【猫飼いTIPS】愛猫が変形性関節症かもしれない ~QOL向上に必要なこと

生活環境やフード改善などにより猫の寿命は長くなり、シニアになると変形性関節症(OA)のような慢性疾患にかかることが多くなります。

変形性関節症は痛みを伴う関節疾患です。治療法は確立されていませんが、痛みを和らげ、病気の進行を遅らせるための治療法はあります。

今回は、猫の変形性関節症の徴候と飼い主としてできることについて考えます。

猫の変形性関節症とは

猫の変形性関節症は、老化によってクッションの役割のある関節軟骨がすり減ることによって起こります。このクッションがないと、隣接する骨同士がこすれ合ってしまい、痛みが生じるのです。

この病気は、猫の脊椎や股関節、膝関節に足首、肘関節にもっとも多く発症します。猫の変形性関節症の原因は解明されていませんが、米国獣医外科学会はケガや関節の形態異常、日常的な磨耗などが原因である可能性があるとしています。

近年では、6歳以上の猫の6割が少なくともひとつの関節に変形性関節症を罹患しているといわれています。そして、病気の有病率は年齢とともに増加する傾向にあります。

残念ながら、変形性関節症の徴候はしばしば見過ごされます。動物が高齢になると動きが鈍くなるのは自然なことという思い込みが原因です。

猫の変形性関節症の徴候

猫は痛みを隠します。見ただけでわかるほどの症状を見せることはありません。それは、野生の本能の名残でもあります。

しかし、それは見分けることが不可能ということではありません。痛みで足を引きずったり、鳴いて痛みをアピールすることはありませんが、猫の行動から、変形性関節症の徴候を確認することは可能です。次のような行動をチェックしましょう。

 ・家具やキャットタワーなどに飛び乗れない
 ・家具やキャットタワーなどから飛び降りれない
 ・階段の上り下りができない(または困難)
 ・おもちゃに反応できない(動きが鈍い)
 ・走れない(スピードが遅い)
 ・トイレが使えなくなった
 ・毛づくろいが減少した
 ・怒りっぽくなった


このような行動の変化は、単に老化と考えられるケースが多いです。また、特に動物病院では痛みを意識的に隠すでしょう。ですので、自宅での観察は猫の関節炎を診断するための重要なのです。

猫の変形性関節症の治療

猫の変形性関節症は治療法が確立されていません。だからといって希望がないわけではありません。治療の目標は根治ではなく、猫の快適さを向上させることと、病気の進行を遅らせることです。通常は次の3つの要素が盛り込んだ治療がなされます。

痛みを和らげる

もっとも重要なのは痛みを和らげることです。これまで痛みの緩和には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使用されてきましたが、最近では、日本でもモノクローナル抗体製剤「ソレンシア」が動物病院で処方されるようになりました。

もちろん。痛みの緩和は医薬品に限定されるわけではありません。鍼灸治療やレーザー治療、マッサージ治療、に学療法、幹細胞治療など、さまざまな選択肢があります。また、オメガ3脂肪酸やグルコサミン、コンドロイチンなど、関節の健康を促進するサプリメントもオススメです。

体重管理

猫は、痛みがあると運動したがりません。運動量が減ると体重をコントロールすることも難しくなります。体重の増加は関節に負担をかけるため、健康的な体重を維持することは、病気の進行を遅らせるための重要な要素です。

動物栄養学を専門とする獣医師、アメリカ獣医栄養学会(ACVN)やヨーロッパ獣医比較栄養学会(ECVCN)の認定を受けた獣医師であれば、愛猫の目標体重・フードの種類・量などについて的確なアドバイスができるでしょう。また、療法食には、体重管理と関節サポートの両方を目的としたものもあります。

適度な運動

関節を健康に保つためには、定期的な運動が重要です。上下運動ができるようなタワーやステップ、探検できるようなトンネル、キャットホイールなども販売されています。

激しい動きを伴うような運動や無理な運動は、かえって関節に負荷をかけることになるので注意しましょう。

猫が生活する環境を見直す

変形性関節症の痛みを抱えている場合、猫の快適性を高めるために生活環境を見直すことも大切です。まず、寛げるベッドやマットなどを用意してあげましょう。暖かい毛布など寝具もあるとよいでしょう。

次に、フードボウルやウォーターボウルはテーブルなど高い場所ではなく、床におきましょう。また、屈まなくてもいいように、適度な高さのものを選びましょう。

トイレは、猫が足を高く上げなくても入れるように、入り口が低くなっているものを選ぶとよいでしょう。いままでのトイレを使わなくなった場合は、入るのが苦痛になった可能性もあります。

まとめ

近年、猫の寿命が延びています。しかし、猫が年を取れば取るほど、少なくともひとつの関節に関節炎がある可能性が高くなります。

変形性関節症の治療法は確立されていませんが、痛みを和らげ、病気の進行を遅らせることは可能です。それは、異常を早期に発見することです。

あなたは愛猫の行動の専門家と言えます。なぜなら、彼らが家でどのように行動し、どのように変化したかという情報を誰よりも得ることができるからです。日常と違うことを目にしたら、たとえそれが些細なことであっても見逃さないでください。それらの情報は、獣医が猫の変形性関節症を診断するうえで重要な役割を果たします。

猫は痛みを隠す習性があります。しかし、彼らも痛みを感じるのです。私たちは猫の言葉を学ばなければならないのです。猫の生活の質を向上させるために、飼い主ができることはたくさんあります。