【編集興記】参院選における候補者や政党の「動物愛護」イシューについての違和感

[2022/07/08 6:01 am | 編集部]

ちょっと気になったペット関連のトピックスを、編集スタッフが持ち回りで紹介する“不定期”コーナーです。

選挙になると、必ずどこかの政党や候補者が「動物愛護」に関わる政策を訴える。近年では珍しい光景ではなくなっており、好ましい方向性だと思います。

今年は、昨年施行された改正動物愛護管理法が強化されるとあって、いろいろな動きが出てきました。ポイントは、飼育頭数規制とマイクロチップの義務化(一部は努力義務)です。

参院選を見据えてでしょうか、自民党では「一緒に生きる、幸せをずっと。」といったキャッチフレーズのポスターを発表してペット政策をアピールしました。自民党のロゴに動物の耳をつけるなど、アピールに躍起になっているようにも感じます。

日本維新の会も「アニマルポリス」の創設や殺処分をゼロに近づける施策の強化を謳うなど、まさに動物愛護が選挙のホットイシューにもなっているようです。

ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」によると、昨年の新規飼育世帯数は約74万世帯で、現在約1千万世帯となっています。さらに、飼育意向のある人など関心のある人も加えれば、巨大な母数となります。各党や候補者がペット政策に熱心になるのも納得できます。

そんなかで、ちょっと違和感のある動きに遭遇しました。それは、ペット業界に従事する人たち(特にペットショップ関係者)の動きです。最近、SNSを通じてある候補者を応援する依頼がシェアされているのです。内容は、改正動物愛護管理法が悪法であり、このままではペット業界全体が衰退してしまう。だから、その候補者を国政に送り出して、法改正をしてほしいという内容なのです。

確かにその候補者は動物愛護に熱心で、公約には「生き物と人との共生社会の実現」が明記されています。ペット庁設立、アニマルポリス設置、殺処分ゼロなど、まさに世論に即した政策になっています。その公約に、ペット産業全般、動物愛護団体、ペットを愛する飼い主からの大きな応援を得ている、と自身のSNSには書いてあります。

大阪で行われた決起集会には現職の山口環境大臣が応援にかけつけたようです。そして、ペットのことはその候補者の言うことをすべて信用して「そのとおりにする」というリップサービスまでしています。

しかし、ここで疑問がひとつ。
この候補者を応援する、くだんのSNSでシェアしている人たちの考え方とは真逆のような……。調べてみると、活動記録のなかに「優良ブリーダー評価制度」を提唱していました。なにやら悪徳繁殖業者と優良ブリーダーを差別化するような制度と期待できそうです。しかし、その内容は期待外れでした。「アニマル ウエルフェアー インデックス(AWI)」なる独自指標を元に、優良と認定されれば飼育頭数は関係ないというもののようです。まさに、改正動物愛護法に逆行する制度でした…。

実態はペット業界(既得権者)を代弁する候補者だったということです。その証拠に、候補者の選挙事務所からは、投票を促すハガキが送られているようです。実際に応援しているのは、ペット産業を代表する業界団体ばかりでした。なかには、社会問題として指摘されている、ペットオークション団体も名を連ねています。

そうです。覚えている方も多いと思いますが、改正動物愛護法の施行に対して、「13万匹以上のペットが行き場を失う」「犬猫の殺処分が増える」など反対の声を上げた“ペット業界”そのものなのです。なぜ自分たちの責任で対応する努力をせずに文句を言うのか、未だに疑問です。

この事実を知ったとき、ペット業界の「健全化」には、まだまだ時間がかかるなと思いました。しかし、私たちの意識と行動が変わることでペット業界を変えることはできます。そして世論が社会を動かし、社会の変化にあわせて法律も変わるのです。

私たちは、あらためて候補者や政党が掲げるペット政策や実際の活動が、本当に「人間と動物が共に生きていける社会」の実現に則っているのかを、しっかり判断する必要があると感じた次第です。

[編集部]