【犬飼いTIPS】首をかしげる犬の行動学:その愛らしいしぐさの真相と疾患の可能性とは

犬が首をかしげる姿は、多くの飼い主にとって愛らしいものです。このしぐさは、何かに興味を持っているサインや、飼い主とのコミュニケーションを図ろうとする表現ともいわれています。

犬が首をかしげるのはよく見られる正常な行動で、獣医学的な原因を除けば、心配する必要はありません。

今回は、犬が首をかしげる行動の真相について詳しく探り、ときには疾患のサインである可能性についても考えます。

犬が首をかしげるのはよく聞くため? 見るため?

犬が首をかしげる理由のひとつに、聞こえ方が関係している可能性があります。頭を傾けることで、音に対してよりよい方向を向いているのです。

犬の前で空き瓶の上部に空気を吹きかけてみたことがあるでしょうか。多くの犬は首をかしげますが、なかには左右にかしげる犬もいます。また、その音が初めての経験の場合、好奇心を示す額の周りのしわが見られることもあります。

これまでの研究では、犬は音の方向に合わせるために頭を右や左に向ける(かしげるのではなく)ことがわかっています。また、その方向が脳のどちらの側で活発に音を処理しているかに関連していることも指摘されています。

しかし、首をかしげることが同様の機能を果たすかどうかについては、あまり研究がなされていません。

視覚も首をかしげる理由かもしれません。犬の鼻の形によっては、周囲の何かに焦点を合わせようとするとき、首をかしげることでよく見えるようになるかもしれません。

しかし、残念ながら、こちらも統計的に証明したり否定したりする研究はほとんどありません。

首をかしげることは認知プロセスの一部

犬が首をかしげることについて説明し、データを収集しようとした最初の試みとして注目されている研究があります。

当初の仮説では、首を傾けることは、犬が脳の異なる側を使って情報を処理していると考えられました。つまり、犬たちは音について考え、それが何を意味するのかを判断するために、首を左右どちらかにかしげていたのです。

研究者たちは、「Gifted Word Learners(GWL)」において、頭首をかしげるしぐさがもっとも頻繁に起こることを発見しました。GWLの犬は、おもちゃの複数のラベルを学習し、偶然の比率を超えてそれらをうまく取り出すことができます。

同じ研究の一環として、名前でおもちゃを見つけるように指示された実験では、GWL犬は43%の確率で首をかしげましたが、GWLでない犬は2%でした。

もうひとつの可能性は、首をかしげることが、おもちゃの視覚的情報と既知の単語を照合し、識別するプロセスと何らかの関係があるということです。

このような認知は、犬が学習したフレーズが使われたときに首が傾くことを説明するかもしれません。例えば、あなたがお散歩バッグを手に取りながら「お散歩に行こうか」というフレーズを発すると、散歩が大好きな犬は確実に認識できます。

興味深いことに、首をかしげるのは一貫した方向であることもわかっています。つまり、好みの方向が個体特性になっているということです。これは、人間と同様に犬にも優位な側面があるといういくつかの理論と一致しています。

もちろん、犬が何らかの理由で自然に頭を傾けるようになり、正の強化が行われれば首をかしげる回数は増えるでしょう。合図でこの心温まるかわいらしい芸を披露できるようになるかもしれません。

疾患の可能性も

犬が見たり聞いたりしていることとは無関係に首をかしげている場合は、獣医学的な原因が潜んでいる可能性があります。栄養不足や耳の感染症、鼓膜の損傷なども、首の傾きにつながることがあります。

疾患の程度にもよりますが、この状態が継続的にみられる場合は、ほかの症状も伴うことがほとんどです。前庭疾患など、より深刻な問題もあります。この病気では、頭の傾きに加えて、捻転斜頸や眼振がといった症状から、過剰なよだれや嘔吐、旋回やよろめきなどの運動障害が見られます。

前庭疾患は、内耳の腫瘍によって引き起こされることもあります。これらの症状に気づいたら、できるだけ早く動物病院で診察を受け、診断と治療計画を立ててもらいましょう。前庭疾患は、根本的な原因にもよりますが、早ければ早いだけ完治する可能性が高まります。

まとめ

犬が首をかしげる行動は、愛らしいしぐさのひとつであり、興味や疑問を示す表現として理解されることが多いです。しかし、つねにその背後には健康に関わるサインが隠れていることも忘れてはいけません。

愛犬の行動をよく観察し、異常を感じた場合は早めに獣医師に相談することが大切です。正しい知識を持つことで、愛犬との絆を深め、健康を守る手助けとなるでしょう。