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「酸化」と「抗酸化」のシーソーゲーム

[2021/11/30 6:01 am | 獣医学博士 川野浩志]

美容や健康において「酸化」とか「抗酸化」という言葉を聞くと思います。では、酸化とはどういった状態なのでしょうか。中学校の理科の授業で酸化と還元について教わったように記憶しています。例えば銅(Cu)でできているピカピカの10円玉が、空気中の酸素(O2)で徐々に酸化されると酸化銅(CuO)になってドス黒く変色する。これは銅が酸化してサビついたからですね。これを化学反応式で表すと以下のようになります。 

2Cu+O2→2CuO


ただし、このように物質に酸素がくっつくことだけが酸化ではありません。化学的に「酸化」とは、以下のようにふたつのタイプがあります。つまり酸素とくっつくだけじゃなく、水素が奪われてなくなることも「酸化」ということを知っておくと便利なんです。

●物質に酸素が結びついた状態の酸化(酸素結合)
 ●物質から水素が奪われた状態の酸化(水素離脱)

逆に、そのサビた10円玉を水素ガスのなかに入れると、サビがとれて元のピカピ力の10円玉に戻ります(まさにこれが還元作用)。つまり、サビに水素が作用して元の銅に戻したってわけですね。銅にくっついていた酸素は、水素と結合して銅から離れて水になります。

空気中には約21%の酸素が含まれていて、呼吸して体内に取り込んだ酸素の約2%は活性酸素となり、まるでぷよぷよのように連鎖的ドミノ倒しで変化して、最終的にはヒドロキシルラジカルとなります。

ちびっ子たちやピチピチのギャルは「抗酸化」が「酸化」に勝つので問題なくても、炎症やストレス、紫外線などで酸化が進んだり、加齢などの要因で抗酸化の力が衰えたりすると、「酸化」が「抗酸化」を上回ります。この酸化ストレスによる波状攻撃でダメージを受けた細胞はサビつき、これらのダメな細胞や臓器が増えて機能不全に追い込まれ、病気や老化の引き金となる。

ヒトも犬も猫も炎症を起こす原因はいろいろありますが、活性酸素が関わっていることも事実で、10円玉がサビてしまうように、活性酸素による酸化で皮脂や細胞がサビてしまい、アレルギーの悪化、細胞のガン化、さらには老化に影響します。

一方で、水素やビタミンCやほかの抗酸化物質を投与することで、炎症が軽減化することが多くの症例で認められています。小生のアレルギー科でも乱れた腸内細菌に対するプロバイオティクス/プレバイオティクスによる治療介入に加え、ヒトのアトピー性皮膚炎の治療で使われて実績のある還元型水素化ミネラルを併用しています。メジャーリーガーの大谷翔平選手のように強烈に頼りになる存在で、飼い主さんからの評価も高いです。

Mr.Childrenの名曲「シーソーゲーム」の歌詞は、
“恋なんて言わばエゴとエゴのシーソーゲーム”
ですが、医学的かつ獣医学的にいえば、
“健康なんて言わば酸化と抗酸化のシーソーゲーム”
ヒトも犬も猫も、健康で長生きするために酸化と還元のバランスを意識して偏りすぎない状態をキープしましょう!

[獣医学博士 川野浩志]