子猫の生命力の強さに思わず涙した話
太鼓判ブリーダーが猫たちとの暮らしをご紹介。ほのぼのした日常やブリーダーならではの話など、いろいろな日常をお届けします。今回はメインクーンのブリーダーCattery Amangroup/阪根美果さんです。
ブリーダーは子猫の誕生の喜びとともに、悲しい出来事にも多く遭遇します。出産時に母猫のお乳を吸うことなく、そのまま虹の橋を渡ってしまう子猫もいます。それは命を扱うものの宿命でもありますが、とても悲しく、ブリーダーとしての無力さを感じる瞬間でもあります。
15年前、1頭の子猫がその運命を背負いました。ほかの子猫と変わりなく母猫のお腹から出てきましたが、息をしていません。すでにぐったりとして動くこともありません。そんなときは温めたり、鼻に入った羊水を出したり、心臓をマッサージしたり、人工呼吸をしたりと、できる限りのことをします。簡易の酸素室に入れることもあります。ですが、息をすることはありませんでした。
私は小さな箱にタオルを敷いて、その子猫を寝かせました。「助けてあげられなくてごめんね」。とても悲しい気持ちでしたが、母猫の出産はまだ続いています。私は出産のサポートに戻りました。2時間後、出産が終わりました。5頭の子猫は元気に母猫のお乳を吸っています。「よかった」――ただ、そのひと言につきます。
それから1時間が過ぎたころでしょうか。明らかに産室とは違う場所から元気な子猫の鳴き声が聞こえてきます。
私は驚いてその鳴き声のするほうに行きました。その声はさきほどの小さな箱から聞こえてきます。なんと、息をしていなかった子猫が3時間後に息を吹き返したのです。これは奇跡!? 私は涙が止まりませんでした。子猫の生命力の強さに驚いたとともに、大いに感動しました。
そのときの子猫は15歳になりました。体重は11キロにもなり、大きな病気をすることもなく、元気に過ごしています。オーナーさんから近況報告が届くたびに、当時のことを思い出します。これからも健康で、長生きしてもらいたいですね。
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