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【ペットの終活】第2回 もしもの事態に備えてホームドクターをつくる

[2016/12/22 6:00 am | ペットジャーナリスト 阪根美果]

ホームドクターの選び方のポイント

シニア期に入ったペットは、今は健康で元気いっぱいでも、「いつどうなるかわからない」という現実があります。いつもと違うと感じたときに、すぐに連れていくことができる、信頼できるホームドクターを決めておくことが大切です。シニア期を迎えるまでに、ワクチン接種などで病院に行き、通う病院が決まっているかもしれません。

しかし、「本当にこの病院でいいの?」「この先生に任せて大丈夫?」と疑問を持ちながら、通っている飼い主もいることでしょう。ペットのために、今一度見直してみることをオススメします。では、どんなことを基準にすれば、信頼できるホームドクターを見つけることができるのでしょうか。選び方のポイントをまとめてみました。

飼い主であるあなたと相性が合うこと

飼い主はペットの保護者です。言葉を話さないペットの代わりに症状を説明し、治療法などを相談しながら決断しなければなりません。病気によっては継続的な通院や入院をする必要があります。たとえ知識や技術が高くても、飼い主と相性が合わずに信頼関係を築けなければ、ペットの診察を安心して任せることはできないでしょう。

何よりも飼い主は、自分自身と相性が合うホームドクターを選ぶことが大切です。初めての病院ではきちんと病状を説明し、わからないことは積極的に質問してみましょう。獣医氏と会話することで、相性が合うかどうかわかると思います。信頼できるかどうか、何でも相談できるかどうか、しっかりと見極めます。少しでも疑問があるときは、別の病院へ行くことをオススメします。

幅広い知識と技術を有すること

ペットが体調を崩したり、ケガをしたりしたときに、真っ先に診察してもらうのがホームドクターです。その症状などから何の病気なのか、どんなケガなのかを的確に判断し、治療するには、幅広い知識と技術が必要です。それらが備わっているホームドクターだからこそ、飼い主からのさまざまな要望にも応えることができるのです。

判断基準としては、まずは、病気やケガについて丁寧な説明をしてくれるかどうか、治療に対していくつかの選択肢を提示してくれるかどうかです。それらができるということは、それだけ多くの知識と高い技術を持っているということに繋がります。その上で、ホームドクターの経歴を見るといいでしょう。どんな経験をしてきたのか、どんな病院で働いてきたのかで、見えてくるものがあります。

大学病院での勤務経験がある場合は、専門分野におけるより高い知識と技術を持っています。また、海外での研修プログラムに参加した、あるいは海外の病院や国内の二次診療の病院での勤務経験がある場合も同様です。一次診療と二次診療を兼ね備えた病院で勤務経験がある場合は、多くの症例に携わっていますので、幅広い知識と高い技術を持っているといえるでしょう。また、学会などへの参加や著書の執筆、「専門医」や「認定医」などの資格などからも推測することができます。

最近では、ホームページなどにホームドクターの名前や写真、経歴を載せている病院が多く見受けられます。それは、その病院の「自信」と「責任」の表れでもあります。実際にホームドクターと話す、経歴を見るなどして、総合的に判断するといいでしょう。

事前に治療法や治療費についてきちんとした説明があること

飼い主の希望をよく聞いて、それに見合ういくつかの治療法をていねいに説明してくれるかどうか、また料金についてもきちんと提示してくれるかどうかは、大変重要なポイントです。ペットが元気になっても、高額な治療費を払うことになり、飼い主のその後の生活が苦しい状態になるようでは、そこに幸せはありません。

例えば、治療の説明の中で検査項目の多さが目立つ場合には注意が必要です。何のための検査であるのかきちんと説明を受け、納得したうえで治療を受けるようにしましょう。

二次診療や夜間診療の病院とネットワークがあること

一次診療であるホームドクターには、幅広い知識と技術が必要です。ですが、その知識や技術、病院の設備には専門ではないため限界があり、ときには二次診療への紹介が必要になります。信頼できるホームドクターほど、重篤と判断したときには早期に二次診療への紹介を提案します。それは、ペットの病気やケガを治すために選んだ最善の道であり、その病気やケガに対するより専門的な知識や技術、設備が必要と判断したからです。

二次診療は専門分野に分かれています。その専門分野ごとにしっかりとしたネットワークを持っていることが、ホームドクターには必要な要素といえます。病院によっては二次診療の手術にホームドクターが立ち会うこともあります。そのような関係が築けるのも、ホームドクターとしての技量との高さといえるでしょう。また、いざという時のために、夜間診療の病院とのネットワークがあることも、ひとつの判断基準となります。

自宅から近い場所にあること

ホームドクターですから、頻繁に通っても無理のない場所にあることが基本です。散歩の途中で立ち寄れるくらいの距離が理想的です。病気によっては毎日通う必要がありますので、「自宅から近い」と感じるかどうかが判断基準になります。

待ち時間は1時間以内であること

飼い主の誰もが経験していると思いますが、病気や怪我の状態で1時間以上待たされるのはつらいものです。それはペットも同じで、長い時間待たされるのはつらく、病気の悪化や大きなストレスを感じることになります。日常的に混んでいる病院はホームドクターとしては避けたほうがいいでしょう。ただし、自宅から近い場所にあれば、診察券を出して、いったん帰宅してから出直すことも可能です。その点も判断基準になるでしょう。

病院内と病院周辺が清潔であること

病院内が清潔なのはもちろん、病院周辺がきれいである病院を選びましょう。糞尿をしないよう、あるいはしてしまったときの対処方法など、飼い主が持つべきモラルを啓蒙していることも大切な要素です。衛生管理をしっかりしている、周囲の人や環境にも気を配ることは、ホームドクターとしての意識が高いことを意味します。ニオイや汚れがないかなど、まずはチェックしてみましょう。

介護に関する知識を有すること

ペットが介護を必要とする状態になったとき、飼い主が頼りにしたいのがホームドクターです。病気やケガのことはもちろんですが、どう寝返りをうたせたらよいのか、トイレをどうしたらいいのかなど、ペットの状態により方法が変わるため、介護の知識も持つホームドクターに相談するのが一番安心できます。

最近では、ペット用車いすや介護ベッドなどの開発に携わるなど、介護に関して熱心に取り組むホームドクターもいます。「介護に関して詳しいですか?」と率直に聞いてみるとよいでしょう。

獣医師自身が診療に熱心であること

獣医師が世間からどのような評価を受けているか情報を集め、飼い主自身がそれを客観的に判断することが大切です。メディアへの露出が多い獣医師であっても、本人が診察せず、スタッフに任せているだけということもあります。病院のホームページの内容や宣伝状況を、くわしく調べましょう。

飼い主としての治療方針を決めておく

獣医療の発展により、ペットもいろいろな治療を受けられるようになりました。20年前であれば助からなかったケースでも、新しい治療や手術によって、これまでどおりに元気に過ごせるようになることもあります。点滴や注射により延命することも可能になりましたが、そこには苦しみが長く続くだけのケースもあります。

それでもできるだけ長く一緒にいるのか、延命処置はせずに自然に死を迎えるのか、苦しみを取り除くために安楽死を選ぶのか、痛みを緩和する治療をしながら死を迎えるのか、最期の迎え方は飼い主が決断しなければなりません。

ペットが命にかかわる病気になった場合に、どこまでの治療をするのか、最期をどう迎えるのか、飼い主としての治療方針を決めておくことは大切なことです。「もしもの事態」は突然にやってきます。冷静な判断をするためにも、納得のいく最期を迎えるためにも、今のうちから目を背けずにしっかりと考えておきましょう。

「もしも」の事態は飼い主にも起こる

「もしも」の事態はペットだけでなく、飼い主にも起こる可能性があります。飼い主が高齢であれば、自分自身に介護が必要になりペットを手放さなくてはならない場合もあります。ペットよりも先に亡くなることがあるかもしれません。

また、年齢にかかわらず、病気や事故で突然亡くなる場合もあるかもしれません。もちろん、そうならないことが一番の願いです。しかし、「もしも」の事態が飼い主に起こってしまった場合、大切なペットが路頭に迷うことがないように、幸せを考えた準備をしておくことが大切です。

ペットを誰に託すか決めておく

飼い主に「もしも」の事態が起こった場合に、ペットを誰に託すかを決めておく必要があります。家族がいれば家族に託せますが、そうでない場合には里親に託すことになります。できれば親戚などの親しい人、友人や知人などの知り合いに託すことをお願いしてみましょう。託す先が見つからない場合は、ペット信託などの制度やペットホームを利用することもできます。
※ペット信託は「ペットの終活のススメ」の第4回でご案内します。

託す相手とはたびたび面会をする

「もしも」の事態に託す相手が決まったら、ペットをたびたび面会させておくことをオススメします。突然、新しい環境に行くのではなく、人や家などに慣れている状態であれば、ペットのストレスを軽減することができます。また、新しい飼い主もペットの性格や行動を事前に把握しておくことができます。積極的に面会させておきましょう。

ペットの情報をまとめておく

ペットが幸せな新生活を送れるように、できるだけ多くの情報を新しい飼い主に伝えることが大切です。ペットの名前、生年月日、性別、種類、病歴、最終ワクチン接種日、生活習慣などをきちんと整理し、1冊のノートにまとめておける「ペトハピライフノート」の活用をオススメします。
※ペトハピライフノートは「ペットの終活のススメ」の第4回でご案内します。

次回は「ペット保険とペット信託で万が一に備えよう」

引っ越しなどでホームドクターが決まっていない人は、ぜひ早めに信頼できるホームドクターをつくりましょう。第3回のテーマは 「ペット保険とペット信託で万が一に備えよう」です。ペット保険の賢い選び方や新しい制度であるペット信託についての内容をご紹介します。

「ペットの終活」連載一覧
第1回 ペットの終活は必要ですか?
第2回 もしもの事態に備えてホームドクターをつくる
第3回 ペット保険とペット信託で万が一に備えよう
第4回 ペトハピライフノートを作成する
第5回 写真・画像データを整理する/思い出を整理する
第6回 要介護状態になった場合を考える
第7回 「供養スタイル」を検討する
第8回 「ペットの終活のすすめ」総まとめ

[ペットジャーナリスト 阪根美果]