アトピー性皮膚炎の犬に対する糞便移植療法の有効性を発見

[2023/06/15 6:01 am | 編集長 国久豊史]

アトピー性皮膚炎の犬に対する糞便移植療法の有効性を発見

腸内細菌叢が治療のカギ

東京農工大学 | 2023/6/13

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このコーナーでは、注目ニュースに対する編集部や識者のコメントを紹介します。

このニュースをご覧になって、アトピー性皮膚炎の根治に期待された飼い主さんも多いことと思います。

また、「糞便移植」という言葉に「えっ!?」と目を疑った人もいたのではないでしょうか。そうなんです。これは、うんちを移植するというものです。腸内細菌叢移植(FMT)とも呼ばれています。

じつは、この糞便移植については、今回の研究メンバーでもある“うんち先生”こと川野浩志先生の「菌活のススメ」において、2021年にご紹介しました。その内容をおさらいしたいと思います。

アトピーやアレルギーの治療においては、“痒み”という敵を倒すために、「ステロイド」「免疫抑制剤」「分子標的薬」というコンビネーションで必死に攻撃しますが、慢性疾患であるアレルギーという敵は倒れても何度でも立ち上がって来ます。

一方で、薬を使わずに痒みをコントロールするということも可能になりつつあります。では、どうやってアレルギーで痒がっている犬の痒みを薬を使わずに止めるのでしょうか?

川野先生が、まず最初に取り組んだのは「糞便移植」です。つまり、アレルギーのわんちゃんに健康なわんちゃんのうんちを食べさせるというマッドサイエンスです。

アレルギーの犬の腸内は、健康な犬の腸内に比べて菌の種類も数も少ない状態=ディスバイオーシスだということは、すでに証明されています。

糞便移植は、健康な犬の腸内細菌を丸ごと移植するために、健康な犬のうんちを食べさせれば実現できるという仮説に基づいています。

具体的には、アレルギーの犬12頭に対して健康な犬のうんちを食べさせて、痒みスコアがどう変化するか調べました。その結果は驚くべきもので、参加された飼い主さんからは「2回目をやってほしい」といわれるほどの効果がありました。

さらに、川野先生はうんちでなくても、アレルギーの暴走を止めてくれる物質(制御性T細胞)を出してくれる腸内細菌=患者に合ったオーダーメイドの乳酸菌に行き着きます。

犬の乳酸菌マッチング検査によってオーダーメイドの生菌をつくり、2019年4月から患者に摂取させました。1年経過観察した結果、78頭の患者たちのじつに8割に効果が確認できたようです。

こうした臨床での知見は、犬と猫のアレルギー性皮膚疾患に対して、対症療法ではなく根治療法につながっていくでしょう。

川野先生の研究に興味がある方は、東京動物アレルギーセンターにお問い合わせください。

[編集長 国久豊史]