【猫飼いTIPS】猫の痒みの理由とケア・治療
「そう痒症」は、発疹や湿疹などの炎症は見られないのに痒みを生じる症状です。動物病院でもっとも一般的な症状のひとつです。犬も猫も、皮膚病の大部分は痒みがあります。しかし、猫の痒みに対する治療の選択肢は、犬よりもやや少ないのが残念なところです。
治療の目的は、根本的な原因を取り除くことです。猫の皮膚のかゆみは、かゆみの主な原因を特定すれば、ほとんどのケースでうまく対処でき、治療後はずっと快適に過ごせるようになります。
今回は、猫が痒がる理由とその対処法についてのお話です。
猫の皮膚のかゆみの原因とは
猫の皮膚のかゆみの原因はさまざまですが、大きく3つに分けることができます。
▸感染症
▸アレルギー(炎症性)
▸その他
感染症は細菌や真菌の感染もありますが、寄生虫によるものが多いです。
アレルギーの原因は通常、炎症性です。猫がアレルゲンを摂取したり、接触することで、免疫システムが過剰に反応し、皮膚の炎症や痒みが生じます。
そのほかにも、遺伝性疾患や自己免疫疾患、がんなど、広範囲かつ多岐にわたるものが猫の皮膚に痒みを生じさせる可能性があります。
猫の痒みを引き起こす感染症
猫の皮膚が細菌や真菌、寄生虫に感染すると痒みが生じます。
真菌症(皮膚糸状菌症)
猫のそう痒症のもっとも一般的な感染性のひとつで、真菌(カビ)による感染症です。皮膚の場合は白癬菌(はくせんきん)によって起こります。人に感染する可能性があるため、飼い主も培養検査やPCR検査といった最新の検査方法で検査することが必要になることもあります。
寄生虫感染症
一般的には、寄生虫感染症が猫の痒みの原因になることがあります。皮膚に寄生するものは外部寄生虫と呼ばれ、ノミ、ダニ、マダニなどが含まれます。
猫は室内飼いが多いため、猫は寄生虫感染症にかからないという誤った認識をしている飼い主が多いため、ノミ・ダニ予防薬の投与は犬よりはるかに少ないのが現状です。
痒みのある室内猫であっても、痒がる猫の多くはノミが寄生しているのです。体の後ろ半分、特に尻尾の付け根付近を痒がる猫は、ノミが寄生している典型的なケースです。さらに、ニキビダニ(毛包虫)などが原因である可能性もあります。
アレルギーによる痒み
さまざまな種類のアレルギーが炎症を引き起こし、痒みを引き起こす可能性があります。猫のかゆみの原因となるアレルギーは次のとおりです。
▸食物アレルギー
▸環境アレルギー
▸ノミ刺咬性過敏症
まれにですが、接触性アレルギーによっても炎症性の痒みが引き起こされることもあります。
食物アレルギー
猫の場合、食物アレルギーは通常、動物性タンパク質が原因で、穀物アレルギーは非常にまれです。愛猫にグレインフリーのフードを与えることによって、愛猫の痒みを軽減できると考えるのは誤解です。
食物アレルギーが猫のかゆみの原因となっているかどうかを評価するには、食物アレルギー検査が一般的です。抗体をチェックする「IgE検査」、タンパク源の反応を見る「リンパ球反応検査」などがあります。気になる場合は、獣医に相談してみましょう。
環境アレルギー
環境アレルギーは、猫が吸い込んだアレルゲンによって引き起こされ、アトピーとして知られるアレルギー性皮膚炎を発症します。
このアレルギーは、季節性や地域性などを要因とする考えがありますが、確定診断にはアレルギーの皮内テストが必要です。アレルギーの血液検査は手軽に行えますが、皮内テストに比べると信頼性は低くなります。
猫の皮内テストは人と同様に、アレルギーの原因として疑われる物質(アレルゲン)を少量ずつ注射し、虫刺されのように腫れるかなど皮膚の反応を目視で確認する検査です。
埃や花粉などの環境アレルゲンを避けることはほぼ不可能であるため、アレルギー検査は飼い主が減感作療法(アレルギー注射)を希望する場合に最も有用です。
ほこりや花粉などの環境アレルゲンを避けることはほぼ不可能であるため、アレルギー検査は飼い主が減感作療法を希望する場合にはもっとも役立ちます。
ノミ刺咬性過敏症
ノミ咬傷過敏症はノミアレルギー性皮膚炎(FAD)としても知られ、犬・猫ともに皮膚疾患の最大の原因となっています。
ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミの唾液に対するアレルギーで、わずかな数のノミに刺されただけでも過剰な免疫反応が起こり、強い痒みが生じます。猫の後半身の痒みは典型的な臨床症状です。
わずかなノミでこれほどまでの痒みを引き起こすのですから、ノミを100%駆除することが目標になります。また、蚊に刺された場合などでも、同様の痒みを引き起こすことがありますが、これは軽度なものです。
接触性アレルギー
まれに、猫がアレルゲンに接触した際に痒みを引き起こすことがあります。
猫砂に反応することはよくある例ですが、特定の布地、染料、洗浄剤、プラスチック、植物なども接触性アレルギーを引き起こすことがあります。
環境アレルギーと異なり、接触アレルギーは原因物質が特定できれば簡単に回避できるため、長期的な治療としては、動物を直接治療するのではなく、アレルゲンを除去することに重点を置くことが一般的です。
猫の皮膚の痒みを抑えるには
自分の薬をペットに投与することにはつねに注意する必要があります。 かゆみのある猫を自宅で治療する前に、獣医師に相談してください。
お風呂(シャワー)
家庭で猫の痒みを抑えるには、まずお風呂に入るのが一番安全でしょう。温水は、フケ、花粉やほこりなどの環境アレルゲン、さらには感染症の原因となったり直接的な刺激を引き起こしたりする可能性のある皮膚上のゴミを洗い流して、皮膚を清潔にしてくれます。
ただし、人間用のシャンプーは使用してはいけません。猫専用のシャンプーは、皮膚に潤いを与え、痒みを軽減します。コロイドオートミールやフィトスフィンゴシンが配合されている製品は、痒みを抑え、皮膚のバリア機能を守るので効果が期待できます。エリザベスカラー
エリザベスカラーは、猫が患部の皮膚を舐めるのを防ぐことができます。過剰に舐めると、皮膚の刺激や炎症が強くなり、痒みが悪化します。舐めないようにすることで、痒みを抑えることができます。
根本的な解決にはなりませんが、痒みに気づいてから動物病院を受診するまでのに痒みを悪化させないための時間稼ぎになります。
抗ヒスタミン薬
猫の痒みに抗ヒスタミン薬が効果的だと考える飼い主は多いと思います。しかし、猫の炎症性メディエーターは人間のものとは異なるので、抗ヒスタミン薬が人間と同じような効果は望めません。
ただし、慢性的なケースでは、抗ヒスタミン薬はある程度の効果があるともされています。単一の抗ヒスタミン薬でなく複数の抗ヒスタミン薬を試すことで、痒みを和らげる抗ヒスタミン薬を特定できる可能性が高まります。
しかし、安全性を考えると、飼い主が自分で使っている薬や簡単に入手できる市販薬を使うのではなく、獣医に相談することをオススメします。
ステロイド外用薬
ステロイドを含むクリームの塗布は、副作用や状態を悪化させる可能性があるため推奨されていません。免疫反応を低下させると、感染症が悪化することがよくあります。
さらに、猫はつねに毛づくろいをしているため、皮膚に塗布した薬を猫が摂取してしまう可能性があります。自己判断せずに、獣医に確認しましょう。
痒みを防ぐ方法
完全室内飼育であっても、ノミ・マダニの予防薬定期的に使用するこは、痒みを伴う皮膚病のリスクを最小限に抑えるためのもっとも重要な戦略といえます。そのうえで、予防策として、痒みを抑えること、あるいは皮膚病の悪化を防ぐことを目的とします。
サプリメント
セイヨウサクラソウとフィッシュオイルは、それ自体ではかゆみを抑えることはできませんが、すでに猫に与えられているほかの治療法と相乗効果を発揮すると期待されています。これらのサプリメントは安全で、広く入手可能であるため、試すことができます。ただし、現時点では有効性を示すものではありません。
プロバイオティクス
乳酸菌などのプロバイオティクスを投与することで、皮膚の痒みを軽減するという研究が出てきています。ただし、個体差もあり万能薬ではありません。
まとめ
猫が痒がる原因はさまざまです。もし、あなたの愛猫の痒みが、上記の感染症やアレルギーによるものでない場合、その原因はかなり多岐にわたります。
まずはかかりつけの獣医師に相談しましょう。皮膚専門医を紹介されるかもしれません。獣医師が猫の皮膚のかゆみの根本的な原因を突き止めることができれば、痒みを最小限に抑え愛猫のQOLを向上させることができます。
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