ペットと暮らす部屋の壁は漆喰がオススメ~簡単にオシャレにDIYできる~

コロナ禍によって私たちの生活は大きく変わりました。外出自粛やテレワークによって自宅で過ごす時間が増え、いままで気にならなかったことに目が向くようになったようです。特にペットと暮らす家庭では、部屋の汚れやニオイが気になるという調査結果もありました。

今回は、快適な空間をつくるという観点から、部屋の内装をDIYでリフォームした顛末をご紹介したいと思います。愛犬や愛猫と暮らしている方の参考になれば嬉しいです。

ペットと暮らすうえで壁は鬼門

筆者は世界最大の猫種・メインクーンのブリーダーとして、2000年からキャッテリーを運営しています。また、いつもペットの愛犬がそばにいます。これまで愛犬や愛猫と、マンションや戸建てなど数件に住みましたが、つねに壁には神経を使ってきました。

これまで、猫の引っ掻きに強いクロスや化粧板、アルミ複合板など、いろいろ試してきました。クロスは爪研ぎのえじきになって、すぐに剥がされてしまいました。化粧板やアルミ複合板などはそこそこ耐久性もあったのですが、引っ掻きキズや汚れたりしても簡単に取り替えたり、模様替えするわけにはいかず、数年でやっと張り替える程度でした。

姫路城
エーゲ海の建物

ペットがいる家庭には漆喰壁がいいかも

今回、キャッテリーを“やきものの里”信楽に移転することになり、物件を自分の思いどおりにリフォームしたいと考え、壁材についてもいろいろリサーチしました。新しいキャッテリーは緑が豊かな山間部にあります。まさに自然のなかのキャッテリーという佇まいです。せっかくなら壁も自然素材にしたい。そう考えていたところ、ホームセンターでDIYできる漆喰があることを知りました。

漆喰は日本伝統的な壁材です。お城などの壁も漆喰が使われています。主成分は消石灰(水酸化カルシウム)です。サンゴ礁が地殻変動などで隆起し、陸地になった石灰鉱脈から採掘されたのが石灰石で、石灰石を焼成して水を加えたものが消石灰です。消石灰に「つなぎ」となる糊(のり)やスサを加えて、水で練ったものが漆喰です。

ヨーロッパでも昔から漆喰が多く使用されてきました。地中海(エーゲ海)などは、漆喰建築が多く、私たちが魅せられる風景は、漆喰の風景といってもいいほどです。主成分は消石灰に砂を混ぜたり、大理石を使ったりと多種多様の漆喰があります。

漆喰はオーガニックな壁材で、明光性・調湿性・耐火性・耐久性・消臭性・抗菌性・防カビ性など、ほかの壁材にはない優れた点ばかりです。さらに“猫の爪研ぎにも強い”と謳う製品もありました。しかし、左官というプロがいるくらいなので、施工はそれなりに大変なのではないか…という不安もありました。

漆喰壁をDIYすることした

ネットでいろいろ調べていると、動画もアップされていて、女性でも簡単に施工できそうなのがわかりました。数あるなかで選んだのが、MITO「MARBLE(マーブル)」、田川産業「NURI2(ぬりぬり)」の2製品。

漆喰の作業用具

まず、必要な用具を揃えます。コテ、コテ板、バケツ、おたま、ゴム手袋、マスキングテープです。今回は壁を仕上げてから床をリフォームするので、床の養生はしませんした。ただ、普通は養生シートや養生テープなどで床が汚れないようにします。

塗る前の準備として以下の作業を行います。

 ①壁の汚れを雑巾などで拭く
 ②マスキングテープで柱・窓・コンセントなど施工箇所以外を養生する
 ③穴や継ぎ目がある時はメッシュテープを貼って塞ぐ
 ④壁の材質や汚れ具合で、シーラーを塗る  


今回は下地をつくりプラスターボード(石膏ボード)を貼ったので、①と②を行いました。

漆喰DIY「MARBLE(マーブル)」編

まず、試したのが「MARBLE(マーブル)」です。マーブルは和漆喰ではなく、スペイン漆喰です。主原料は天然大理石で、日本の風土や住宅事情に適応するようにスペインのメーカーと共同開発されました。空気中の二酸化炭素と反応して徐々に硬くなる=耐久性を増していくようで、和漆喰よりも強度と厚みを出すことができるという特徴があります。

「MARBLE(マーブル)」のシンプルなパッケージ
密閉袋に練り済みの漆喰が入っている

パッケージは、シンプルでダンボールのなかに練り済みの漆喰が密閉袋に入っています。8㎏と16㎏があり、8㎏は畳約2.5枚分(約4㎡)、16㎏が畳約5枚分(約8㎡)です。6畳だと壁の面積は約30㎡程度になります。窓やドアの設置状況によって異なりますが、少し多めに用意するとよいと思います。初めての場合は薄く塗るのは難しく、若干厚めになってしまいます。また、余っても保存ができるので、あとで塗り足したり、補修するときにも便利なのです。

できるだけ柔らかくできるかが勝負

袋を開ける前に、「MARBLE」をしっかりともみ込みます。粘土のように硬く感じるかもしれませんが、だんだんと柔らかくなってきます。はじめにこの作業をすることで、すぐに壁に塗ることができます。バケツに出してから柔らかくなるまでこねるには、かなりの時間と労力になるので要注意です。

柔らかくなったらバケツに移す

均等の柔らかさになったら開封して適量をバケツにあけます。バケツに入れて硬いと感じたら、水を足して柔らかくすることもできます。はじめはこの塩梅がつかめず苦労しました(苦笑)。あまり入れすぎると水分が多すぎてボタボタと剥がれ落ちてしまうので、まずは加水せずに塗ることをオススメします。

漆喰は乗せすぎない!

バケツから適量をコテ板にのせ、コテで壁全体に塗っていきます。ここでも注意事項があります。コテ板に漆喰を乗せすぎないこと。おたま1、2杯からはじめましょう。何度も追加するのが面倒だと思い、調子にのって山のように乗せると、重くて腕が疲れます。さらに塗っているときは、コテ(右手)に集中しているので、コテ板を持つ左手が疎かになりコテ板が傾いて漆喰を床にボトッと落としてしまいます。

塗り方は、サイトで説明されているように、左から右に弧を描くようにぬっていくのが王道だと思います。ただ、厳密なルールはなく、せっかくのDIYなので慣れてきたら、自分のやりやすいように塗り進めればいいと思います。私の場合は、左下の隅から徐々に上に塗っていき、ある程度の高さになったら、今度は天井の隅から下に塗り進めました。

塗り方に厳密なルールはない

はじめは慣れないので時間がかかります。ただ、なるべく一度で1面は仕上げるようにしましょう。窓(腰高)がある面などは細かい作業になるので、壁だけの面から始めるとよいと思います。慣れてくるとスピードが上がって、アドレナリンも出てきて楽しくなります。家族がいる場合は、みんなでおしゃべりしながらすると楽しいです。

「MARBLE」は、和漆喰と異なり1度塗りで仕上げられます。2度塗りする必要がないので、手軽で作業時間も短くてすみます。また、塗っている際に硬い(伸びが悪い)と感じたら、霧吹きなどで水を吹きかければ、柔らかくなって塗りやすくなります。

角や隅などは、コテの先端(尖った部分)を使うのですが、これは素人には難しい。もんじゃ焼きのヘラなどを使うとキレイにできます。ただ、細い部分はやはり“手”がものをいいます。私は、適量の「MARBLE」を指にとって伸ばしていきました。

1面を塗り終わる毎に休憩し、丸一日かかって終了しました。養生テープは塗り終えたら半乾きの状態で剥がすようにしましょう。忘れると完全に乾いてしまい「MARBLE」まで一緒に剥がれてしまう可能性があります。剥がし忘れたところがあり、養生テープを巻き込んで固まってしまってしまったので、削って発掘して取り除きました。

見物していた愛犬もビックリの仕上がり

季節によって異なりますが1~3日くらいで乾きます。施工がまだ寒い時期だったので、翌日触ったらまだしっとりと湿っていてオフホワイトでした。2日後にはしっかり乾いて真っ白になりました。はじめての経験だったので、けっこう凸凹してしまいましたが、それも漆喰の“味”というものでしょう。

ビフォー
アフター

スペイン漆喰は、粗く手触り感があるので、あえて模様をつけなくても雰囲気が出ます。和漆喰の平滑な表面とは違い、地中海の風景のようです。私はスペインに留学していたことがあり、なんだか懐かしい気持ちにもなり、大満足の壁ができあがりました。

漆喰DIY「NURI2(ぬりぬり)」編

次に「NURI2(ぬりぬり)」を試しました。先に施工した部屋とは押し入れでつながる部屋です。襖を外して格子扉をつけたので、開ければ猫たちが部屋を行き来できるようになっています。押し入れは広いキャットステップ兼休憩所といった趣です。

イラストが可愛い「NURI2(ぬりぬり)」

「NURI2」は、伝統的な100%オーガニックな和漆喰です。消石灰に麻スサと海藻のりを加えた自然素材のみを使用しています。パッケージにはかわいいイラストが描かれています。手伝っているのか、肉球をスタンプしているのか猫も一緒です。箱のなかには、練り済みの漆喰が密閉袋に入っています。18㎏箱には9㎏の袋が2つとシーラー(1L)が入っています。5㎏箱には、5㎏の袋とシーラー(300ml)がバケツ缶に入っています。このバケツ缶もいい感じです。残った漆喰を保存するのにも最適ですが、施工道具を収納したり、ペットのおもちゃなどを入れたりといろいろ活用できます。

準備は前回と同様です。この部屋も下地をつくりプラスターボードを貼ったので、目地の隙間をパテで埋め、養生をして漆喰を塗っていきます。本来は新品のプラスターボードであってもシーラーを塗ったほうが、水分の吸収を抑え漆喰が塗りやすくなるようです。

漆喰のほかにシーラーと説明書が入っている
はじめにしっかり揉み込むのはお約束

箱から取り出したら、開封する前に「NURI2」をしっかりともみ込みます。施工動画では、踏んで柔らかくするとのことでしたので真似してみました。もともとある程度の柔らかさがあるので、体温でさらに柔らかくなります。最後に手でも揉みました。麻すさでしょうか、ダマになっているのがわかったので、指でほぐすようにしました。

バケツに出すときは、袋を立てて漆喰を下にため、くるくると丸めていきます。下の角を切り、少しづつ漆喰を出します。最後は絞るように出すと無駄がありません。柔らかいので、口を開けてお玉ですくって取り出すよりも楽ですし汚れません。9㎏の袋は女性には重いかもしれませんが、私はアスリート出身なので問題なく持ち上げられました。

伸びがよく塗りやすい
細かい部分はヘラを使うとよい

さて、いよいよ塗ります。前回で少し慣れてきたのもありますが、和漆喰の特性なのか粘りがあるので壁への吸着もよく楽に塗れ、伸びもいいように感じます。まずは薄く大きく塗っていきます。下地が見えていても気にしません。「NURI2I」は2回塗りが推奨なので、半乾きになったら2回目を塗ります。このタイミングが難しい。塗ったあとに指で触って漆喰がつかない程度とのことですが、うーん……。

こればかりは季節や環境によってことなるようで「何分後」とはいえず、自分の感覚に頼らざる得ません。今回はまだ寒い時期だったので、乾くのに時間がかかりました。結局、全面塗ってから2回目を塗るくらいがちょうどよかったです。暖かい季節であれば、1面を塗り終わった毎に2回目を塗るというイメージのようです。

水分が蒸発して乾くと白くなる

塗りやすいのでどんどん塗れて、2度塗りしても1日かからず完了しました。仕上がりにはやはり大満足。あえて注意点を挙げるとすると、スサが塊になっていると、塗っている際にそのまま漆喰を剥がしてもっていってしまいます。なので、発見したら取り除くのがよいと思います。あと、漆喰自体、磯の香りがします。天然の海藻から抽出したのりを使用しているので、そのニオイだと思いますが、生魚が苦手な私にとっては若干気になりました。ただ、乾燥とともにニオイは消えます。

ビフォー
アフター

リフォームが終わり、実際に猫たちが暮らし始めましたが、まだ壁に大きな変化はありません。ちょっと爪研ぎしたような形跡(床に白い粉が落ちていた)が1、2回見られましたが、その後は目にしません。凹凸があるので爪が引っかかりやすそうですが、予想外でした。漆喰にした理由には、爪研ぎされて削れても塗り重ねられると考えていたのですが、まったくの肩透かしです。今後も推移を見守りたいと思います。

あとは、頭数は変わっていないので以前までの猫部屋と比較できますが、ニオイは確実に少なくなっているように感じます。湿度も適度に調整されているのか、部屋に入ったときの空気感が違います。温度を一定に保つためにエアコンは稼働していますが、いままでよりも清涼感があるように感じます。

このように、漆喰はペットを飼っている家庭にはオススメな壁材だと思います。素人がDIYしても予想以上の仕上がりで、さらに環境にもいい。興味のある方は、メーカーのサイトをチェックしてみてください。わかりやすい動画も用意されているので心配なく施工できます。