【猫飼いTIPS】猫がマタタビに反応するのはなぜ?

猫やライオン、トラなどのネコ科の動物がマタタビに反応することは多く知られています。ニオイを嗅ぐ、舐める、噛む、身体をすりつけるなど、すでに江戸時代にはそれらの反応がわかっていましたが、その理由ははっきりとはわかっていませんでした。しかし、2021年1月に国際学術誌「Science Advances」のオンライン版に掲載された研究結果によると、岩手大学・京都大学・名古屋大学などの研究チームが「猫がマタタビに反応するのはなぜ?」という謎の答えを突き止めたということでした。今回はその研究結果のお話です。

研究概要動画(英語)出典:岩手大学

どんな実験をしたの?

研究チームは、欧米で猫が好むとされている植物に、蚊が苦手とする化学物質が含まれていることに着目しました。マタタビの葉をすりつぶして、含まれている成分を分離すると、構造がよく似た「ネペタラクトール」という成分があることがわかりました。この成分を含ませたろ紙を猫がいるケージの側面や天井に張り付けると、猫が反応を示し、頭や体をその部分にこすり付けたのです。

そして、この「ネペタラクトール」を頭部に塗った猫と塗っていない猫をケージに入れ、そこに30匹の蚊を放ち、猫の体に止まる蚊の数についての実験を行いました。その結果、塗った猫の場合、体に止まる蚊の数が半減することがわかりました。さらに、ほかのネコ科の動物も同じ反応を示すのかを確認するために、2つの動物園の協力のもと、ジャガーやアムールヒョウ、シベリアオオヤマネコに「ネペタラクトール」を与えました。すると同様の反応を見せる結果となりました。

マタタビ反応は蚊から身を守る重要な行動

上記の実験の結果から、研究チームは「猫のマタタビ反応はフィラリアなどの病気を媒介する蚊から身を守る重要な行動」だと結論付けました。しかし、蚊よけの目的と猫がマタタビのニオイを嗅いだときの反応のひとつである陶酔状態との関連性はまだわかっていません。マタタビに反応している間の猫の脳内には、幸せを感じる神経伝達物質が出ていることは血液検査から確認できています。さらなる追求が必要ですが、研究チームは「陶酔は鎮痛の意味があるのではないか」と予測しています。

研究の概要図 出典:京都大学

新たな蚊よけ剤の開発につながる

猫が蚊に刺された場合には、蚊を媒介する寄生虫フィラリアに感染する可能性があります。猫のフィラリア症は、診断が難しいうえに治療法も確立されていません。ですから、犬と同様にフィラリアの寄生を予防することが猫の健康維持のために大切な要素となります。研究チームは、「ネペタラクトール」を使った新たな蚊よけ剤の開発につなげたいとしています。猫が幸せな気分になりながら、健康も守れるのであれば、猫にとって「一石二鳥」の蚊よけ剤といえるでしょう。

まとめ

これまで猫のマタタビ反応は、マタタビに含まれるマタタビラクトンとアクチニジンという物質が猫の中枢神経を麻痺させ、性的快感を覚えさせるためだといわれていました。そのため、愛猫に「元気がない」「ストレスが溜まっているみたい」などと感じたときに、マタタビを与えている飼い主さんも多かったと思います。猫が幸せな気分になるのは変わりないようですが、この研究結果により別の見方ができそうですね。愛猫がマタタビを体に擦り付けていたら、私たちが虫よけスプレーを付けるように、本能的に蚊よけをしているのかもしれません。