【みんなで防災:第8回】災害時における「同行避難」の必要性

同行避難とは、「災害の発生時に、飼い主が飼養しているペットを同行し、指定緊急避難場所等まで避難すること。ペットと共に移動を伴う避難行動をすることを指し、避難所等において飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではない」と、環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」で定義されています。

東日本大震災ではペットと一緒に避難することが周知されていなかったために、飼い主とペットが離れ離れになってしまい、その結果多くのペットが放浪することになってしまいました。今でも飼い主のもとへ戻れないペットがいます。

これまでの大規模災害の経験から、飼い主とペットが同行避難することが合理的であるとの考えが広がっています。今回は同行避難についてのお話です。

なぜ同行避難が必要なのか

過去の災害においては、犬や猫などのペットが飼い主と離れ離れになってしまう事例が多数発生しました。このような動物を保護するには多大な労力と時間を要するだけでなく、その間にペットが負傷し、衰弱・死亡するおそれもあります。

また、避妊・去勢手術がされていない場合、繁殖による頭数の増加で、住民の安全や公衆衛生上の環境が悪化することも懸念されます。東日本大震災では同行避難できないことでやむを得ず放された犬や猫が繁殖・増加した事例も発生しました。そのような状況は、災害から復興を妨げる一因となるものです。

ペットの同行避難は動物愛護の観点のみならず、飼い主である被災者の心のケアという観点からも重要です。また、放浪動物による人への危害防止や生活環境保全の観点からも必要な措置なのです。

ペットの同行避難とは「ペットを救うための行動」と捉えている飼い主が多いかもしれません。もちろん、家族同然のペットを救う目的もあります。しかし、過去の震災ではいったん避難した飼い主が、ペットを避難させるために自宅に戻った際に災害に巻き込まれた事例がありました。

また、ペットへの愛着から離れて生活することができず、車中での生活を選び、エコノミー症候群で命を落としたという事例もありました。

同行避難を推進することは、飼い主がペットとともに躊躇なく避難できる体制を整えることであり、飼い主の安全を確保すること、つまりすべての住民の安全を確保することが本来の目的となります。「災害が発生したら、迷わず大切なペットと避難する」が原則です。

同行避難後の対応

同行避難は前述したように、避難所での人とペットの同居を意味するものではありません。そのため、避難後の生活については下記のようないくつかの選択肢を想定しておくことが大切です。

避難所で生活する

避難所ではさまざまな人が集まり、共同生活を送ることになります。動物と暮らすことが苦手な人やアレルギーを持つ人もいるので、そのことを強く意識しながら過ごす必要があります。

過去の災害時にはペットと過ごすことにより心の支えや安らぎになったという声がある一方で、動物の鳴き声やニオイ、被毛の飛び散り、糞尿処理、また咬傷事故などのトラブルも多々発生しています。

原則として避難所での飼育管理は、飼い主の責任において自ら行う必要があります。衛生的な管理と周りの人に配慮して決められたルールをしっかりと守ることが大切です。飼い主同士で飼育エリアの確保や清掃を行えるとよいでしょう。

また、ペットは今までとは違う環境などによるストレスから体調を崩しやすくなります。飼い主はペットの体調に気を配り、できる限り飼育環境を整え、不安を取り除くように努める必要があります。

自宅で生活する

自宅が安全であれば、飼い主はもちろんペットも住み慣れた自宅にいるほうが安心です。しかし、情報や救援物資などは避難所に届くので、必要であれば避難所に取りに行く必要があります。

飼い主は無理でも、ペットだけなら住める状態であれば、飼い主が避難所から世話に通うという選択もあります。ただし、2次被害の可能性をしっかりと見極めることが大切です。もし少しでも危険があれば、同行避難をしましょう。

車内で生活する

クルマを所有していて動かせる場合は、安全な場所にクルマを停めて、そのなかで生活する選択肢もあります。周囲に気を遣うことなく過ごせますが、車内は狭い空間であるため、エコノミークラス症候群になってしまう可能性があります。そうならないために定期的に車外へ出て体を動かしたり、水分をこまめに摂取するようにしましょう。

また、季節によっては車内温度がかなり上昇します。飼い主もペットも熱中症にならないように、温度や湿度を確認するなどの注意が必要です。窓を開けたり、ときどきエンジンをかけてエアコンを作動させるなどして調節をしましょう。

ぺットを施設に預ける

避難所に入れない場合や飼い主の事情、ペットの健康状態などにより、自治体の収容施設、動物病院、動物愛護団体などに預かってもらうという選択肢もあります。

自宅の全壊、半壊などでは家の再建まで長期間預かってもらうことや、家の片づけ、仕事などで数日あるいは数時間預かってもらうこともあるでしょう。預ける際には条件や期間、費用などを必ず確認し、契約書や誓約書などを交わしておくと安心です。

まとめ

これまでの大規模災害の経験から、飼い主とペットが同行避難することが合理的であり、環境省を中心に各自治体が同行避難の必要性をさまざまなところで推奨しています。

一度はぐれてしまうと、再会は困難。必ずペットと一緒に避難しましょう。同行避難のためには、飼い主が日ごろからさまざまな状況を想定し、心構えや準備を具体的にしておく必要があります。同行避難後についても、しっかりと考えておきましょう。

第9回は「災害発生時の行動」をテーマに話を進めます。