猫はなぜうんちを埋めるの? 行動の裏に隠された猫の気持ち

猫が猫砂をかいて排泄物を埋める姿は日常的な光景ですが、飼い主にとってその理由は意外と知られていません。この行動は、DNAに刻まれた正常な行動であり、排泄物を隠すのは猫の本能だとされています。

今回は、猫がうんちを埋める理由と、逆に埋めない場合に考えられる原因、飼い主としてどのように理解し対応すべきかを整理して説明します。

猫がうんちを埋める理由

猫がうんちを埋める行動は、単なる習慣ではなく、彼らが生き抜くために培ってきた本能に深く根ざしています。

外敵から身を守る本能

野生の猫は、捕食者であると同時に被捕食者でもあります。そのため、自分の存在を隠すことは生き残るために非常に重要であり、うんちのニオイは痕跡となるため、本能的に隠そうとするのです。特に、嗅覚の鋭い捕食者から身を守るために、ニオイを消すことは理にかなった行動といえるでしょう。また、狩りをする際にも、獲物に自分の存在を気づかれないようにするために、排泄物のニオイを隠すことは有効な手段となります。

ほかの猫への配慮

さらに、猫の社会においては、ニオイは重要なコミュニケーションツールのひとつです。優位な猫は、あえてうんちを埋めずに自分の縄張りを主張することがありますが、逆に、自分より弱い猫は、上位の猫に配慮してうんちを埋めることがあります。これは、猫社会における一種の礼儀作法ともいえるでしょう。飼い猫の場合、飼い主を上位の存在と認識しているため、うんちを埋める行動を見せることが多いようです。

清潔好きの習性

猫は非常に清潔好きな動物としても知られています。排泄物を埋めることで、ニオイを封じ込め、生活空間を快適に保とうとするのは自然な行動です。また、野生においては、排泄物を埋めることで寄生虫や病気の蔓延を防ぐ役割もあったと考えられています。

さらに、子猫は母親の行動を観察することで、うんちを埋めることを学習するといわれています。母親が砂をかける様子を見ることで、子猫も自然とこの行動を身につけていくのです。

猫がうんちを埋めない理由

愛猫がいつもうんちを埋めるとは限りません。その背景には、さまざまな理由が考えられます。

優位性の主張

猫が自分の優位性を示したい場合、あえてうんちを埋めないことがあります。特に多頭飼育の家庭では、猫同士の間に社会的な階層が生まれることがあり、上位の猫は自分の存在を誇示するために埋めないことがあります。

トイレ環境の不満

トイレの環境に不満がある場合も、猫はうんちを埋めないことがあります。猫砂の種類や感触が気に入らない、トイレのサイズが狭すぎる、トイレの場所が落ち着かない、トイレが汚れているなど、さまざまな要因が考えられます。猫は非常にデリケートな動物なので、トイレ環境の変化には敏感に反応するのです。

体調不良

体調が優れない場合も、猫はうんちを埋めるのをやめることがあります。関節炎などで体を動かすのが辛い、消化器系の不調で下痢をしている、あるいは排泄時に痛みを感じるなど、さまざまな病気が原因となる可能性があります。

ストレスや不安

ストレスや不安を感じている場合も、猫は正常な排泄行動をとらなくなることがあります。新しい家族が増えた、引っ越しをした、大きな音がするなど、環境の変化がストレスの原因となり、ストレスを感じると、自分のニオイを残して安心しようとしたり、逆に早くトイレから離れたいために埋めないことがあります。

学習不足

子猫のころに母親から早くに離された場合、うんちを埋めることを学んでいない可能性もあります。母親猫は、子猫にトイレの使い方や埋葬の仕方を教える役割を担っているため、早期に離乳すると、この重要な行動を学ぶ機会を失ってしまうことがあります.

また、単に個体差として、うんちを埋めることを好まない猫もいます。すべての猫が同じように行動するわけではないことを理解しておくことも大切です。

飼い主の理解と対応

愛猫がうんちを埋めるかどうかは、猫の健康状態や心理状態を把握するうえで重要なバロメーターとなります。もし、これまで埋めていた猫が突然埋めなくなった、あるいはまったく埋めようとしない場合は、注意深く観察し、適切な対応をとる必要があります。

まず、トイレの環境を見直しましょう。猫が好む猫砂(細かい砂状で無香料、固まるタイプが多い)を選び、猫がゆったりと方向転換できる十分な大きさのトイレを用意しましょう。静かで落ち着ける、猫が安心して排泄できる場所を選ぶことが重要です。

そして、トイレはつねに清潔に保ち、少なくとも1日に1〜2回は掃除するように心がけましょう。猫砂の深さも適切に保つ(5cm程度)ことで、猫はより快適に排泄と埋葬を行うことができます。 

もし、トイレ環境に問題がないにも関わらず、愛猫がうんちを埋めない場合は、体調不良の可能性も考慮し、早めに獣医師に相談することをオススメします。病気が隠れている場合、早期発見と適切な治療が重要です。

また、引っ越しや新しい家族の加入など、環境の変化は猫にとって大きなストレスとなることがあります。そのような場合は、猫が安心して過ごせるような環境を整え、ストレスを軽減するように努めましょう.

子猫でまだ埋めることを知らない場合は、飼い主が優しく砂をかける動作を見せるなど、根気強く教えることで覚えることもあります。

まとめ

猫がうんちを埋める行動は野生から受け継がれた本能であり、清潔さと安全を維持するための自然な習慣です。しかし、習慣が変化するときは体調不良や環境ストレスのサインであることもあります。

飼い主はこの行動を理解して温かく受け止め、安心できるトイレ環境と健康管理を行いましょう。猫の行動をしっかり観察しつつ、必要な対策を取ることで、猫との暮らしがより健やかで快適なものになります。