ペット先進国・ドイツを視察して~Vol.3 ティアハイム編~
これまでに紹介してきた動物病院編、ペット専門店編に引き続き、今回はフランクフルトのティアハイムを紹介しよう。
5月24日にフランクフルトのティアハイムの所長であるMs. Sabine Urbainsky氏を訪ねて、施設を案内してもらった。フランクフルトのティアハイムは、今年で175年目を迎える。とても長い歴史のある施設だ。1841年に開設されたわけだが、この年はちょうどドイツの全国の小学校で「人と動物の共生に関する授業」が開始された年でもある。
現在、フランクフルトのティアハイムでは、猫が120頭、犬が120頭を含め、7種類の動物たちが収容されている。西欧圏からFacebookやインターネットを通じて紹介され、動物が連れて来られるケースもある。そして、その理由は下記の3つが多いそうだ。
1.飼い主がアレルギー
2.引っ越し
3.飼い主の妊娠
ただし、飼い主がアレルギーかどうか疑わしいケースもあるとのことである。
フランクフルトのティアハイムの場合、年間の運営費は2億円かかるという。主な費用は、医療費と人件費である。スタッフは獣医師1名と他13人が働いており、収支は残念ながら赤字だそうだ。収入は寄付と相続が主で市町村からの支援もある。150万ユーロ(約1億8000万円)の寄付が過去最大とのことであった。寄付をした場合には、税優遇措置も講じられている。
里親を希望する場合、家族全員にインタビューが実施される。これは、家族がひとりでも動物嫌いだと動物は渡さない方針のためだ。何度も施設に足を運んでもらい、犬の場合は散歩もしてもらい、ティアハイム側は里親を希望する人たちを注意深く観察する。健康チェックを行った後、猫は150ユーロ(約1万8000円)、犬は200ユーロ~250ユーロ(約2万4000円~約3万円)で里親に引き渡される。収容された動物のなかでも、猫の場合は100%飼い主が見つかるそうだ。
里親として認められた場合も、ティアハイムの職員が期限無く里親の家を訪問する。動物が幸せに暮らしているかをしっかりチェックするため、動物が返還されることはほとんどないという。また、ときどき幼稚園や小学校に出向き、人と動物の共生に関するセミナーを行っており、動物たちときちんと暮らせるように指導している。
里親の元へ引き取られる動物がほとんどだが、「黒色のペットは怖い」「縁起が悪い」と考える人もおり、最後まで引き取り手が見つからない残念なケースもあるそうだ。その場合は施設できちんと面倒を見るため、安楽死はほとんどないが、不治の病などの場合は安楽死の選択もしているとのこと。
ティアハイムには善意のフードや用品の寄付が寄せられるが、ティアハイムではタオルを使うことが多く、こうしたタオルやバスタオルなどはとても役に立つそうだ。
これまでにドイツのティアハイムは、ベルリン、ケルン、ニュルンベルクと訪問してきたが、今回のフランクフルトのティアハイムで感銘を受けたことを要約すると、次の3点である。
1.里親となったペットオーナーのご自宅に期限を切らずに訪問し、モニターすること
2.幼稚園や小学校に積極的に訪問し、人とペットの共生に関するセミナーを行うこと
3.ペット(特に猫)が人に慣れるように、できるだけケージの外で飼育していること
ティアハイム施設内の掲示板に「どこでも猫がいるところは幸せがあるよ!」というメッセージも印象に残った。また、里親と暮らしている元気なペットの写真がティアハイムに送られてくるそうで、掲示板にそれらの写真が紹介されていたのも、人とペットが幸せに暮らしている証でもある。
人とペットがいつまでも幸せでいるかどうかをチェックする体制づくりが日本でも望まれる。
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