腸内で繰り広げられる“絶対に負けられない戦い”

私たちの腸内に、もともと住んでいるもっとも重要なエンジェル菌(有用な働きをする腸内細菌)は「ビフィズス菌」と「酪酸菌」でしょう。では、どうしたらエンジェル菌が増えるのか?

腸に住む細菌の好物はなんといってもブドウ糖。でも、ブドウ糖は小腸で吸収されるため、大腸で待っていても残念ながら届きません。オリゴ糖のひとつである「ケストース」や「ラフィノース」は、大腸で善玉菌だけが持っている酵素でバラバラにされ、分解されたブドウ糖が腸に住む細菌たちの餌になります。 イヌリンのようにたくさんつながっていると腸管細菌的にも分解作業が大変だから、オリゴ糖がもっとも効率的というわけです。しかも、善玉菌だけがオリゴ糖を分解する酵素を持っています。つまり、善玉菌はオリゴ糖や食物繊維を分解する酵素を持っているけど、悪玉菌は持っていないから食べたくても食べられない。

ビフィズス菌は、食物繊維やオリゴ糖をモリモリ食べて増えるだけじゃなく、ドバッと分解酵素を出してデンプンを分解して、オリゴ糖にしたあとにバクバク食べる。特に冷飯など消化酵素で分解されにくくなった難消化性デンプン(レジスタントスターチ)は、大腸で待っているビフィズス菌を増やすことができます。武器(分解酵素)を持っているビフィズス菌にとってオリゴ糖の分解など朝飯前で、ほかの腸内細菌と競争しながら効率よく食物繊維やオリゴ糖を分解代謝しています。“絶対に負けられない戦い”がここにもあるのです。

食物繊維を分解できるのは、ビフィズス菌だけでなく痩せ菌「バクテロイデス」もそうです。一方で、「酪酸菌」を増やすのに有効なのは、海藻や果物、コンニャクなどに含まれる水溶性食物繊維。さらに、難消化性デンプンもエサになります。プロ野球にセ・リーグとパ・リーグがあるように食物繊維は水に溶けるもの(水溶性食物繊維)と、水に溶けないもの(不溶性食物繊維)があります。水溶性食物繊維は、一般にネバネバしてヌルヌルした成分で、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、グアガム、グルコマンナン、コンドロイチン、ポリデキストロースなどがあります。不溶性食物繊維には、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、イヌリン、アガロース、アガロペクチン、キチン、コラーゲンなどがあります。

結局のところ、食物繊維やオリゴ糖が豊富な食事をバランスよく取ることで腸内細菌叢を健全に維持できます。オリゴ糖と食物繊維のどちらか効率よく腸内細菌に食べられるかといえば、ズバリ答えはオリゴ糖となります。実際に、食べ過ぎたニラはうんちで出るけど、オリゴ糖がうんちで出ることはありません。

あなたが食べたいものだけを食べるのではなく、腸内細菌を元気にする気持ちで彼らが喜ぶ食事を考えてみてはいかがでしょう。