介護の心構え
近年の獣医療の進歩やペットの住環境の変化などにより、ペットも長生きをするようになりました。ペットも人間と同じように、年を取ると老化や病気などで、思うように体が動かせなくなっていきます。足腰が衰えたり、関節を傷めたりして、今までできていたことが難しくなってきたら、介護が必要になります。
いったん介護が始まれば、それがいつまで続くのか。終わりの見えない状況に、飼い主の気持ちや体が悲鳴をあげることもあります。きちんと気持ちを切り替えて、肩の力を抜いて、ふだんの生活のなかで介護をしていくことが大切です。自分の飼っているペットがそうならないとは限りません。要介護状態になった場合を考え、日ごろから介護について考え、その心構えをしておきましょう。
ペットに癒しを与える存在になる
ペットは元気なあいだに、飼い主にたくさんの癒しを与えてくれます。もし、飼っているペットが要介護状態になったときには、今度は飼い主の出番です。今こそ恩返しをするときと考え、ペットに癒しを与えられる存在になりましょう。
“老化は個性”ととらえる
今までと同じことができなくなったとき、飼い主はとても悲しい気持ちになることでしょう。ですが、悲しい気持ちのまま暮らす必要はありません。人間にも当てはまることですが、生きている間に新たな個性が出てくる時期があります。老化もその1つと考えます。介護をしながらも新しい発見があるはずです。「愛犬・愛猫の個性」と前向きにとらえることが大切です。。
過度な手助けはしない
時間をかければできるのに、たいへんそうだからと手助けをしてしまうと、それができなくなるスピードを早めてしまいます。リハビリテーションと考え、できるだけこれまでの生活に近い状態にしてあげましょう。
生活空間や体を清潔に保つ
ペットの中でも犬や猫はキレイ好きな動物です。生活空間の清掃はもちろん、要介護状態になっても部分的にシャンプーをしたり、全身を拭いてあげるなど、体も清潔に保つようにしましょう。汚れた状態にしておくことは、犬や猫のストレスになるばかりでなく、別の疾患などを引き起こす原因にもつながります。衛生面に気を配り、こまめに清掃やケアを行いましょう。
介護用品を工夫する
必要な介護用品は、ペットの介護の状態により変わってきます。高額な用品を購入してもペットの状態が変われば別の用品に買い替える必要も出てきます。欲しいと思う商品がないケースもありますし、人間用で代用できるなら、それを購入するほうが安いケースもあります。長く続くかもしれない介護生活に必要なことは、ペットが快適であるよう創意工夫をしながら、なるべくお金をかけないで用意をすることです。
うまく手抜きをする
完璧を目指そうとすれば、時間と体力、忍耐力が必要です。飼い主が疲労困憊で病気になってしまったら、ペットは路頭に迷うことになります。ほどよく手抜きをして、ひと息つくことが大切です。ゆっくり、のんびりと進めていきましょう。
ひとりで抱え込まない
終わりが見えない介護の日々。飼い主が精神的にも肉体的にも追いこまれないように、家族の協力やホームドクター、また相談できる人に話を聞いてもらうなど、ひとりで抱え込まないことが大切です。同じ境遇の人がいれば、より飼い主の気持ちも理解してくれることでしょう。できる限り相談しましょう。
後悔しないように日々を過ごす
介護をしている毎日もペットとの大切な時間です。もしものときに後悔しないよう、前向きに、有意義に過ごしましょう。介護生活も大切な思い出です。
利用できる施設とサービス
ペットが要介護状態になったときには、飼い主がひとりで抱え込まないことが大切です。最近ではペットの介護にもさまざまなサービスが提供されるようになってきました。上手に利用することで、介護負担を軽くすることができます。いずれも、資格をもった知識や経験のあるスタッフが常駐している施設やサービスを選択することが大切です。いざというときのために、ペットが元気なうちから情報を集めておくとよいでしょう。
老犬ホーム・老猫ホーム
ペットの高齢化や要介護状態、飼い主の病気や死亡、転居など、やむを得ない事情で、これ以上ペットを飼い続けることができなくなった……。そんな場合に犬や猫を預かり、飼い主の代わりに終生にわたってお世話をする施設です。都市型と郊外型(リゾート型)があり、飼い主の考え方や犬の性格などにより選択することができます。施設にもよりますが、個室で管理するところもあれば、ドッグランや動物病院も備わっている施設もあります。最近では、動物病院に併設されている施設も出てきました。契約内容や費用は施設によって異なるので、利用前にはいくつかの施設を実際に見学へ行き、飼い主が自分の目で確かめて契約することをオススメします。
デイケア・ショートステイ
短時間や短期間だけ預けたいという場合に便利なのが、この施設です。老犬ホームや老猫ホームがそのサービスのひとつとして行っている場合と、デイケア・ショートステイだけを専門に行っている施設があります。最近では、サービスを提供する動物病院も増えてきました。契約内容や費用はその施設によって異なりますので、こちらも利用前にはいくつかの施設を実際に見学に行き、自分の目で確かめることをオススメします。
訪問介護サービス
老犬介護士・老猫介護士が自宅を訪問してペットの介護生活を支援するサービスです。老犬ホーム・老猫ホーム、デイケア・ショートステイの施設が行っている場合や獣医師、動物看護士やドッグトレーナーが行っている場合もあります。契約内容や費用はそれぞれ違いますので、事前にしっかりと確認しましょう。
ぺットシッター
ペットの身のまわりのお世話をするシッターで、自宅に訪問してお世話をしてくれます。最近では、介護の勉強をしているペットシッターもいるので、利用しやすいサービスです。契約内容や費用はそれぞれ違いますので、事前にしっかりと確認してから契約するようにしましょう。
介護用品専門店
車椅子、バギー、床ずれ防止マット、歩行補助ハーネスなど、介護に必要な用品を販売している店舗です。インターネットで展開している店舗が多いですが、最近では、お試しができるサービスも出てきているので、購入前に気軽に試すことができます。必要に応じて利用するといいでしょう。
ペットタクシー
ペット専用のタクシーです。個人で経営している業者が多いようです。動物病院などに行く際に、気軽に利用することができます。乗降の際に運転手が補助をしてくれるので、大型犬などは助かります。
老犬ホーム・老猫ホームの選び方
ペットも老いれば介護が必要となります。認知症になるペットも多く、今や介護は人間だけの問題ではなくなりました。個々の事情でどうしても最後までペットを見送ることができない場合には、人間と同じように老犬ホーム・老猫ホームという介護施設にお世話になるしかありません。
しかし、心配なのはきちんと面倒を見てもらえるのかということに尽きると思います。ブームもあって、お金だけが目的の事業者も後を絶たず、いろいろな問題や事件が起きています。ペット本人は話すことができませんので、より慎重に施設を選ぶ必要があります。契約内容・料金に関しては施設により違いますので、実際に見学に行き、納得をした上で契約することが大切です。また、下記の基準を最低限クリアしているかどうか、厳しい目でチェックする必要があります。
・第1種動物取扱業に登録されている
・入居率が50%以上ある
・スタッフが24時間常駐している
・スタッフの対応がよい
・スタッフの定職率が高い
・資格を持っている専門スタッフがいる
・緊急時にいつでも対応してくれる動物病院や獣医がいる
・日ごろから健康管理や食事の栄養管理をしている
・寝床は専用の場所とスペースが確保されている
・運動量と時間、食事量と時間がしっかりと管理されている
・清潔で嫌なニオイがない
・共有スペースが整理整頓されている
・施設をすべて見学させてもらえる
・施設の説明が十分になされている(費用の詳細説明がある)
生き生きと介護生活を送るヒント
ペットも高齢になると、少しの体調不良から介護を要する状態に陥ることがあります。要介護状態の発生をできる限り遅らせ、介護が必要になってからは状態の維持、改善して悪化させないようにすることが大切です。どうしても体調を崩すと室内に留まり、刺激の少ない生活になりがちです。
犬の場合は散歩に行ったり、ほかの人や犬と接する機会がなくなることで、心や体の機能が低下する恐れがあります。猫の場合も遊ぶ機会がなくなることで同じような状態に陥ります。生活習慣の改善や栄養管理も大切ですが、日々の生活に刺激を与えてあげることが大切です。
旅に出ましょう。散歩に行きましょう。飼い主と一緒にたくさん遊びましょう。飼い主のちょっとした工夫で実現できます。飼い主が明るく前向きに考えることで、飼い主もペットも生き生きと介護生活を送ることができるのです。あきらめずに、日々を楽しく過ごしましょう。
第7回のテーマは「供養スタイルを検討する」です。多様化する供養スタイルを知り、ペットにふさわしい供養を検討するお話です。
「ペットの終活」連載一覧
第1回 ペットの終活は必要ですか?
第2回 もしもの事態に備えてホームドクターをつくる
第3回 ペット保険とペット信託で万が一に備えよう
第4回 ペトハピライフノートを作成する
第5回 写真・画像データを整理する/思い出を整理する
第6回 要介護状態になった場合を考える
第7回 「供養スタイル」を検討する
第8回 「ペットの終活のすすめ」総まとめ