“大谷の犬”注目で、ブリーダーが抱く「強い懸念」 ~人気犬種になったがゆえに不幸な道を辿る犬も
このコーナーでは、注目ニュースに対する編集部や識者のコメントを紹介します。
大谷翔平選手がアメリカンリーグのMVPに選ばれ、満票で輝いた愛犬のコーイケルホンディエと喜びを分かち合った動画が公開され、「可愛すぎる」「犬に悶絶」「ハイタッチすてき」などたくさんのコメントがあがりました。同時に「大谷の犬」がX(旧ツイッター)で急上昇ワードとなり、瞬く間にトレンド入りしました。
微笑ましい動画は誰もが癒やされましたが、同時に「ブーム」を危惧する声も多くあります。過去には、消費者金融会社のCMに起用されたチワワがブームとなりました。また、マンガ『動物のお医者さん』でシベリアン・ハスキーブームが起こりました。
海外でもアメリカのテレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』でシベリアン・ハスキーブームが起こり、シーズン1がはじまった2011年から飼えなくなってシェルターに持ち込んだり、捨てられたりした犬が増加したそうです。
また、昨今は有名人が飼っているということで同じ犬種を求めるファンも多いようです。同じものを身に着けたいというファン心理はあるものの、犬は服やアクセサリーではありません。私たちと同じ生き物です。食べたり、遊んだり、眠ったりする必要があるのです。
コロナ禍で癒やしを求めてペットを迎えた新しい飼い主が、日常が戻ってきて飼えなくなったり、想像と違ったということで手放すケースが増えました。これも安易に迎えた反動でしょう。
こういったニーズは、サプライチェーンの上流にも影響を与えます。この記事で指摘しているように、販売目的の繁殖業者が増えることが危惧されます。こうした「悪徳ブリーダー」は、動物を商品=モノとしか考えていません。そこに愛情もなければ、道徳観もないのです。あるのは、金儲けだけです。
当然、そこには「健全なブリーダー」との大きなギャップが生まれます。健全なブリーダーは、繁殖する動物を心から愛し、繁殖する犬種や猫種について学び、彼らが健康で幸せに暮らせるような環境を整えます。
当然、親犬や親猫の遺伝子疾患をしっかり検査します。そして、クリア(遺伝子疾患の原因遺伝子を持っていない)な両親だけで繁殖します。遺伝子病を削減させるためには、アフェクテッド(遺伝子疾患の原因遺伝子を2つ持っている)だけでなく、キャリア(遺伝子疾患の原因遺伝子を1つ持っている)であってもブリードに入れないことが重要なのです。
また、「健全なブリーダー」は特定の犬種や猫種を愛しているので、繁殖するのも1-2種ほどに限られます。売れそうだからとか、人気が出そうだからといって犬種や猫種を増やしたりすることはありません。ブームとは別のところにいるのです。
現在の法律=動物愛護管理法では、悪徳ブリーダーを根絶することはできません。数値規制で飼育頭数を制限されていますが、従業員がいれば頭数はいくらでも増やすことができます。従業員に動物に対する愛情がなくても、知識がなくてもいいのです。
2021に国民生活センターが「ブリーダーからのペット購入トラブルについての注意喚起」を行いました。この場合のブリーダーは、まさに悪徳ブリーダーといえます。こうした悪徳ブリーダーを根絶するためには、私たち飼い主が安易に迎えないことが最も効果的なのです。
彼らはニーズがあるから繁殖しているのです。ですので、ニーズがなければ自然と淘汰されるのです。ペットを迎えるときには、本当に終生にわたって一緒に生活できるのか、そして迎えたい犬種はどういった特徴を持ち、自分の生活スタイルにあっているのかを、事前にしっかり考えるようにすることが大切です。
悪徳ブリーダーを見分けるのは用意ではありません。しかし、最低限できることはあります。ペトハピでは以下のような確認を推奨しています。
・犬舎や猫舎の飼育環境を見学できるか
・親犬や親猫を確認できるか
・1~2種程度を繁殖する専門ブリーダーであるか
・ショーに参加しているか
・世界基準の血統書を発行できるか
・犬や猫が生活している環境を確認
・犬や猫の健康状態を確認
・親犬や親猫を確認し、遺伝子検査や健康診断の結果も確認
・犬種や猫種のスタンダードを重視しているか質問
・飼育方法や気になることを質問
・契約書の内容を確認
・信頼できる人かどうかを確認
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