ディズニーの世界には、2種類の「犬」がいるって、気づいていましたか?
いろいろな動物キャラクターが登場する、ディズニーの世界。古くはミッキーマウスが登場する「ファンタジア」やダルメシアンがかわいい「101匹わんちゃん」、新しいところでは「ズートピア」など、多くの映画が公開されてきました。読者のみなさんも、好きなキャラクターがいるのではないでしょうか。アニメやディズニーランドで元気よく動き回っているキャラクターを見ると、楽しくなってきますよね。
ところで、ディズニーのキャラクターには、2種類の「犬」がいることに気づいていましたか。グーフィーと、プルートです。さてこの「ふたり」はどう違うのでしょうか。
グーフィーは、人間のことばを話します。ミッキーマウスやドナルドダックと同列の「擬人化動物」です。振る舞いも、まるで人間のようです。
一方プルートは、ミッキーマウスが飼っている犬です。ネズミが犬を飼っているなんておかしな話ですが、ミッキーマウスが「人間」扱いされている世界と考えれば、とくに変ではないのかも。私は二足歩行のグーフィーが四つ足歩行のプルートを連れて歩いているのに、何か違和感を感じてしまいます。
グーフィーとプルートの見た目での最大の違いは、グーフィーは人間のように服を着ています。そのほかの擬人化動物も服を着ています。ところがプルートは、服を着ていません。
また、グーフィーは白い手袋をしていますが、プルートはしていません。ミッキーマウスやミニーマウスも白い手袋をしています。ドナルドダックも、白い手袋をしているようにも見えます。彼は長袖で、手袋の手首の部分が見えないんですが、羽がそのように「進化」したのかはわかりません。
この白い手袋が、ディズニーの世界での、擬人化された動物の記号なんでしょう。白い手袋は見た目で清潔感を印象づけられると思います。動物の顔をしていても野生的な動物ではないんでしょう。顔以外はできるだけ人間の造形に近づけ、さらに白い手袋をさせることで、清潔な擬人化動物を実現したと思います。
プルートにも「記号」があります。プルートが唯一身につけているのは、首輪です。これなら一目瞭然で飼い犬であることがわかります。これで、服を着て白い手袋をしているグーフィーとは顔が犬であっても違う生物だし、ディズニーの世界での役割も見た目で明確に違うことが示せますね。ディズニーの世界におけるペットということで、プルートに着目してみました。
私は、ウォルト・ディズニーが幼少期を過ごしたアメリカのミズーリ州マーセリーンという人口2500人の町に何度か行ったことがあります。そこにはディズニーが住んでいた家や、農場の納屋が残っています。初期のディズニーの世界に登場する動物が、人間の生活に近いものばかりなのは、マーセリーンでの農場生活が記憶に色濃く残っていたからだといわれています。
話は変わりますが、本誌でおなじみのブリーダーの阪根さんから、いくつかの犬種・猫種に「アメリカライン」と「ヨーロッパライン」の2系統が存在していると聞きました。これは各協会のスタンダード基準の違いからきているそうです。ヨーロッパタイプはその種の原種に近い野性味を残した容姿に対して、アメリカタイプはその種の愛らしい部分をより引き出した容姿であるそうです。つまり、どちらも種の保存ではありますが、アメリカタイプはより愛玩動物としての愛らしさを重視した「改良」ととらえているのかもしれません。
優良遺伝子の継承ということでは、とても真剣に取り組んでいる一方、容姿については愛らしさを重視した「改良」を考えるというのは、ディズニーの世界を生んだ国だからかどうかは、今後考えていきたいと思っています。
(犬以外の写真は筆者撮影)
参考:
能登路雅子 「ディスニーランドという聖地」 岩波書店 1990
ボブ・トマス 玉置悦子・能登路雅子訳 「ウォルト・ディズニー:創造と冒険の生涯」 講談社 1983
Richard Schckel, The Disney Version: The Life, Times, Art, and Commerce of Walt Disney (Simon and Schuster, 1985)
コメントを送信