犬との暮らしで知っておきたいこと Vol.113

【犬飼いTIPS】なぜ愛犬が床におしりを擦りつけるの?~知っておきたい肛門腺について

[2022/12/19 6:01 am | 編集部]

みなさんは、独特のニオイを放つ肛門腺の存在を知っていると思います。すべての犬には肛門腺があり、ほとんどの場合は何の心配もなく一生を終えることができます。

しかし、この肛門腺が炎症を起こし、それを取り除くために人間や獣医の介入が必要になることがあります。肛門腺は厄介なものですが、ときには愛情とケアが必要なのです。今回は肛門腺のお話です。

なぜ犬には肛門腺があるの?

肛門腺は肛門嚢とも呼ばれ、肛門の左右(4時と8時位置)にあるふたつの小さなポケットのことです。これらの嚢は皮脂腺(汗腺)で覆われており、油性のニオイのする液体を分泌し、嚢のなかに溜まります。

通常は、排便と一緒に少量排出されます。これが、犬の便の独特の臭いニオイの元になっているのです。また、臭腺のひとつである肛門腺は、ほかの犬とのコミュニケーションを円滑にすることができます。

また、犬は防衛メカニズムとして、恐怖を感じたときに肛門腺を表出させることがあります。ほかの犬に追いかけられたり、花火や雷などに怯えたり驚いたりしたとき、その後に悪臭を感じたことがあるのではないでしょうか。

肛門腺の障害と感染症

肛門腺から分泌物がうまく排出されないと、肛門腺が腫れて不快な思いをすることがあります。また、肛門腺の出口がふさがれると、肛門腺に分泌物が溜まりすぎてしまうことがあります。肛門腺は温かく湿っているため、細菌が住み着き、感染を起こしやすい場所です。

肛門腺の嵌頓(詰まり)や感染症は、犬にとって非常に不快なものです。感染した肛門腺は膿瘍を形成する傾向があり、すでに膨張している肛門腺を膿で満たします。最終的に、お尻の皮膚を突き破って破裂します。これは厄介で大変な事態です。

肛門腺トラブルの徴候

肛門腺トラブルの典型的な兆候は、肛門を床で擦ることです。肛門腺の圧迫感や不快感を和らげようとするこの行動は「スクーティング」と呼ばれます。しかし、この行動がすべて肛門腺トラブルの兆候ともいえません。別の理由でスクーティングしていることもあります。肛門腺トラブルの兆候には、次のものがあります。

・スクーティングする
・肛門をしきりになめる
・強いニオイがする
・肛門の周りが赤く腫れている
・排便を我慢したり痛がる
・便に血や膿が混じっている
・肛門から血や膿が流れ出ている
・ベッドなどに血や膿や分泌物の跡がある


肛門腺トラブルの原因

肛門腺に問題がある場合、さまざまなことが考えられます。一般的な原因や要因としては、以下のようなものがあります。

・下痢(軟便のため肛門腺液がうまく分泌されない)
・便秘(便が出ないため肛門腺液が出ない)
・肥満
・慢性皮膚炎・細菌感染症
・甲状腺機能低下症
・アレルギー(環境、食物)
・寄生虫


稀に腫瘍や先天性疾患により、肛門腺液が正常に排出されない場合もあります。また、トイプードルやチワワなど、小型犬は肛門腺に問題を抱える可能性が高い傾向があります。そのほかにもコッカースパニエル、バセットハウンド、ビーグルも肛門腺疾患が高いといわれています。

肛門腺のケア

肛門腺のケアは、自宅でケアすることができます。一般的に「肛門腺絞り」ともいわれYoutubeなどにもたくさんの動画が掲載されています。

自宅で作業する場合は、まず愛犬が肛門腺トラブルを抱えていないことを確認してください。肛門の周りに血や膿が見られる場合、または愛犬が痛がっていたり嫌がっているような場合は、すぐに獣医師の診察を受けるようにしましょう。

自宅で肛門腺絞りをする際には、ラテックス(ゴム)手袋と、潤滑クリーム(ワセリンなど)、ティッシュ、除菌消臭スプレー、ゴミ袋などを準備しましょう。まずは簡単な「外部圧迫」の手順です。

STEP1
小型犬の場合はテーブルやカウンターの上に乗せ、大型犬の場合は後ろに回り膝をついてください
STEP2
犬の尻尾を持ち上げます(小型犬の場合は片方の腕を犬の首の下に回して抱きかかえるように)
STEP3
ティッシュを持ち、親指と人差し指で肛門腺を外側から圧迫します。やや上に押し上げるようにすると、肛門から肛門腺液が滴ってきます。
STEP4
ティッシュペーパーで拭き取ります。除菌消臭スプレーで湿らせて拭き取るとさらによいでしょう。

もしうまくいかない場合は「内部圧迫」を試してみましょう。手順は以下のとおりです。

STEP1
小型犬の場合はテーブルやカウンターの上に乗せ、大型犬の場合は後ろに回り膝をついてください
STEP2
犬の尻尾を持ち上げます(小型犬の場合は片方の腕を犬の首の下に回して抱きかかえるように)
STEP3
人差し指にワセリンを塗り肛門にそっと挿入します。
STEP4
4時または8時の位置に豆粒大またはビー玉大のしこりのようなものがあるかどう確認します。
STEP5
肛門腺が見つかったら、人差し指と親指で肛門腺をそっと潰すように絞ります。圧力の強さは、自分の目を押さえて痛くない程度です。肛門腺が空になると、ほとんど感じることができないはずです。
STEP6
ティッシュペーパーで拭き取ります。除菌消臭スプレーで湿らせて拭き取るとさらによいでしょう。

肛門腺絞りの頻度

肛門腺絞りは、必要なときだけです。ほとんどの犬は、肛門腺絞りを必要としないか、稀にしか必要としない状態で一生を過ごします。ですので、理由もなく肛門腺絞りをしないようにしましょう。頻繁に肛門腺絞りをすると組織が損傷し、瘢痕組織が形成されて排泄管がふさがれる可能性があります。

自分で判断が難しい場合は、いきつけのペットサロンや動物物病院で絞ってもらいましょう。また、肛門腺に慢性的な問題がある場合は、獣医師の診察を受けて原因を特定する必要があります。

まとめ

健康は犬は、とくに肛門腺のケアは必要ありません。ただ、もともと肛門腺に問題を抱えやすい犬種があったり、遺伝的・先天性に肛門腺液が正常に排出されない場合もあります。まずは、肛門腺トラブルの兆候を見逃さないことが大切です。

肛門腺を健康に保つためには、健康な便の排出が大切です。そのためには、十分な食物繊維を含む食事をとることです。食物繊維は消化と適切な便の形成を促進します。また、オメガ3脂肪酸のサプリメントも便通をスムーズにします。

[編集部]