【編集興記】犬にビーガン食は本当にメリットがある? 最新研究が示す健康への新たな選択肢
近年、ビーガン食が犬の健康に与える影響についての議論が活発化しています。特に注目されているのが、英国ウィンチェスター大学のアンドリュー・ナイト教授が主導した研究です。
この研究では、2,500匹以上の犬を対象に、ビーガン食、従来の肉ベースの食事、生肉食の3つの食事タイプを比較し、犬の健康状態にどのような違いがあるかを評価しました。
研究結果は、ビーガン食を与えられた犬がほかの食事タイプの犬と比較して、健康状態がもっとも良好であることを示しています。
具体的には、ビーガン食を食べている犬が一般的な健康問題を抱える割合は36%で、肉ベースの従来の食事を与えられた犬(49%)や生肉食の犬(43%)よりも低いことが明らかになりました。
さらに、ビーガン食が皮膚の健康や毛艶の向上、体重管理によい影響を与えることも報告されています。これは、肉製品に含まれる添加物やホルモンがアレルギー反応や皮膚の問題を引き起こすリスクを軽減する可能性があるためです。
一方で、ビーガン食は犬にとって安全で栄養的に満足できる選択肢であるとされていますが、その導入には慎重さが求められます。
犬は、タウリンやビタミンB12といった栄養素を動物性食品から得ることが多く、ビーガン食ではこれらが不足するリスクがあります。
これらの栄養素が不足すると、心臓病や神経系の問題を引き起こす可能性があるため、ビーガン食を導入する際には、サプリメントを利用したり、適切に栄養が調整されたフードを選ぶことが重要です。
こうした研究の結果を受け、英国獣医師会(BVA)もこれまで反対していたビーガン食に対する立場を変更し、適切にバランスの取れたビーガン食が犬の健康によい影響を与える可能性を認めました。
この背景には、ビーガン食が環境にもたらすメリットへの関心の高まりがあります。肉の生産には大量の資源が必要で、温室効果ガスの排出にもつながっていますが、植物ベースの食事はそれに比べて環境負荷が低いとされているからです。
例えば、ビーガン食に切り替えることで、家畜に比べて作物の栽培に必要な資源の使用量が少なく、温室効果ガスの排出量も大幅に削減できるとされています。
しかし、BVAの立場変更には一部で利益相反の懸念も指摘されています。BVAと提携する企業のひとつであるマースペットケアは、肉ベースのペットフードに多額の投資を行っており、これがビーガン食に対する見解の変化に影響を与えている可能性があるという批判も見られます。
全体として、ビーガン食は犬にとって健康的で持続可能な選択肢となる可能性が高い一方で、すべての犬に適しているわけではありません。
ビーガン食への移行を考える際には、犬の個々の健康状態や必要な栄養素を慎重に考慮する必要があります。動物栄養学の専門家と相談し、栄養バランスを保つことが大切です。
環境面でのメリットだけでなく、愛犬の健康にも十分に配慮したうえで、ビーガン食を選択することが求められます。