ペットイベント会場で見た飼い主の横暴な振る舞い ~迷惑な飼い主にならないために必要なこととは

ペットの飼い主のなかには、マナーを守らずに周囲に迷惑をかけてしまう人が少なからずいます。「動物の愛護及び管理に関する法律」には、飼い主が責任を持って人に迷惑を及ぼさないよう努めなければならないことが定められています。

しかし、PLAN-Bの「わんちゃんの飼い主さんのマナー」に関するアンケート調査によると、飼い主のマナーが悪いと思ったことがある人は、なんと91.1%にものぼったそうです。

近年、バラエティに富んだペットイベントが各地で開催されています。ペット用品などを販売する店舗も数多く出店していて、それを楽しみにイベントに参加する飼い主も多いようです。ここ数年はコロナ禍の影響で開催中止となり残念に思っていましたが、現在は少しずつ再開傾向にあります。

筆者は仕事柄、多くのペットイベントに参加していますが、その会場で飼い主の横暴と思われるような振る舞いを見聞きすることがあります。いくつかのケースから、迷惑な飼い主にならないために必要なことを考えてみましょう。

ケース1:注意書きを無視

エキゾチックアニマルのブースで、リクガメの展示販売をしていました。リクガメは高さのある容器に入っていて、上から眺められるようになっています。そこには「ワンちゃんが近づいたり吠えたりするとカメさんが怖がりますので遠くから見てあげてください」と注意書きが掲示されています。しばらくして、ミニチュアダックスフンドを抱きかかえた4人家族がそのリクガメに近づいて行きました。すると、その犬がリクガメに向かって吠え始めたのです。しかし、その飼い主は「初めて見るね~、おもしろいね~」と話しながら、愛犬をどんどん近づけていきます。注意書きが目の前にあるのに意に介さず。店員は首をかしげながら様子を伺っていましたが、その後、注意を促していました。

「リクガメはあまり聴力がよくないので犬の鳴き声自体はそれほど影響しないが、吠えている犬の姿は見えるので注意書きをしている」と店員は話していました。

ケース2:犬の糞尿の処理をせず逃走

シベリアンハスキーがイベント会場内で糞尿をしてしまいました。大型犬なのでかなりの量です。飼い主は「ごめんなさい。今、拭くものをクルマから持ってくるので」と伝えて愛犬を引っ張って出口のほうに走っていきました。近くにいた来場者たちは「犬が粗相をしてしまうのは仕方がないけど、なんで飼い主が拭くものなどを持参してないの?」と話しながらも、ほかの人や犬が踏まないようにと注意を促しながら待っていました。しかし、その飼い主は戻ってくることなく、結局は会場スタッフが片付けました。

「会場に入る前にトイレを済ます必要があるし、万が一粗相をした際には飼い主が処理する必要がある」と、その顛末を見ていたほかの飼い主は話していました。

ケース3:販売商品にマーキングする犬に気付かない

チワワの男の子を連れた飼い主が、おもちゃを販売している店舗で品定めをしていました。チワワはリードに繋がれて歩いていましたが、しばらくすると足元に置かれた販売用のおもちゃが入った段ボールにマーキングを始めました。飼い主が歩くたびに別の段ボールにマーキングをしています。筆者が声をあげるとすぐに店員が気付き「あちこちにマーキングをしているので抱っこしてください」と注意をしました。飼い主は「え~、気が付かなかった。ごめんね~」と笑いながら謝罪し、そそくさとその店を離れました。店員がその段ボールをチェックすると、商品にも被害が及んでいたようで「マナーがなってない」と憤慨していました。

「マーキングする犬にはマナーベルトをするのがマナー。特にイベント会場はいろいろな犬のニオイがするので、飼い主がより注意深く愛犬を見守る必要がある」と店員は話していました。

ケース4:購入前のおやつを犬に与える

筆者も愛犬を2匹飼っているので、おやつを購入しようとある店舗のレジに並んでいました。すると「そんなことをされては困ります」と柴犬を連れた飼い主と店員がもめています。話を聞いていると、どうやらその飼い主は購入する前のおやつを開けて愛犬に与えてしまったようです。飼い主は「ちゃんとお金を払うんだからいいじゃない。問題ないでしょ!」と強気で正当性を主張しています。しばらくしてほかの店員がやってきて「いやいや、それは罪になると弁護士がいっている」とネットで検索した画面を見せると、飼い主は急に態度を変えて平謝りしていました。

購入前の商品を食べた人が訴えられ、窃盗罪で実刑を受けたという判例があります。「愛犬が欲しがってかわいそうだから与えた」「あとでお金を払うからいいじゃない」は通用しないのです。「常識的に考えられない」と店員は首をひねりながら驚きを隠せないようでした。

ケース5:販売用のカートに犬を乗せる

最近はカートに乗った犬や猫、ウサギ、フェレットなどを見かけることが多くなりました。イベント会場でも多くの飼い主がカートにペットを乗せて歩いています。カートを販売する店舗も多く、たくさんの製品が展示されています。試乗用のカートも用意されていて、実際にペットを乗せることができます。ただし、数に限りがあり、必ず「試乗用」と掲示されています。しかし、驚くことに「わあ、これいいね。乗ってみなよ」と愛犬に話しかけながら、次々に販売用のカートに愛犬を乗せていく飼い主が……。気付いていない店員に「あれって乗せても大丈夫なんですか?」とほかの飼い主が伝えていました。店員は驚いて「それは販売用なので乗せないでください」と伝えましたが、「あら、知らなかったわ」と謝りもせずどこかへ行ってしまいました。犬が乗ったカートには被毛が付いていて、店員は慌ててガムテープで取る羽目になりました。

「試乗用と書いていないのに何で乗せるかなあ。常識がなさすぎる」と店員は話していました。

イベント会場で必要なマナー

ペット同伴のイベント会場では、誰もが楽しめるように、ルールを守ることが大前提です。飼い主一人ひとりがマナーを守ることで、不用意なトラブルを避けることができます。不特定多数の人やペットが集まる場所に出かけても、周囲に迷惑をかけない行動ができるか、さまざまな気遣いができるかなど、日ごろのしつけやマナーを見直す機会でもあります。では、どのようなことを心がけたらよいのでしょうか。

■狂犬病・ワクチン接種、ノミ・ダニ駆除をしておく
感染症や寄生虫などをうつさない・うつらないためにも、必要な予防接種、駆虫薬の投与をしておきましょう。

■排尿・排便は会場に入る前にさせておく
トイレはできるだけ事前に済ませておきましょう。飼い主が必要なトイレ用品を持参し、会場内ではペットシーツの上などにさせるようにしましょう。会場内で粗相をしてしまった場合には、必ず飼い主が責任をもって片付けます。会場によっては専用のゴミ箱を設置している場合もありますが、散歩のマナーと同様に、基本的に排泄物、ゴミなどは各自が持ち帰りましょう。

■マーキングをする場合はマナーベルトを装着する
会場内の各店舗には販売用の商品がたくさん並んでいます。飼い主が気付かないうちに、商品の入った段ボールなどにマーキングをしてしまう場合があります。マーキング癖がある犬はマナーベルトなどを利用しましょう。

■首輪やハーネスは、リードは必ず着ける
ドッグランなどリードを外してよいエリア以外では、勝手にリードは外さないようにしましょう。会場内ではできるだけリードを短く持ち、飼い主がコントロールできるようにします。万が一の逃走や迷子に備えて、鑑札や迷子札も着用します(マイクロチップも装着していることが望ましい)。

■咬み癖がある犬にはマズルガードを装着する
咬みつき事故を予防するために、基本的に咬み癖がある犬は参加を見送ったほうがよいでしょう。参加する場合にはマズルガード(口輪)などを装着し、トラブルにならないように飼い主がしっかりと管理する必要があります。

■ヒート中は参加を控える
雌犬・雌猫などは、ヒート中(発情期)もしくはその前後の参加は控えるようにしましょう。

■ペットから目を離さない
飼い主同士がおしゃべりに夢中になるあまり、ペットから目を離さないようにしましょう。また、イベント会場の店舗には多くの商品が並んでいます。足元にも置いてある場合もあるので、ペットがマーキングなどで汚したり、悪戯をしないように注意する必要があります。


多数の人や犬が集まる場所では、ペットがパニック状態になり、予測できない行動をとってしまうことがあります。「うちの子は大丈夫」と愛犬を過信することなく、いつも以上に飼い主が注意を払うことが大切です。前述したマナーに加えて、日ごろから「ムダ吠えをさせない」「飛びつかせない」など、基本的なしつけをしっかりとしておくとともに、社会化ができているかどうかを確認しておきましょう。

ほかの人、ほかのペット(動物)にも配慮ができる飼い主に

例えば、チワワやトイプードルなど小型犬を飼っている飼い主のなかには、大型犬が苦手という人もいます。また、犬以外のペットを飼っている人は、小型犬であっても怖いと感じることもあります。そのため愛犬を長めのリードで歩かせたり、ノーリードで歩かせることのないように注意する必要があります。「苦手な人もいる」と、つねに他の人への配慮を念頭に置く必要があります。また、前述したケースにもあるように、店舗に対しても迷惑をかけることのないように配慮が必要です。

そして、イベントには犬以外にもたくさんの種類のペットが参加しています。猫、ウサギ、鳥、ヤギ、ヒツジ、馬、モルモット、爬虫類など多種多様です。当然のことですが、それぞれ特性があります。苦手なことも犬とは違います。苦手なことをされればストレスを感じ、体調を崩したり、トラウマを抱えることにもなりかねません。飼い主は愛犬だけでなく、ほかのペットに対しても優しい心で十分な配慮をすることが大切です。

そのような配慮をすることで、よりトラブルを避けることができます。日ごろのしつけやマナーとともに、ほかの人やほかのペット(動物)への配慮を心がける。迷惑な飼い主にならないために必要なことです。

そうすることで、飼い主も愛犬もイベントを楽しく過ごすことができるでしょう。