猫の血便は要注意? 症状別の対処法と予防策
愛猫の健康状態を知るうえで、日々の便のチェックは欠かせません。しかし、もし便に血が混じっていたら、飼い主としては大きな不安を感じるでしょう。血便は、消化器系のトラブルだけでなく、全身性の疾患が隠れている可能性もあります。
今回は、正常な猫の便の特徴から血便の種類、原因、対処法、予防策までを詳しく解説します。愛猫の異変にいち早く気づき、適切な対応を取れるようにしましょう。

正常な猫の便
健康な猫の便は、外見や硬さ、色に一定の特徴があります。一般的に、健康な便の色は茶色から濃い褐色で、食事内容によって若干の違いがあるものの、極端に黒かったり赤みを帯びていたりすることはありません。
適度に湿り気がありながらもしっかりとした円柱状の形状をしており、手でつかんでも崩れない程度の硬さが理想的です。柔らかすぎたり、逆にカチカチに硬くなっていたりすると、消化器の問題や水分不足が疑われます。
便の回数や量にも個体差がありますが、一般的には1日に1〜2回程度の排便が正常範囲とされています。食事の影響やストレス、体調によって多少の変動はあるものの、極端に回数が増えたり減ったりする場合には注意が必要です。
また、ニオイも健康状態を反映する要素のひとつで、異常に強い悪臭がする場合は、消化不良や腸内細菌のバランスの乱れが疑われます。
猫の血便とは
血便とは、便に血液が混ざる状態のことを指しますが、その血の色や混ざり方によって、原因が異なります。便に鮮やかな赤い血が付着している場合、大腸や直腸、肛門周辺からの出血が考えられます。一方で、黒っぽくタール状になった便は、胃や小腸といった上部消化管からの出血によるものです。消化液と混ざることで血液が黒く変色し、このような便の色になります。
血便が見られると飼い主としては不安になりますが、一時的なものであれば軽微な要因による可能性もあります。しかし、頻繁に血が混ざる場合や、下痢や嘔吐、食欲不振などの症状を伴う場合は、すぐに獣医師に相談することが必要です。原因を特定することで、適切な治療につなげることができます。
猫の血便の種類
猫の血便は、その色と状態によって、出血している場所や原因となる病気を推測する重要な手がかりとなります。血便は大きく分けて、「鮮血便」と「黒色便」の2種類があり、それぞれの特徴と原因を理解することで、愛猫の異変にいち早く気づき、適切な対応を取ることができます。
【鮮血便(赤い血が混じる便)】
便に赤い血が混ざるタイプの血便で、大腸や直腸、肛門周辺からの出血が原因となることが多いです。便の最後の部分に血が付着している場合や、粘液とともに血が見られる場合には、大腸炎や直腸の炎症、肛門周辺の傷などが疑われます。
【黒色便(タール状の便)】
消化管の上部で出血が起こった際に見られます。胃や小腸で出血した血液が消化液と混ざり、黒く変色して排出されるため、タール状の外観を持ちます。胃潰瘍や腫瘍、重度の感染症などが原因となることが多いため、黒色便を発見した場合は、特に早めの診察が推奨されます。
猫の血便の原因
猫の血便の原因は多岐にわたり、比較的軽度なものから、命に関わる重篤な疾患までさまざまです。軽度のものは一時的な腸の刺激やストレスが原因であることが多いですが、重度のものは慢性的な疾患や腫瘍が関与している可能性があります。血便の原因を正しく判断するためには、便の色や形状、頻度を観察し、適切な対応を取ることが重要です。
食事の変化
猫の消化器系は繊細で、急なフードの変更は腸内環境のバランスを崩し、一時的な炎症を引き起こすことがあります。特に、新しいフードに含まれる成分が猫の体に合わない場合や、食物アレルギーがある場合には、腸粘膜が刺激され出血することがあります。
症状としては、血便だけでなく、下痢や嘔吐を伴うこともあります。このような場合は、以前のフードに戻すか、獣医師に相談してアレルギー対応のフードを試すことが推奨されます。
ストレス
猫は環境の変化に敏感な動物であり、引越しや新しいペットの追加、騒音など、さまざまな要因でストレスを感じます。ストレスは自律神経のバランスを乱し、腸の蠕動運動を過剰にしたり、逆に停滞させたりすることで、腸粘膜を傷つけ、出血を引き起こすことがあります。
ストレスによる血便は、一時的なものであることが多いですが、ストレスの原因を取り除くことで症状は改善されます。猫が安心して過ごせる環境を整え、適度な遊びやスキンシップを取り、ストレスを軽減することが大切です。また、ストレスは血便だけでなく、さまざまな症状を引き起こすことがあります。例えば、食欲不振や隠れる行動が見られる場合もあります。
寄生虫
回虫や鉤虫などの寄生虫は、猫の腸内に寄生し、腸壁に噛み付いたり、腸粘膜を傷つけたりすることで出血を引き起こします。特に、子猫や免疫力の低下した猫、屋外で過ごす機会の多い猫は感染リスクが高くなります。寄生虫感染による血便は、少量の場合もあれば、大量の場合もあります。
また、下痢や嘔吐、体重減少、食欲不振などの症状を伴うこともあります。定期的な駆虫薬の投与や、便検査による寄生虫の有無の確認が重要です。なお、寄生虫の種類や感染状況によっては、体重減少や元気がなくなるといった全身症状が現れることもあります。
炎症性腸疾患(IBD)
炎症性腸疾患(IBD)は、腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる疾患で、原因は完全には解明されていませんが、免疫系の異常や遺伝的要因、腸内細菌のバランスの乱れなどが関与すると考えられています。
炎症が慢性化することで、腸粘膜が損傷し、血便や下痢、嘔吐などの消化器症状が長期にわたって続きます。これらの症状が慢性的に続くことで、体重減少が見られることもあります。
IBDの診断には、内視鏡検査や組織生検が必要となる場合があり、治療には食事療法や薬物療法が用いられます。
腫瘍
腸内に発生する腫瘍には、良性のポリープから悪性の癌までさまざまな種類があり、腫瘍が大きくなるにつれて、腸粘膜を傷つけたり、血管を圧迫したりすることで出血を引き起こすことがあります。
腫瘍の成長に伴い、食欲不振や体重減少、嘔吐などの症状が現れることもあります。特に高齢の猫では、消化器系の腫瘍のリスクが高まります。
腫瘍の種類や進行度によって、外科手術、化学療法、放射線療法などの治療法が選択されます。早期発見・早期治療が重要です。
感染症
細菌(サルモネラ、カンピロバクターなど)やウイルス(猫白血病ウイルス、猫コロナウイルスなど)が腸に感染すると、腸粘膜に炎症や潰瘍を引き起こし、血便や下痢、嘔吐などの症状が現れます。
感染症の種類や進行度によっては、発熱、脱水、元気消失といった全身性の症状を伴うことがあります。感染症の診断には、便検査や血液検査が必要となり、治療には抗生物質や抗ウイルス薬、輸液療法などが用いられます。
中毒
猫が誤って毒物や有害な植物を摂取すると、消化管に炎症や潰瘍が発生し、血便や嘔吐、下痢などの消化器症状、神経症状、呼吸困難などの重篤な症状が現れることがあります。
特に、ネズミ駆除剤に含まれるワルファリン、ユリ科の植物や食品(玉ねぎ、ニンニク、チョコレート、キシリトールなど)は猫にとって非常に危険です。
これらの症状は、摂取した毒物の種類や量によって異なります。少量でも命に関わる場合や、時間差で症状が出る場合もあります。
中毒の場合、緊急の処置が必要となるため、速やかに獣医師の診察を受ける必要があります。可能であれば、摂取した毒物の種類や量を獣医師に伝えられるようにしましょう。

猫の血便の診断と治療
愛猫に血便が見られた場合、まずは落ち着いて便の状態を観察し、写真やメモなどで記録しておきましょう。その後、速やかに動物病院を受診し、獣医師に便の状態やその他の症状を伝え、適切な診断と治療を受けることが重要です。獣医師は、問診、触診、血液検査、便検査、レントゲン検査、内視鏡検査などを行い、血便の原因を特定します。
治療法は原因によって異なります。感染症であれば抗生物質や駆虫薬、炎症性疾患であれば抗炎症薬が用いられます。腫瘍が原因の場合、外科的手術が必要となるケースもあります。また、食事療法や生活環境の改善も、治療の一環として行われることがあります。
猫の血便の予防
血便を予防するためには、日ごろのケアと注意が欠かせません。まず、定期的な健康診断とワクチン接種、寄生虫駆除を行い、感染症のリスクを軽減しましょう。バランスの取れた食事を与え、新しいフードに切り替える際は、少量ずつ混ぜて徐々に慣れさせることが重要です。
また、誤飲を防ぐために、小さな物や危険な物を猫の手の届かない場所に保管しましょう。ストレスは免疫力を低下させ消化器系のトラブルを引き起こす可能性があるため、愛猫が安心して過ごせる環境を整えることも大切です。
まとめ
血便は、軽度なものから重篤な病気までさまざまな原因で発生します。愛猫の健康を守るためには、便の状態を日々チェックし、異常があれば迅速に対処することが大切です。特に黒色便や鮮血便が繰り返し見られる場合は、自己判断せずに、すぐに動物病院で診察を受けるようにしましょう。適切なケアと予防策を講じることで、猫が健やかに過ごせる環境を整えましょう。