【犬飼いTIPS】犬の帰巣本能と万が一の迷子時に再会できる可能性を高めるには

散歩中に何かの拍子に飼い主と離れてしまったり、旅先で迷子になったりした犬が、どうやって帰り道を見つけることができるのでしょうか。

これまでいろいろな実験や研究が行われ、驚きのエピソードがたくさん明らかになっています。今回は犬の帰巣本能についてのお話です。

犬はどのようにして経路探索するの?

犬は、どのようにして目的地までの経路を探索するのでしょうか。人間のように方向感覚に優れているのでしょうか? 昔の船乗りのように星を見たり、コンパスを内蔵しているのでしょうか? 地球の磁場(地磁気)を感知しているのでしょうか?

犬の帰巣能力に関する本格的な研究は多くありませんが、犬の五感のうち、視覚と嗅覚の2つを利用している可能性が高いと推測されています。

犬の嗅覚

人間の嗅覚に比べ、犬の嗅覚はより高度に発達しています。個体差はありますが、嗅覚ニューロン(嗅覚受容神経)の数は人間が4,000万個なのに対し、犬は約2億2,000万~20億個と、圧倒的に多いのです。

愛犬と近所を散歩するたびに、彼らは自分の家、周辺の景色や音、ニオイに慣れていきます。そして、愛犬が一歩を踏み出すたびに、肉球から独特のニオイを残していきます。このニオイが「自分はここにいた」という化学的な目印になるのです。

犬は何度も同じ道を通ることで、ニオイを更新していきます。おそらく人やほかの動物が残したニオイも拾っていることでしょう。そしてそれらが、自分の方向性を決めるのに役立っているのです。

犬の視力

散歩のときに愛犬がずっと鼻を地面につけて歩いているわけではないことに気づくでしょう。愛犬の敏感な鼻はたくさんの魅力的なニオイを拾いますが、ときどき顔を上げて周りを見渡します。これは「視覚定位」と考えられます。視覚定位とは、動物が視覚情報に基づき、関心のある方向に眼や頭、身体を向ける行動です。

この行動は、犬が視覚情報によって自分の周囲のマップをつくっているのです。研究によると、オオカミは視覚的な目印を使って自分の縄張り(テリトリー)を移動することがわかっています。また、目的地(ゴール)へ行くために、近道をするオオカミがいることがわかっています。

犬の視力は人間の4〜5割程度です。人間の一般的な視力を1.0だとすると、犬の場合は0.2前後とされています。つまり、正常な視力を持つ人が約30m離れたところから見ることができるものを、犬は5~6mからしか見えないことになります。

また、犬は人間よりも色が見ることができません。黄色と青を見ることはできますが、赤と緑を認識することができません。それでも犬は視覚的な目印を識別し、それを記憶することができます。

ちょっと遠出したり、新しいルートを散歩したりすると、自分の家に近づくにつれて元気になります。目を輝かせるかもしれません。リードを引っ張って「早く家に帰りたいよ!」という意思表示をしています。

何を手がかりにしているのでしょうか? 自分の家の形状や周辺の風景を記憶しているのでしょうか。私たちや彼の残したニオイを認識しているのでしょうか。きっとその両方なのでしょう。

愛犬が自分の家に戻れるように

犬には帰巣本能がありますが、実際には、毎年たくさんの犬が迷子になっています。環境省の「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によると、2021年度に引取られた所有者不明の犬は21,238頭です。そのうち、返還された数は8,421頭です。返還された=迷子犬とすると、じつに年間で8,421頭が迷子になっているといえます。

ほかの人に保護されて新しい家族になるケースもあります。しかし、帰る途中で不慮の事故に遭って命を落とす犬もいるでしょう。

愛犬が迷子になったとき、再会できる可能性が高いのはマイクロチップです。首輪や鑑札は、たとえ装着していても外れてしまう危険があるのです。

まとめ

犬には帰巣本能があります。驚くべきその本能は、たくさんの逸話があります。例えば、米国では4,800kmも移動して飼い主の元に戻ったボビー。

しかし、無事に帰れない犬がいるのも事実です。飼い主として、迷子にさせないことが大切です。そのためには、散歩の前に首輪やハーネス、リードなどが劣化していないか確認するようにしましょう。

また、外出先では犬だけにすることは避けましょう。飼い主が買い物をしている間、犬が屋外のポールなどに結ばれている光景を目にします。外れたり、連れ去られる危険性があります。

また、動物愛護管理法が改正され、犬猫等販売業者が取り扱う犬猫へのマイクロチップの装着と情報登録が義務づけられました。しかし、譲渡や保護、すでに飼育している人は努力義務です。

マイクロチップは、散歩や旅行での迷子だけでなく、災害時にも有効です。日本は災害の多い国です。万が一の際に再会の可能性を高めます。愛犬を守るという意味でも検討しましょう。