【猫飼いTIPS】愛猫にも新型コロナウイルスワクチンの接種は必要?

先日、ロシアでペットへの新型コロナウイルスワクチン接種が始まったというニュースがありました。今年はじめには、ニューヨークポスト紙でもペットにもコロナワクチンの必要性を示唆したことにより、世界中の飼い主がペットにワクチンを接種すべきか、ワクチンは安全なのかを考えはじめています。

どんなワクチンなの?

ロシアは3月31日に世界初となるペット用コロナウイルスワクチン承認したと発表しました。「Carnivac-Cov」と呼ばれるこのワクチンは、犬や猫、ミンク、そのほかの動物を対象に臨床試験が行われました。開発者によると、すべての動物にコロナウイルスの抗体ができたことから、このワクチンは無害で免疫原性が高いと結論づけています。

ロシア連邦動植物検疫局(Rosselkhoznadzor)によると、動物用のワクチンは、より感染力が強い変異株に対する保険として必要だったとしています。さらに、ウイルスが動物から人間に感染したり、最悪の場合、動物のなかで突然変異して、より毒性の強い状態で人間に感染した場合に備えた公衆衛生の手段という側面もあるようです。

ロシアでの接種の現状

すでに、モスクワやリャザンなどいくつかの地域でワクチン接種が開始され、順次ほかの地域にも拡大されるようです。ペットへの接種は、ブリーダー、アーリーアダプター、頻繁に旅行する飼い主、さらには放し飼いしている飼い主が特に興味を持っているとのこと。ワクチン2回分の価格は15%ほど値下げされ500ルーブル(約750円)、免疫の持続期間は6カ月とされています。

世界小動物獣医師会(WSAVA)の見解

WSAVAでは、新型コロナウイルスに対する犬や猫のワクチン接種について、いくつかの事実を考慮すべきだと考えています。動物にワクチンを接種する主な理由は次のふたつです。

▸人への人獣共通感染症の可能性を低減する(例えば、狂犬病のように)
▸ワクチンを接種したペットが重大な病気になる可能性を減らすため

そのうえで、以下のようにコメントしています。


「Carnivac-Cov」ワクチンの開発者は、犬や猫にSARS-CoV-2に対する抗体を誘導する製品を製造したことで賞賛されるべきです。ただし、ペットにワクチンを使用する前に、追加の情報が必要であると考えています。特に、ワ​​クチン投与が病気を軽減し、生きたSARS-CoV-2の排出が減少することを確認し、さらに免疫の持続期間を研究する必要があります。


すでに、新型コロナウイルスは犬や猫を含む複数の動物種に感染することが知られていますが、主な感染源は人間です。現在まで、ペットが人への感染に大きな役割を果たしているという証拠はなく、ペットがウイルスを人に感染させるリスクは低いとされています。犬や猫が人にウイルスを感染させたと証明されたケースもありません。よって、公衆衛生上の観点から、犬や猫にワクチンを接種する必要性はないと考えているようです。

米国疾病管理予防センター(CDC)の見解

犬や猫がウイルスに感染する可能性はあるものの、一般的には無症状もしくは軽度であることを強調しています。また、これまでにウイルスに感染して死亡した犬や猫はいないことから、犬や猫の感染症を軽減するためのワクチンの必要性には疑問があるとしています。


ワクチン接種は獣医診療の重要かつ基本的な部分であり、それぞれのペットにおけるリスクとベネフィットの評価に基づいて、個々のペットのニーズに合わせた個別医療として考えるべきです。予防接種は必要に応じて行うべきですが、犬や猫へのワクチン抗原の不必要な投与を減らす必要があります。


まとめ

現時点で日本獣医師会のサイトなどにはペットのワクチンについての情報はなく、日本においては接種に関する方向性は不明です。しかし、WSAVAやCDCの見解=飼い主がペットにワクチンを接種することを検討する必要はないというのが参考になります。前述のとおり、犬・猫への感染は人間からの感染がもっとも多いため、ペットを守るための最善の方法は、飼い主が感染しないようにすることです。

日本においては、国民への新型コロナウイルスワクチン接種はなかなか進んでいません。「Our World in Data」の集計では、ワクチン接種が完了した人の割合は、日本では3.13%(6月5日現在)にとどまっています。これから接種が本格化していきますが、それまではマスク着用や手洗い・消毒など今までどおりの予防を徹底して、愛犬・愛猫との生活を送ってください。