ペットは家族以上? アメリカと日本で異なる「ペット愛」のカタチ
ペットは私たちの生活に癒しと喜びをもたらしてくれる存在です。しかし、ペットに対する愛情や飼育方法には国や文化による違いがあります。特に、責任ある飼育や終生飼育の意識については、国ごとの価値観や社会的背景が大きな影響を与えていることがわかります。
今年10月に発表されたThe Harris Pollの調査「The State of Pets:Unpacking America’s Pet Preferences」は、アメリカにおけるペットの位置付けや飼い主の意識について興味深いデータを提供しています。この調査をきっかけに、アメリカと日本のペットに対する考え方や飼育の実態を比較し、どのように責任ある飼育や終生飼育が促進されるべきかを考えてみます。
アメリカにおける「ペット愛」
アメリカでは、ペットは単なる癒しの存在を超え、家族以上の価値を持つケースが多いとされています。The Harris Pollの調査でも、43%のアメリカ人が「子どもよりペットを好む」と回答しており、ペットが家庭生活の中心に据えられていることが明らかになりました。この傾向は、ミレニアル世代やZ世代で特に顕著です。また、調査では以下のような興味深いデータが示されています。
- 約70%のアメリカ人がペットを家族の一員と考えている
- 76%がペットの健康を自分の健康と同じくらい重要視
日本における「ペット愛」
一方、日本でもペットへの愛情の深さは年々高まっています。明確な統計はありませんが、アニコム損保の「家庭どうぶつ白書」には、ペットにかける年間支出など、ペットに関するさまざまな統計データが掲載されています。これらのデータは、ペットが単なる動物ではなく、家族の一員として迎えられる存在であることを示唆しています。
また、日本では少子高齢化や単身世帯の増加がペット人気の背景にあるとも言われています。ペットフード協会の「全国犬猫飼育実態調査」によると、ペットを飼う理由として「癒し」や「安らぎ」といった孤独感の軽減を挙げる人が多いことも特徴的です。
- 日本のペット飼育率は約28%
- 飼い主の約80%が「ペットが心の癒しになる」と回答
流通の違い
アメリカでは、ブリーダーと保護施設から迎えるのが主流となっています。動物保護団体の活動も盛んなためペットを迎える際に飼い主としての責任を重視する文化が根付いています。一方、日本ではペットショップでの購入が一般的であり、特に「かわいいから」という理由で衝動的に迎え入れるケースが目立ちます。
ペット愛のカタチが終生飼育に与える影響
文化や社会背景とした「ペット愛」の違いは、飼育に対する意識や行動に大きな影響を与えています。アメリカでは、ペットを迎える際にその責任をしっかりと理解しているケースが多く、計画的にペットとの生活を構築します。特に、保護施設から譲渡される際に行われる審査やカウンセリングが、責任意識を育む重要な役割を果たしています。また、ペットが家族の一員として大切にされるため、ライフスタイルの変化に応じて飼育を諦めるという選択肢が比較的少ないのが特徴です。
日本では、ペットを癒しやかわいさを求める対象として見る傾向が強いことから、生活の変化や期待とのギャップによる飼育放棄が増えるケースがあります。特に、コロナ禍でのペットブームにより、「ステイホームの癒し」としてペットを迎えたものの、コロナ禍終息後に手放す事例が増加しています。関連する調査では、「思っていたより手間がかかる」「ライフスタイルが変わった」などの理由で飼育を諦めるケースが多いとされています。さらに、ペットショップでの衝動買いがこうした問題を助長しています。手軽に購入できる環境が、飼い主の責任感を薄れさせる一因となっているのです。
終生飼育を支えるために
ペット愛のカタチは国や文化によって異なるため、終生飼育を促進するためには、文化や価値観に応じたアプローチが求められます。日本においては、まずペット業界の構造を変えることが重要です。その第一歩として、ペットショップでの陳列販売をなくし、ブリーダーから直接迎えるシステムや保護施設からの譲渡を積極的に推進することが必要です。
現在、日本ではペットショップで衝動的にペットを購入することが一般的ですが、これは動物福祉の観点からも望ましくありません。多くの場合、購入前に飼育に伴う責任やペットの生活に必要な知識を深く理解させるような機会が欠けており、衝動買いを防ぐカウンセリングが十分に行われていないのが現実です。ペットオークションの開催やペットショップでの販売を禁止することで、無責任な繁殖屋(いわゆる悪徳ブリーダー)を排除し、健全なブリーダーのみが残ることが期待されます。
また、保護施設の活動がさらに活発化すれば、施設間での協力体制が強化され、より多くのペットが新しい家族を見つけることができるようになるでしょう。日本の保護施設は個人や小規模の施設が独自に活動していることが多いため、施設同士の連携が不足しているのが現状です。施設間で情報やリソースを共有し、地域や全国規模でのネットワークを築くことができれば、より効率的に保護・譲渡活動が広がると考えられます。
ペットは単なる癒しの存在ではなく、私たちに深い絆をもたらす大切なパートナーです。その愛し方が国や文化によって異なるのは自然なことですが、共通して言えることは、「最後まで責任を持って飼うこと」の重要性です。ペットとの共生をより豊かで持続可能なものにするために、私たち一人ひとりがその責任を再認識し、実行していく必要があるのではないでしょうか。