。いくつかの選択肢がありますので、飼い主やその家族の考えに合うものを選びましょう。
【ペット霊園のお墓に埋葬する】
・合同供養塔
ほかのペットと一緒に埋葬する合同墓地です。遺骨は混合になりますが、費用は無料~数千円と安くなります。
・個別墓地
区画に墓石などを設置して、骨壺ごと埋葬する個別のお墓です。建立に10万円~数十万円、別途、維持管理費がかかるのが一般的です。納骨費用は10万円前後です。納骨時には、通常目地開けなど石材店の作業が必要となり、納骨費用含め5万円前後です。また、墓石にペットの名前を彫刻する場合は、別途3~5万円は必要となるでしょう。もし、納骨の際に僧侶などにお経をあげてもらう場合は、お布施も必要となります。
【ペット霊園の納骨堂に納骨する】
最近では、ペット霊園に屋内の納骨堂を備えているところが増えています。棚式やロッカー式などの種類があり、費用も低価格のものから、数十万円するものまでさまざまです。人と一緒に入れるお墓も出てきています。納骨堂に飾るものは、骨壺のほかには、写真やお花・線香立てやろうそく立て、お水、好きだった食べ物などが一般的ですが、ペット霊園によって不可の物もあります。規則に従って、素敵に飾ってあげましょう。
【手元供養・自宅供養する】
ペットのメモリアルグッズも増えています。人間と同じように、ペット用仏壇や供養棚を用意して供養することが広まってきました。しかし、自宅のスペースの問題や、いつまでもこのままではという感覚もあり、四十九日や一周忌などの節目にペット霊園に埋葬・納骨する人も増えています。メモリアルグッズの費用は数千円~数万円と幅広いので、予算に合った物を選ぶとよいでしょう。
【海洋葬・山林葬・空中葬・宇宙葬などで散骨する】
散骨をする場合には、遺骨を細かく砕いて行います(パウダー状)。思い出の場所などに散骨を行うことも少しずつ広がっています。散骨は、通常数万円~数十万円程度が必要となりますが、後の費用がかからないのが大きなメリットです。その一方で、天候に左右されるデメリットがあります。
【そのほかの供養方法】
樹木葬やお花畑葬など、新しい形のペットの葬儀・供養も出てきました。費用は数万円程度となります。管理状態によっては、年間管理費などがかかるケースもあります。また、Webサイトにアクセスするだけでお墓参りができる、インターネット上に建立されたお墓(サイバーストーン)も出てきました。納骨はできませんが、毎日でもお墓参りができるので、少しずつ人気が高まっています。
【人と一緒に入れるお墓に納骨する】
共葬墓地の場合、お墓や霊園ごとに条件に違いがあるようです。購入する前には、十分に条件を確認してから、契約されることをオススメします。
最近のペットのお墓事情
ペットを埋葬できるお墓は、お寺の境内に設けられている墓地と、それ以外は、宗旨・宗派を問わない民営霊園です。人間と一緒に入れるお墓、人間のお墓の敷地内に別に建立されたお墓、人間と同じ墓地や霊園の別の敷地に建立されたお墓、ペットのみのお墓などその形態はそれぞれのお墓や霊園によって違います。
このような違いがあるのは、仏教の考え方に関係があります。仏教では、この世に生まれたものは「六道」と呼ばれる6つの世界を巡り、永遠に生と死を繰り返すと言われています。地獄・餓鬼・畜生・修羅、人間・天の「六道輪廻」の考え方です。このうち人間・天が善趣(現世でよい行いをした人が死後におもむく世界)、それ以外が悪趣(現世で悪い行いをした人が死後におちいる苦しみの世界)と捉えられています。
この考え方では犬や猫などのペットは「畜生」とされていますので、「人間とその畜生を一緒に埋葬することは絶対できない」ということになります。伝統的な仏教寺院が多い地域では、そのような保守的な考え方が多く、人間とペットを同じお墓に埋葬する共葬墓地の数が極端に少なくなっています。
しかし、10年くらい前からこの共葬墓地が増えてきました。以前はペット霊園に埋葬していたという人も引っ越しする例もあります。共葬墓地が登場した背景には、ペットを家族の一員と考え、愛情を注ぐ人が増えているという現状があります。当初は人間のためのお墓にペットも入るスペースがあるという人間主体のイメージでしたが、最近では、どちらが先に入るかは関係なく、「家族=ペット」のためにお墓を買い求めるという考えに変化してきています。
墓誌にペットの名前を掘ることも自然なこととなっています。愛する家族であるペットとの別れはとても辛く、ペットロスに陥る人もいます。そこから立ち直るためにも、きちんと埋葬して、定期的にお参りをすることが大切です。それが共葬墓地であれば、いずれは一緒に眠るのだという安心感が増し、ペットロスの回避や軽減ができるかもしれません。今後、ますますこの形態の墓地が増えていくことでしょう。
ペットの供養は、選択肢が大きく広がっています。愛するペットにふさわしい供養をしっかりと考えたいですね。ペットはあなたの大切な家族なのですから。
最終回となる第8回のテーマは「ペット終活のススメ」の総仕上げです。後悔のないペットとの生活を送り、ペットロスを少しでも軽減しましょう。
「ペットの終活」連載一覧
第1回 ペットの終活は必要ですか?
第2回 もしもの事態に備えてホームドクターをつくる
第3回 ペット保険とペット信託で万が一に備えよう
第4回 ペトハピライフノートを作成する
第5回 写真・画像データを整理する/思い出を整理する
第6回 要介護状態になった場合を考える
第7回 「供養スタイル」を検討する
第8回 「ペットの終活のすすめ」総まとめ